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白の彼岸の愛歌 強縁の支指為498

現世界


誰かは白の彼岸花と花飾りを抱く。


「信じさせられたかな」


誰かは分からない。

小指を前に出すと、曲げる。

約束を交わすように。


「違うよ。これは一方的な愛じゃない。ボクだって選んだんだよ」


ずっと一緒にいたから


一方的だなんて思わないで 


自分だけがなんて思わないでほしい


「ボクだって一緒にいたいと思ったんだから」


白の彼岸花に唇を近付けると次に花飾りを見つめる。


どちらも抱きしめながら。

どちらも大事に抱く。


どちらも大事な相手が選び続け、生まれた。

創り出した全てを覚えてないといいながら。

全部を覚えていたいと。

創った全ては今に繋がったと素直にいえるあの人


そう思える人だから

道案内がしたくて、もっと現実的な部分で助けたかった。

それは出来ないから


出来ないのは困るのに

本当に困るのに


心はどうにかできたみたいだけど


でも、もっと現実的な部分で助けたくて………


悔しくて


悔しくて


本当の意味で何も出来なくて


白の彼岸花と花飾りを抱きしめる。


「………………悔しい、悔しい。本当に、これだけは……………」


けれど、先へ進ませるためには前を向く。


白の彼岸花と花飾りは自然に流れていく。

水滴が花へと吸い込まれる。


涙だ



「ボクは、やっぱり………守れないね」


誰かはつぶやいた。



彼岸花は流れゆく。


泣き出す誰かを更に流れる彼岸花の花びらが包む。

涙に何かが引き寄せられた。


_それでも、


_心を守ったのはあなただよ


_それだけは本物。本当だよ


_子どもみたいな話だけど


_それは本当だから


_だからうつむかないで



____ありがとう_____


_今もこれからも何度でも何度でもいうよ



涙を落とす誰かは顔を上げる。

少しだけ、笑顔を見せる。


「信じさせられた、かな?」


_うん。信じさせられたよ。本当に驚いた。

この先はどうなるの?


あの二つの力はどうなるの?


即答で答える。


「分からない。でも、先へ進むことになるよ」 


_不安だな


「想いから作られたから。しかもボクを想い続けたあなたの力だからちゃんと導いてくれるよ」


_…………そうかな…


「なら、道案内になれないけれど、ここでは導くよ」


白の彼岸花と花飾りは混ざるように流れていく。


「あなたは誰よりも何も感じられないから。出来るよ。そこが一番の欠点だからこそ」


_欠点だ…………


「欠点が多いから導かれてしまうよ」


_落ち込むな…………


白の彼岸花と花飾りを見つめる誰かは。


「落ち込むから導くよ。ここでは。何とか導けるから。嫌な部分は嫌いだけど、でもね」


誰かはどうしても愛おしいという風に声を出す。


「本当に嫌いにならないから不思議だよね」


_嫌っていいよ?嫌われるの当然だし


「うん、嫌い。嫌いも知ったから力は生まれたんだと思う」


_嫌いも力になったの?……………嫌いなら嫌いでいいのに


誰かはもう一つの声を抱きしめるようにいう。


「不思議だね。嫌いも力になる」


包まれた何かはいう。


_…………………本当に好きだなあ………何でだろう、好きで、好きで…………何でなのかな


「好きだと想うなら会えるよ」


_会えるかなあ、無理じゃないかな


抱きしめる力を少し強める。


「会えるよ。ううん、会うことになるよ。だから、信じて。信じられなくなっても」


続ける。


「ボクは全てが創られる前から名前を呼ばれたんだよ?会えるよ。絶対に。まあ、会ったら嫌われるかもしれないけど」


_………………そうか。会えてもいいものでもないということか


「そう、かも。でもね。会うと思うよ。これはもう絶対。ボクが惹かれたのは過去だけではなくて、今のあなただから」


_え。何の話?


「今の話だよ」


_い、今?い、今の話?え?ま、まあそんなに大事な話じゃないよね


「何というか……本当に変わらないね。大事な話してるのに大事じゃないとか……ちょっと腹立つかも」


_あ、ごめん。分からないから。本当になんの話?という感じなので


「………………あ。そっか。それはこっちもごめんね…」


_というか…こんなに関係ない話を続けていいのだろうか


「いいんだよ。これがないと進めないはずだから」


_うん。進めないや


誰かはまだ、伝えたいことがあるようだ。


「ボクを覚えていてくれて………うれしい。思い出してくれてうれしい」


_……?………変な会話


「泣くところを台無しにしないでほしいんだけど…………」


_あ、ごめん


誰かは笑い出す。


「だから好きなんだろうね。ボクは。だからこんな所まで来ちゃったんだろうね」


_そう


「…じゃあ、ボクはこれからやることがあるから。行くね」


_うん


誰かは抱きしめてからいう。

笑顔な気がする。


「ボクはどの世界へ行ってもどんな世界でも覚えているから。忘れても覚えているから」


_だからこの会話が意味分からない


「分からなくていいよ。ボクは覚えてるから」


白の彼岸花と花飾りは流れていってしまう。

何かもつぶやく。


多分表情は赤くしていると思う。


_……………?……不思議な話………

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