現世界へ急に変わる 青命屋敷内 青標建物(航坂 シルベ)502
現世界
青標建物
航坂 シルベ
シルベは光沢の飾りを斬りつつ、航坂の怒りの理由が分かる。
つまり、シルベの側にいたいこと。
自分だけを見てほしいということ。
シルベは剣を握りつついう。
「私ってそんなに好かれていたるて?」
剣はいう。
“気付いてはいただろう?”
「まあ、うん。だって……………」
シルベは小さくつぶやく。
「私も………………だけどるて」
惹かれ合うのだ。
縁により。
実はシルベは航坂に惹かれつつ。
これはシルベは言葉にも出していないのだが。
航坂は気づいていた。
何となく、分かるのだ。
シルベには言葉に出さない思いがあった。
シルベは島凪に少しの恋を抱いていた。
本当に少し。
島凪の強さに。
航坂はけれど島凪を消そうとは考えない。
真っ先に消すべきとは考えなかった。
島凪は思いが強い。
シルベなどに思いも持たない。
思いも持たない相手に攻撃する必要がない。
ただ、シルベの傷つく姿は見れた。
そのため、島凪には感謝さえある。
あの強いシルベの傷つく理由の一つに。
それがあるなんて。
島凪は許せる。
けれどシルベの近くにいる者は許さない。
そもそも。
航坂は別の世界の者へ攻撃しなくてもいいはずなのだ。
この世界のシルベも
どの世界のシルベも
この場合は運命という言葉が使える。
シルベは航坂に惹かれる。
航坂はシルベに惹かれる。
これは変えられない。
惹かれるのだ。
その際に誰か別を思う時もあるが、それは一時的。
心から惹かれるのは互いだけだ。
互いにしか惹かれない。
創られたからとかではない。
そういう風になるように設定されていない。
そんな設定はない。
そんな設定は存在していない。
戦う者という関係のみ。
この二人が惹かれあっていたことは後に知った。
もしかしたら
本当に運命なのかもしれない。
運命は必ずではない。
その言葉がいえるのは
二人は最初から想い合う、とは知らなかった。
惹かれ合うからこそ
似ているからこそ違う二人
違うからこそ似ている二人
惹かれ合う。
惹かれ合う。
魂がどうしても惹かれ合う同士なのかもしれない。
航坂の周りの青の羽根は似世界を映し出す。
その光景を見ながら、この世界のシルベも剣を握りつぶやく。
「どうして、私は………航坂を好きという感情があるんだるてね……………どうして、るて?」
惹かれている。
シルベは口にも顔にもださない。
封印すべき相手だ。
一度別を想った時もある。
けれどその気持ちは消えた。
その相手にはその相手の惹かれる者と幸せに、今はそう思える。
想いは傷だ。
けれど、その傷が航坂を本当に想うことに気づくきっかけとなった。
航坂の封印される者。
多くを奪った者。
奪うことに苦しみを感じ、けれど奪い続けた者。
惹かれてはいけない、ではなく。
惹かれるという感情しか起こらない。
惹かれる。そして更に好きになる。
シルベは顔にも口にも出さない。
その思いを聞こえない時に彼女はつぶやく。
剣はいう。
“どうしても想うか?やはり”
「そうるて。どうしても想うるて。何でか分からないほどに。航坂を忘れることはないるて。………………………どうしてなんだろうるて」
剣はいう。
“お互いに生きていた時間も違うはず。なら、他の世界でも出会っているのかもしれない”
「そんなことあるものるて?」
“無いとはいえないだろう?そろそろ色恋は終わりにしないか?封印をするのだろう?”
「………………色恋、そうるてね。でもね、誰かを好きになるって止められるものではないるてよ」
光沢の飾りを斬る。
「心だけは止められないるて。そして恥ずかしい話。私は叶わない恋を少しした。叶わなかったから航坂に惹かれていたからって無理矢理に好きになってしまった気がするるて」
シルベは自分の恋が叶わぬことに航坂を好きな気持ちは前からありつつ、叶わないことにより、別の誰かに恋しそうになったと正直に言葉に出す。
けれど、やはり強さに惹かれるだけは違う。
本当の好きは違うのだ。
本当に惹かれるとは
「苦しいんだるて。航坂を好きになっても…………その恋は歪な形で戦い続ける、を選ぶるて」
歪でも惹かれてしまう。
一度別の誰かを好きになりそうになる、ことは結局なかった。
つまり惹かれるとは本当に本当に珍しいことだと知る。
けれど。
けれど。
惹かれても自分は何とかしてでも止められるが。
心は止められない
誰が何をいっても
止めることは出来ない
それは分かってしまった
剣はいう。
“心だけは正直だな”
「気持ちは噓をつくけどるて」
“一生。道標を大人としては見ないぞ”
剣もやはり、親のようなものになっていた。
“一生子どもは子どもだ”
「えーるて!大人るてよ!?」
“大人には見ない”
「そんなーるて!」
剣にとってシルベを精神の幼い時から見ていたため、人の親と同じくいくつになっても子どもは子どもだといった。




