いつきと色葉
「ねえ、いつきさんは異世界に行ってみたい?」
突然だった。
いつきは答える。
「私は…行きたくないかな」
「私はイケメンに囲まれたいけどね!」
目を輝かせていのるように両手指を絡ませているのは可桃せな(かもも せな)である。
彼女は明るい。
ここは学校であり教室の中だ。
「イケメンに囲まれて幸せに生きて終わりたいなー」
「…私は女の子の方が………」
いつきは小さくつぶやく。
「ん?いつきさん、なんていったの?」
「あ、何でもないよ!」
「そっかー、でねどうして異世界の話したかっていうとね、ネットで異世界ボタンの話してる人いて」
「異世界ボタン?」
「そう!好きな異世界に行けるならほしいよねー」
いつきはアパートへと帰る途中、兄のかいとと会う。
「兄さん、異世界ボタンて解決した?」
「まだ解決してないな」
かいとはその異世界ボタン関係でけがをして頭にまで包帯をしていた。
「大丈夫そうじゃないね…」
かいとはにかっとする。少し顔が青い。
「大丈夫にきまってるだろ!心配すんなって」
と、無理をして笑う。
いつきを心配させないためだ。いつきはそれくらいわかる。
いつきは異世界ボタンについて、自分でも調べる。
例えば、聞ける誰かがいれば聞いてみるとか。
いつきは聞いてみようとしたが固まってしまう。自分がそういうことができる方でないことを忘れていた。
「どう聞けばいいんだろう……!」
と、そこへ色葉が来る。
「いつき!」
「色葉…!」
いつきはぱあっと顔を明るくさせる。
「何してるの?」
「異世界ボタンのことで」
「あー、あれね、いつきも異世界に行きたいの?」
「怖いから行きたくないな」
「そっか、あれでしょ?異世界に行けるとかで行こうとしたら怪物が出たやつ」
「あ、うん」
「こっちもさ、少し調べてて、でもわからないんだよね」
「兄さん、このことでけがしたし」
色葉は拳を作る。
「うん、私、かいと先輩の身の回りいろいろしようとしたのに桜子さんが全部してて」
いつきも知っている。
桜子はしっかりしすぎている。
「私何もできなかったよ!」
「そっかー…」
いつきは目を横へと向け、棒読みに答えた。
「と、いうわけでかいと先輩がひどい目にあったのもそうだし私も調べてるの」
いつきはいう。
「私も一緒に調べてもいい…かな?私、その、力ないから自分のことも守れないんだよね」
いつきは唇をかむ。どこか苦い顔をする。
「んー…だめ」
色葉は断る。
「だって、やっぱ、いつきは自分を守れないのにつれてけない、私は…」
色葉ははっきりという。
「…自分を守るので精一杯だもの」
「…」
いつきはその通りだと思う。
「ごめんね、色葉、その、無理なこと言って…」
「いつきがとかじゃなくて、私が弱いから自分しか守れないの、私こそごめん」
「ううん、私を守ろうとしてくれてありがとう」
いつきは手を振って行ってしまう。
色葉はずきずきと胸が痛む。
「私は、弱いから…」
一つだけつぶやいた。