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イルと宏4
青年は歩いていた。
そこへ、少年が来る。
「宏ー」
宏と呼ばれた青年は、少年に呼ばれても止まったりはしなく、歩いていく。
「宏ー」
少年は転ぶ。
「…あでっ!」
青年は歩いていく。
「宏ー!待ってよー」
宏は後ろを向く。
転ぶ少年の姿。
「…何してんだ。イル」
「転んだ!」
「………」
少年の名前はイルというようだ。
宏はイルの近くへと来て、仕方なさそうに手を出す。
「宏、ありがと!」
イルは立ち上がると、宏の隣を歩いた。
「今日ねー、また作ったんだー、でね、怒られたの、痛かった、何が悪いのかなー?ちゃんと、誰もいない時間に育つようにしたのにー」
「お前、それ…部屋でしろ」
「僕悪くないもーん」
「一応誰もいないからいいけど、万が一があるから、本当にやめてくれ…お前」
「するよー!僕は」
「また俺に調べさせるのか…誰もいない時間に…あの液体の育つ頃とか…………」
「調べてー」
「………………お前、本当嫌い」
宏は、気持ちをそのまま声に出した。
二つは歩いていく。