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似世界 帰ってくる二人409
エリィー。
彼女は。
現れるはずがなかった。
けれど今、かいと、桜の少女の真ん中で手をつなぐ。
「桜のあなた。私と同じだね!」
桜の少女は心地の良いエリィーの声を聞く。
「同じ…だね」
「あ…………!そうだ、後ろから来てるみんな、外へ出ちゃうみたい、頑張ってね!」
かいとの手を少し力を込めて握る。
「桜のお姉さん。助けてね…?」
かいとは一度、困った顔をしてからうなずく。
「…………ああ」
「お兄さん嘘つけないね!」
エリィーは手を離す。
かいと、桜の少女の手を繫げる。
エリィーは二人へ笑う。
「別の世界でも、どの世界の私も……見守るしか出来ないけど……」
彼女は続ける。
「でも、ね!見守る!それも出来るか分からないけど!でも!見守る!」
かいと、桜の少女が答える前にエリィーは二人の背中を軽く押す。
光の先へ二人は向かう。
帰るために。
二人の姿へ手を振ってからエリィーは振り返る。
「あなたたちは消えた存在を食べたいんだね。私はこの場所で戦わないと!」
だが、赤い目の怪物は外へ向かう。
「空間さん。痛がってるもんね」
赤い目の怪物も光へ吸い込まれるように向かう。




