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有理架といつき4

放課後になると、いつきは屋敷へ来ていた。

屋敷の体育館。

服装は体操着。

動きやすくするため。


そこには花宮はなみや有理架ありかがいる。

金色の髪。右横にツインカールをしている。

有理架も、動きやすい服装。


体育館に有理架といつきは向き合うようにいる。


有理架はいう。


「じゃあ、準備体操からですわ」


屈伸や体を柔らかくするために二人でしていく。


他は誰もいない。

準備体操が終わる。


「それでは…走るんですわ…ちなみに来ていないときも動いたりはしてたですわ?」


「………登校下校で歩く…くらいは」


「……あなたの場合は強くなりたいなら、足りないと思いますわ」


いつきは何も言わず、素直に聞いている。


強くなりたいといういつきは、有理架の元へと来ていた。

なぜ彼女の元へというと。


自分に冷たく厳しくしてくれると思ったからだ。

いつきは自分に甘いことを自分でわかるため、優しくない相手の元へと来たかった。


ここでしていることは。

強くなるためといいつつ、有理架もすることあるため、ほとんどいつきの一人での走るや、運動が多いが、今日は。


「戦ってみるかしら?いつき」


「戦う…」


有理架と戦ったことはあるが、いつきは負けるというか、戦いにもならない。

有理架もよく、いつきの相手をしていると思えるほど。


_有理架さんと…戦う…


「戦いたいです」


いつきは、はっきりと答えた。


では、二人は体育館で距離を開け向きあう。


「いつきから来てですわ」


いつきは


_私から!えっと、えっと…………


いつきは、動き出す。

いつきの場合は相手へとそのまま正面から突っ込んでいく。


というか、それしかできない。

いつきは、突っ込んでみて、拳を作って、有理架へ向ける。

有理架は、威力も何もない拳を後ろへ下がることでよける。

いつきは何度も拳を打つふりはするが、何も当たらない。

はっきりいって、相手にならない。

こういうのを滑稽というのかもしれない。

弱すぎて、そして技術もなく、それでもあるのは。

有理架は、右手に拳を作って、いつきの腹へ当てる。


「……………つ……」


いつきは膝をつく。

有理架は気にせず、右の足でいつきを蹴ろうとした。


_よけないと!


いつきは、それを何か直感的なものなのか、膝を曲げた状態で、上体のみを後ろへ倒した。


有理架はいう。


「不思議なんですわ。戦える力なんてないはずなのに、私の足をよけた」


_今の…何だろう


時々、なぜか反応できる。


「でも、あなた、戦う訓練とかこどもの時にしてたんでしょ?」


いつきは思う。

それは“いつき”の話だ。

出会った時から“いつき”は自分を鍛えていた。

多分、今のよけられたのはその“いつき”の記憶?なのかもしれない。


有理架は冷たい目をする。


「でも。一度避けただけですわ。その程度で自分に期待しないことですわ。あなたは弱い弱すぎる。力がない。強くなりたいなんて思ってるなら」


有理架の目はまるで道に落ちていたゴミを踏んでしまった時のような、そういう目。


「この世をなめてるとしか思えないわ」


いつきは見下ろされる。


「強くなりたい?笑えますわ。弱い奴が何をおもしろくない冗談をいってるのかしら?」


いつきは冷たい言葉に突き刺されていく。


有理架はいいすぎでもここまでは言わなければと思っている。

たとえ、いつきが傷ついても。


「全く、あなたみたいな弱い奴が強くなれるとか、ないですわ」


いつきは黙る。

有理架は傷つけてることは、わかるが。

でも、ここまでいわないと。

いつきは体がかたかたと震えてる。

泣かせたかもしれない。


「泣いたってだめですわ」


いつきは下を向いている。


「泣くなですわ」


有理架はいつきの頬をそっとつかんで顔を上げる。

涙顔だ。



「この程度で泣くとか…強くなりたい方とは思えませんわ」


いつきは、口を開ける。


「…あの。違うんです」


「私がいくら冷たいからって」


「…私………うれしくて」


「言い方が冷たくて悪かったですわね。…え?」


いつきは話していく。


「有理架さんが私を思って、考えてくれてるから厳しくしてくれて…うれしいんです」


いつきは続ける。

目じりをこする。


「私、厳しいこといわれて…悲しくなることあったんですけど…有理架さんは私のためにいってくれてる…八つ当たりとか、毎日が気にいらないから何かしらいってくるとかと違ってて」


いつきは涙をふきながらいう。


「すっごくうれしいです…あの!いわれてて泣きそうでもあるんですけど!有理架さんなら、もっといわれたいです!」


「あなた…そういう趣味なんですの?」


「そうかもです!でも私を思ってくれる女性が限定です!」


「……………まあ、いいですわ。ほら泣かないで。泣くとかわいい顔が台無しになりますわ」


といいつつ、有理架はいつきを待ってくれた。



それから。

有理架は変わらず冷たくいう。


「あなたは強くなれないですわ。それはわかりますわ」


いつきはそれでも、いう。


「それでも、強くなりたい。私が強くなるには頭が悪いのはよくないといってましたよね…でも、頭の悪さはどうにもならないです…」


「強くなるには…頭は必要ですわ」


「…どうしたら」


「自分で考えろといいましたわ」


「はい…なので!考えます!」

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