いつきと
いつきははっきりといえば力がない。
いつきの家系的に“赤の力”を持つはずなのだが彼女はその力が使うことができないのか。
それともないのか。
“いつき”はずっと力のない自分が嫌で嫌いでしかたがなかったらしい。
いつきはそれを知ったが、もういないのだ。
“いつき”はいない。
“いつき”はいないのだ。
いつきは今回の異世界ボタンの話は聞いてるが彼女は何もしなくていい。
兄であるかいとや他がしているためいつきは何もしなくていい。
いや、何もすることができない、のだ。
力の使えないものは期待もされない。
必要ともされていない。
「私は…」
“いつき”は苦しかっただろう。
でも、いつきはいう。
「私はそもそも誰も私に気づいてもなかったから、必要になんて思われなくていい」
いつきはそういう性格だ。
どうでもいいのだ。
けれど、“自分の命をかけるほどの何かは探している。”
いつきは誰かに聞くことはできず歩く。
路地裏につくと、声をかけられる。
「そこの子、これはいかが?」
「…え」
いつきは声をかけられた。
そこには女性がいた。
茶色の髪を持つかわいらしい女性。
灰色のカーディガンをはおっている。
カーディガンの中は青色の服を着ているようだ。
首元には緑色のしずくの形のネックレス。
「あ…あの、」
いつきは警戒をする。
女性はゆったりとした静かな声で話しかけてくる。
「あなた、この赤いボタンはいかが?」
いつきははっとする。
(こ、これは!?もしかして!?)
いつきはわたわたする。
「あ、あの、えっと」
「これはね、異世界へ行けるの」
いつきは
(絶対この人だ!)
心の中で叫んだ。
が、いつきはどうしようか悩む。
「あー…えーと…まじですか?」
「まじです」
いつきは赤いボタンのことは知っているため心の中で思い切り叫ぶ。
(うそつき!!!)
いつきは何とかして冷静になろうとする。
「そんなものあるわけないです!」
「それがあるのよ?」
「そんなのあるなら誰も苦労しません!」
いつきはすでに冷静じゃない。
「結構みんなすぐに受け取るのに」
「他にも渡してるんですか?」
「ええ」
たしか、他に渡された人達は使う前に何とかできた人と使った人がいたと聞いている。
「…」
「あら、どうしたの?」
「どうして渡すんですか?」
女性はにこっとする。
「困ってるように見えたから渡したの」
いつきは何も言えなくなる。