似世界 空間の壊れた場所で(クロリネ 拓前 時恋)567
似世界
空間の壊れた場所で
クロリネ 拓前 時恋
絡まる力という球体が現れている。
時恋はその姿に後ずさる。
時恋にとって恐怖だ。
怖い。
怖さを感じる。
あれに触れば、自分を消される。
消されてしまう。
それは、シルベとの時間を消されること。
惹かれた相手のことを消されるのは
時恋にとって恐怖だ。
死ぬよりも怖いのかもしれない。
死ぬよりも怖い。
死ぬよりも怖いのだ。
シルベとの時間をけされる
時恋は動けなくなる。
「こわ、く、ない、」
怖い。
赤の瞳の怪物を消すことは、浄化である。
絡まる力は違う。
そう、思ってしまう。
消えるかは分からない
とにかく、怖い。
怖い。
怖い。
怖い
怖い
怖い
時恋は黒の刃が絡まる力に触れそうになる。
赤の瞳の怪物は絡まる力に消される。
時恋は感じ取る。
誰かの力により、絡まる力で浄化されている。
だが。
時恋の場合は
消される。
もし、自分が浄化というものが出来ようと、
シルベを想う
誰かの血に染まる
それを
消すわけにいかない
都合良く血に染まるだけが消えない
シルベの想いまでも消える
言葉が出ていた
「い、や、だ、」
_いやだ
いやだ
いやだ
いやだ
いやだ_
いやだ!!!!
時恋の気持ちだ。
クロリネは腕を傷つきつつ、笑顔で声をかける。
「どうしましたか?」
優しい声が響く。
「あ、なん、でも、ない、」
「何か恐怖を感じている、気がするのですが」
「なん、でも、ない、」
クロリネは絡まる力へ向かう。
腕はもう傷ついている。
けれど、向かおうとする。
氷を現すと絡まる力は凍っていく。
が、ガタガタと音を立て、また動きだす。
拓前がいるからだ。
時恋はいう。
「どうして、怖い、ない、?、あ、こ、わく、ない、」
クロリネはクスリとする。
「怖くていいと思います」
時恋は目を開く。
「こ、わい、おまえ、ある、?、」
クロリネは笑顔で答える。
「私は怖いが自分にあるのかよく分からないのです」
「わから、ない、?、」
クロリネは氷を現す。
「分からないですが悪いのですか?」
時恋は前を向く。
絡まる力は青の羽根の集合体へも向かおうとする。
時恋は怖くて怖くてたまらない。
けれど。
静かに上を向く。
「シルベ、狙うなら、私、怖がる、終わり、シルベ、向かわせ、ない、」
時恋は黒の刃を現す。
青の羽根の集合体へ向かわせない。
絡まる力が時恋へ近付く。
時恋は恐怖に下がる。
だが。
黒の刃を現す。
消すことは出来ない。
せめて、近寄らせない。
それだけだ。
クロリネは冷たい瞳をする。
「時恋さん。拓前さんの邪魔はしないでくださいね」
声に冷たさしかない。
時恋は黒の刃が消えてしまう。
絡まる力に触れること。
出来ない。
時恋は膝をつける。
体を抱く。
シルベとの時間を奪われる
その恐怖を感じる。
シルベを想う気持ちをなくす。
消えるよりも怖い
彼女といた時間を
彼女を想う時間を
彼女といられない時間を
全てを失いたくない
「奪われるの……………やだ………」
時恋は絡まる力が怖い。
「怖い…………………怖い…………」
クロリネはその行動に声をかける。
氷を現し絡まる力を凍らせながら。
「怖いのですね?言葉にしなさい。言葉に出しなさい。隠すのをやめなさい。自分がどうしたいのか言葉にしなさい」
時恋は動けない。
クロリネは笑う。
「言葉にするのです」
時恋は言葉を出す。
絡まる力は凍らせられる。
「時恋、シルベ、好き、だから、全部、消える、かも、嫌、だ、いや、いや、シルベ、好き、どうしても、好き、絡まる、力、怖い、怖い、!!!、」
クロリネは静かに言葉を聞く。
時恋は黒の刃を現す。
けれど、力はバラバラと崩れる。
怖さに動けない。
これでは。
クロリネは拓前の方へと絶対に近寄らせない。
クロリネは空間を壊さない。
そのために動いている。
本人の心の中は分からないが。
クロリネは痛みを感じながら動き続ける。
彼女はこう言葉にするだろう
痛みなど、それがどうした?と。




