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上の方と桜子2
「桜子」
上の方は桜子の名前を呼ぶ。
「はい、上の方…」
桜子は返事をする。
少し暗い。
上の方はほんの少し、汗を肌ににじませ、白のタオルを首元につけると、顔を拭いていく。
「少しだが人みたいになれてよかったか?」
「はい。よかったです」
「私はかけらのお前の方が好きだったな。人なんて…良いと思えないからな。でも、今のお前のこと…嫌いじゃないな、なぜか」
上の方はにこっとする。
「かいとのこと好きか?」
桜子は笑顔を作る。
恋する女の子の、頬が桃色に染まった笑顔。
「はい!大好きです」
その笑顔に、上の方は「そうか」とだけ答えた。
そこには黒い空間に、いくつかの球体が散らばっている。
その球体へ上の方は近づく。
「かいとはまだ来ないな、私は行ってくる…あとは、百合花が言うだろう」
「はい」
「それじゃあ、桜子はその辺で待っててくれ…にしても桜子はこの空間は体とかきつくないか?」
「は…はい」
「ここの空間との相性はいい。よかったな桜子」
「…は、はい」
上の方は、球体の中へ入ってしまう。