現世界 青命屋敷(カン 三日月の存在)475
現世界
青命屋敷
観覧車 三日月の存在
三日月の存在は時の結晶に囲まれた。
腕を振ってもなかなか壊れない。
カンはというと、結晶には巻き込まれていない。
この部屋の時式に敵として認識されていない。
カンは急いでミカオの元へ向かう。
「みっちゃん!ここもきっと危ないよね……て、何か外にいるう!うわわ……」
カンはミカオの前にいる。
時に守られているが、不安はとれない。
カンはミカオから離れない。
バキッと時の守りにヒビが入る。
カンは焦る。
「みっちゃん!もしもこの場所が壊れても何とかする!」
ミカオを守り抜きたいとカンは思う。
作った相手を守りたいと本気で思っている。
パキパキと割れ始める。
「たとえ!戦い方?を忘れたって!みっちゃんを守る気持ちは忘れてないから!」
ミカオを守りたい気持ちがある。
強くはないが、そう思っている。
カンはしっかりとした顔をした。
そこへと赤の怪物が爪を向け、時の守りへ当てる。
何度も当ててくる。
亀裂が更に入り、
バキッ!!
と割れた。
カンはぐうっとする。
「みっちゃんのどことしても触らせない!!!」
カンは赤の怪物へとにかく飛び込む。
飛び込むだけで消えてしまう。
「え、消えた?」
カンはとにかく飛び込む。
あまりにも簡単に消える。
「消えてく……!?」
カンはけれど減らないことに気づく。
「減らない!!うう」
怪物たちは三日月の存在に震えていたが結晶に囲まれているため動いている。
カンはそのことに気づいていない。
カンは倒していっていると。
突然赤の怪物が止まる。
「え」
カンも止まる。
硬直する。
怯えている。
カンは周りを見る。
結晶の破片が飛んできた。
ガキャ、バキッという音。
結晶に囲まれた三日月存在は中で動き始めている。
ガリガリガリという音も聞こえる。
“空間”
カンはビクッとする。
声がした。
“空間”
声がする。
“空間は、いつも全部を護ってる、なのに、ひどい、痛がってるのに”
カンに声が聞こえる。
聞こえる。
「空間?」
カンはミカオを背負う。
軽々だ。
失っても守ろうとする意思を持つ。
失っても芯は失われていない。
カンはミカオを背負う。
部屋の中を見る。
ミスハサを一瞬見た。
ミスハサはその視線に気づく。
カンへと言葉を伝える。
伝え方はカンのみへ聞こえるように。
“「俺を気してるの?なら、俺を気にしないで」”
“「……みっちゃん、安全なとこ行ったら戻って……」”
ミスハサは強い言葉を伝える。
“「戻ってくるな。大事な相手いるなら離れるな」”
とても強い言葉だ。
ミスハサの言葉に。
カンは驚き、うなずく。
“「離れない……!」”
“「離れるな。今は離れてはいけない時だ」”
ミスハサは想う一人がいる。
だからこそ伝える。
離れるなと。
今、離れてはいけない時だと。
ミスハサは倒れつつ、笑う。
それから何とかして起きあがる。
“「行って。守れる時に離れたらだめだ」”
カンはミカオを背負い、走りながら頭を下げた。
“「うん!!!」”
ミスハサはその姿に小さく口角を上げた。
「離れたらだめだよ。守れる時は」
守れる、時は、ね。
守れない時は、その時はその時だとミスハサは思う。
触れられるなら
触れる距離にいるなら
守れる、という確実な状況なら
だから、もしも守れなかったとしても
それは起きたことで
誰も何も責めないよ
責めようがないよ
ミスハサは思う。
守れる状況でなかったとしても
守れなかった。
ミスハサという者を説明するならその言葉一つなのかもしれない。
守れなかった時の力を持つ者
守れなかった時の者
彼は守れなかった
ただ、守れなかっただけの者だ
血を吐きつつ、ミスハサは片膝をつけ、時式へ手を着ける。
「倒れてられないよ」
守れなかった。
そこから彼は始まっている
守れなかったなら、次は守る方になる。
だが、彼は。
守る方になれなかった者だ。




