似世界 空間の壊れた場所で(クロリネ)465
似世界
空間の壊れた場所で
クロリネ
赤の瞳の怪物の体は部分的に氷が覆われている。
クロリネは自分の口を押さえていたが
急に立ち上がる。
その顔は笑顔がある。
「この心への傷。あの僕が傷ついています…?僕が?笑ってしまいますね」
クロリネの背中は爪で裂かれた痕がある。
それは傷にならない。
痛み程度で動けない彼女でない。
痛みさえ感じているかも分からない。
だから動くことが出来る。
けれど、リアメラはクロリネの心へ傷を付けた。
忘れても一瞬でも思いださせる。
リアメラのつけた傷。
傷として残したいのだ。
嫌な記憶ほど残る。
後味が悪いほど思い出す。
リアメラは歪な感情としても、本当に好きなのだ。
そして本当に好きなのに。
失恋、は言葉としては違うのかもしれない。
けれど失恋と書いておく。
永い失恋だ。
永く続く失恋だ。
失恋の傷はそれぞれ違う。
リアメラは相手はいても叶わない。
それは、リアメラにとっての傷だ。
クロリネはリアメラを傷つけたことを普段は忘れている。
本当に忘れている。
けれど強い力を使うと思い出す。
一番の危機に思い出させる。
クロリネはニコッとする。
「面白いですね。面白いです」
氷を下から流れる波のように現す。
力の使いすぎは、気にしない。
背中を爪で裂かれたことで力は溢れる。
クロリネはニイとする。
「血は流れました。痛みはあります。ので、続けましょう」
赤の瞳の怪物をもう一度全体的に凍らせることを選ぶ。リアメラへの傷はもうなくならない。
だが、拓前を凍らせなければいいだけだ。
クロリネは自分がどこか遠慮はした。
遠慮したからまた怪物は動こうとする。
クロリネの気配に赤の瞳の怪物はビタッと止まる。
地面へ片膝を着ける。
「氷の皆さん。凍らせなさい」
クロリネの目の前に雪の結晶の絵の陣が一瞬浮かぶと。
地面はパキパキと氷が波のように張っていく。
赤の瞳の怪物たちは逃げることも出来ず凍り付く。
拓前の方へも氷は向けられる。
時恋は黒の刃を滑らかな形へと変化させると自分と拓前ごと包む。
凍らせられていく。
青の羽根のいる場所までは届かない。
氷はけれど、クロリネの周辺を凍らせた。
クロリネは立ち上がる。
可愛らしく笑う。
「僕が遠慮するなんて、何をしていたのでしょうか。ついつい、ですね。拓前さん?凍りましたか?」
クロリネは柔らかく笑う。
時恋は黒の刃をパキインと拡げるようにすると。
拓前はそこにいた。
「クロリネ…」
「あ、拓……」
時恋は思いっきりクロリネの頭をゴッと叩くことにした。
凍らせられられそうになったのだ。
時恋は怒りを言葉に出す。
「なに、する!時恋、いたから、いい、何する!、お前!、」
クロリネは頭を押さえながら笑う。
「では、空間を直すために動きましょう」
時恋は苛立つ。
「お前、こいつ、凍った、かも、しれ、ない!、」
「構いませんよ?先ほどの僕は遠慮したことで逆に危険にさらしました」
拓前は声を出す。
「あ、危なかったし!…でも…」
クロリネは笑う。
「空間を直しますよ」
拓前は氷で凍らされていない場所に降りたつ。
拓前は、自分のいた地面を見て。
「クロリネは、ここを凍らせていないし、俺がいたからし…」
時恋は怒っていた。
「あんな、にも、強大、力、」
拓前は笑う。
「俺のとこ、凍らせてなかったし……それに、時恋?だよなし?」
「時恋、だ、」
「守ってくれて、ありがとなし」
「お前、いない、困る、」
「そっかし」
拓前は破片が輝き浮かぶ。
それを握ると壊れた亀裂へと蒔いていく。
凍らせてもまだ来る。
赤の瞳の怪物は来る。
時恋は黒の刃で消していく。
クロリネはというと、さすがに強大な力を二度も使ったことでさすがに疲れる。
そのため今は氷が自分で動くことに任せクロリネは座り休んでいた。
そのことに時恋は更に苛立つ。
「何、してる、お前!、」
「お休みタイムですよ」
「休む、な!、」
「えー。氷たちは僕の力です。ほら、動いていますよ?」
「座る、腹立つ!!!、」
「休みも大切です」
拓前はその近くで必死に破片を蒔いている。




