上の方とかいと3
上の方の使いと並ぶようにかいとは黒い空間を歩くと、先に桜子がいた。
「かいとくん」
「桜子…」
上の方の使いはかいとから離れ、距離を置く。
「ではお二人とも…ここで戦ってもらいます…」
そこへ、球体から上の方出てくる。
「おーう、ちょうどいいや」
上の方は、かいとの元へと来る。
かいとの服を指差す。
「かいと、お前の体…桜子の闇がまとわりついてるはずだ」
かいとははっとする。
桜子の前でいいずらそうにする。
「俺…は」
「お前の体は異常なしと言われた。だが、それをよく思わない奴がいてな…そいつに見せてやってほしい」
「見せる?って?」
かいとは質問する。
「たとえ、お前たちが危ないものでも…戦えると、自分たちは暴走しないと」
桜子はいう。
「かいとくんも戦わせるんですか?」
桜子はここへと前やってきて、彼女をよく思わないものへと自分は暴走はしないと証明していた。
桜子の性格的にそういうことはいわないが。
「かいともだ。なに、一年に一度のこと。それに…かいと。自分が選んだんだろう?」
上の方は、クスクスと嫌みに笑う。
「“好き”かもわからない女のためにそうしたんだろう?」
かいとはまっすぐに答える。
「好きとかは…わかんねー…けど、何でかわからないけど…」
上の方は、その言葉を言わせずにいう。
「どうでもいい。お前の選んだことに興味はない。それよりもこのどれかの球体へ入り、戦ってもらう…私が聞きたいのは」
上の方はかいと、桜子を鋭い目で見る。
「“二人で戦うか”を聞いている。答えを出せ」
桜子は拳を作り胸の前に手を置く。
少し、うつむく。
かいとは、すぐに答える。
「戦う」
桜子はすぐにかいとの方を無言で見る。
「………」
かいとは桜子へこどもみたいな純粋な笑顔を見せる。
そして、上の方へ眉を上げ、答える。
「“二人で戦う”」
上の方はにこにことする。楽しそうに。
「戦うんだな?桜子はどうだ?」
桜子は胸に置いた拳を下げると、まっすぐに上の方へいう。
「私も戦います」
桜子はかいとへ、どこか不安そうだが笑顔を作る。
そこへ、黒猫が現れる。
「二人ってほこもいる!」
ほこはかいとの胸元を叩く。
「ほこのこと忘れるなー」
かいとはほこの頭をなでる。
「あ!ごめん!忘れてた!」
「ひどいよー!」
かいとはにこっとする。
「なら、“三人”だな」
「まあ、ほこ。人じゃないし、何もできないけど」
桜子がほこの頭に手をのせる。
「ほこ。ごめんね…私も忘れてた」
「桜子までー!」
「ほこ何もできなくなんてないよ、だって、いてくれるもんね」
ほこはにこーっとする。
「うん!」
「“三人”だね」
桜子は温かい笑顔だ。
上の方は、にまっとする。
「増えたな。まあいいが。見せてやれ…そいつに、お前たちを」
上の方は球体を見る。
「…じゃあ、ここに入ってくれ」
自分が出てきた球体へ案内する。
桜子とかいとの後ろに立つ、と。
二人の背中を同時に押す。
「行ってこい!かいと!桜子」
球体ヘと入っていく。
かいとは、隣を見て、桜子と目が合う。
手をつないだりはしないが。
ほこは真ん中に入って、かいとの手と桜子の手をつなぐ。
三つはそこへと行く。
姿は球体の中へ消える。
上の方の使いは上の方の元へ行く。
「上の方様…大丈夫…ですか?」
上の方の頬へとふれる。
「百合花、二人が出てきたら頼む。私は怪物どもを倒してこないとだ」
「はい…上の方様。私は待ちます。三人を」
上の方は、にこっとする。
そこに一切の疲れは見せない。
それが上の方という女性。
強い女性。
別の球体の中へ入っていく。
上の方の使いは一人となり、何となく今思ったことを声に出す。
本当に何となく。
けど、願ってしまう。
「一生懸命に生きる全てが最後は幸せをつかみ取れますように…」