表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
135/2036

かいと

_____

_…………


_はじめまして。

_桜子と半分になったんだね?

_でも、どうしてそんなことしたの?


声がする。

声が、していた。

その声はもう昔から聞いている声だ。

昔から、だから、それは。


_私は気になるの


誰かに何か聞かれてる?

俺に聞いているんだろうか?

俺は、辺りをキョロキョロとする。

そこは、暗闇だ。

暗い闇の中だ。

俺は、その中にいる?


_聞かせて


その声は、聞いたことがあるとかじゃない。

だって。


_かいとくん_


この声は。

俺は、その声の誰かの名前を呼ぶ。


「さくら…こ?」


桜子の声だ。

絶対に。


_うん。私は桜子だよっ…でも…私はね


桜子はにこっとする。

子どものような笑顔で。


_暴走して、闇に染まり尽くした時に出るのが私。…なら…私は…


かいとの前に桜子の姿の少女が現れる。

桜子と同じ黒髪。

桜子と同じ瞳。

桜子としか言えない。


_私は、もう一つの桜子だよ


その顔は、どこか微笑んでいるが、悲しげに感じた。

暗いはずなのに桜子の姿ははっきりと見えている。


「桜子…は!そうだ!桜子はどうなったんだ!」


俺はようやくそのことに気づく。

闇の中にいたからか。

頭もぼんやりしていた。


_桜子は半分人で、闇を吸収する力は持ってる、危なくないって。桜子の自分で闇を消していた努力や、あなたたちがそばにいたことで…今があるんだろうねー


「半分人ってことは…」


_危険ではない…かな?知らないけど


俺は、膝をつく。


「よかった…本当に…よかった…桜子は幸せになれる…よな…これで」


桜子は一度、遅れるように言葉をいう。


_大丈夫なんじゃない?


かいとは、気づかなかった。



俺は、勝手なことをした。

でも、でも。


_かいとくんは痛い思いして、半分、闇を宿したね。正直にいうとー。あなたの方が危なくなってるかもよー


俺は黙る。

俺は、何となくわかってた。


桜子はかいとに抱きつく。

かいとは、驚いて、固まる。

ふくよかな感触が。


まて、俺。

落ち着け。

おちつけ。


桜子はかいとの焦りに気づきつつ抱きしめる。


_後悔ないー?私を怒っていいよ。でも本当の桜子に怒るのは許さなーい


俺は、ドキドキしつつ、顔をまっ赤でいう。


「怒るわけないだろ。俺がそうしたいからそうしたんだ!誰かのせいにしたくない」


桜子はどこか目を潤ませてぎゅうと抱きつく。


「それより力強くないか!?離れ…」


_私、大好き。かいとくんのこと


「…え」


なんで?

俺?

え?


_かいとくん。桜子も私も本当にかいとくんのことが好きなんだよ。好きすぎるほど好き!好き!すきー!


「…え…そうなのか?」


_だから嫌だったのに!幸せになってほしいのに!私のことなんてもう見ないふりしてどこかに逃げればいいのに!この!ばーか!


急にばか呼ばわり…。

まてまて。


「ばかはないだろ。ばかは…いくらなんでも」


_ばか!かいとくん!


怒ってる…俺の勝手とか、そういんじゃなくて。

俺のために。

俺が幸せになってほしいって。

俺のために。

幸せじゃないと思われてるのか…?

俺は。

なら、俺は


桜子の頭にそっとふれる。

桜子は上目使いでこっちを見てくる。


_かいとくん?


「俺の幸せを勝手に決めるなよ…幸せか不幸せなんて俺が決めるんだ。俺のこの世界への感じ方で全部決まるんだ。俺は、今幸せって思ってる。全部妄想でも」


「正直、今幸せでもこれからはわからない。絶望で終わるとしても…俺は、幸せだった時を忘れないでいたい。…て、何がいいたんだ!俺は!えーと、長くなって悪い!」


俺は、頑張って伝える。

えーと、えーと、えーと!


「俺は、幸せだ!」


_でも


「幸せは俺が決める。自分で決めるんだ。だから、俺は…俺は…幸せだ」


俺は、なぜか。

桜子が俺の頬にふれた。

幸せと思うことはなんだか目元がじわりとする。



_泣いてるの?


「泣くわけねーだろ!」


人前で泣くとか!

んなの!かっこわりーし!

そこ!重要!

なのに。


_幸せって思い込んでるようにも見えるー。でも。私にそう言ってくれるのは…嘘じゃないし、うれしいな~


「嘘のわけないだろ、自分で決めたことだ」


桜子は、抱きしめてくる。

離さない。


_…離したくないなー。離したくない。かいとくんは私のものだよ。私のものと思いたいな。かいとくん?私はあなたが好き…好きすぎるの。もう、あなたは私のものと思ってるの!


「そ、そんなに…俺のこと好き…なのか?」


かいとは、とてもかわいい桜子に好きと言われると、ありえないと思う。

だって、


「俺の何が…好きなんだよ…?」


聞いてしまう。


桜子はぎゅっと抱きしめてきて、髪に指を入れる。


_全部!全部が好き!全部!ぜーんぶが好きなの!


「え」


かいとは顔を赤くする。

恥ずかしい!でも、抱きしめられるの…嫌じゃない!…うれしい………!


桜子は、気づく。

すっと離れる。

先ほどまでの強く抱きしめていたが、離れるのは少しの迷いみたいなのがない。


_さよなら。かいとくん。あ、またねー。


桜子は笑う。

一つも陰がなく、本当にかわいく、笑う。


_大好きだよ_


かいとは、つい手を伸ばす。


そして、目が覚める。

まず見えたのは天井。

そして、手を握られている感触。


「かい…とくん…?」


桜子は、そこにいて、手をぎゅっと握る。

強いが、柔らかな。

かいとは、いう。


「桜子…」


桜子は涙を落としてしまう。

すぐに自分でふくと、寝るかいとを抱くように上に重なる。


「起きて…くれて…よかった…かいとくん……………ばか………」


さっきも誰かに言われたような気がしてかちんとくる。

起き上がる。

かいとは、桜子へという。


「ばかはいくらなんでもないだろ」


誰かと同じ会話をしたような、そんな気がした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ