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似世界 都合の良い現実内282

似世界

都合の良い現実内


かいと


現ツミウ 似ツミウ


都合の良い現実。

尖る物体と円錐爪が接着されたような存在が防がれている。

現ツミウも同じだ。

前を向けない。

前を向けない。

後ろも向けない。

右にも左にもすでに未来がない。

だから、どちらも向けない。

けれど同じ日々であり、違う道を進んだ彼女の方は向ける。


現ツミウは似ツミウの顔を見てから。

薄塗りの青色は溢れるように中央で水ではなく硬い四角形が縦横に並ぶものを出現させる。


その力は尖る物体と円錐爪が接着されたような存在は似ツミウの力で防がれている。

現ツミウはその光景から逃げるでなく、似ツミウの力へ自分の力を向ける。

現ツミウは自分たちを捧げるために動く。

二つの力がキインと音を立て静かにぶつかる。 どちらも同じ力。

同じであり、どちらも引かない。

二つの力は互いにまずは噛みつき喰らい包もうとするようにぶつかり合う。


_____________


_ここまですればよかった……?


_でもね。ツミウ


_やはり選ぶのは思航なのね


_私じゃないね


_それに気づくべきね


_ツミウ


_私は失って時間が経っても心が良くならなくて


_今もよくないね


_でもね、やはり………選ぶのは思航ね


_けれど、ごめんなさいね。私、別の世界では思航が解放されることを願っていたのね。私の甘さね。甘い私の願いね。別の私に叶えさせようなんて………なんて甘さね


似ツミウは前を向く。


「ごめんなさいね。私は捧げられようとしましたね……けれど!私もシルベさんと似た役目を持つのですね。それなのに!私は!あなたを………止めますね!」


_本当は止めたくないね


_ここへ拓前さんが来た時は止める気でいたね


_けど、もし叶うならと、何が叶うならね!


「私はあなたを止めますね!!!」


_____________


_私は思航を解放するね


_なんて、何度何度した?一度でも叶えられた?


_叶えられてないよね?


_叶えられてない、叶えられてない、叶えられてない!!!


_今度、今こそなんだ!全てどうでもいい!!!


「私は思航のためだけではないね。全てが壊れてもいいね。何が悪いね?」


現ツミウの力は更に増した。


__________


都合の良い現実は笑った。

叶えたいあなたのために

叶えたいあなたのために。


現ツミウの力が似ツミウの力を割った。

パキインと音を立て、尖る物体と円錐爪が接着されたような存在は落ちてくる。

そこへ現ツミウは走り出すと似ツミウの体を後ろから掴む。


「ツミウ」


「私と一緒に捧げられるのですね」


落ちてくる。

巨大な都合の良い現実が。

落ちてくる。


落ちてくる。


似ツミウは離れることが出来ない。


そこへ


赤の力を拳に込めた少年だ。

彼は尖る物体と円錐爪が接着されたような存在へぶつけた。

消すことは出来ないが、遠くへ飛ばすことは出来た。


彼はかいと。

現ツミウは彼を敵と見ている。


似ツミウからは離れず彼女へ手を向けている。


「名前何でしたっけ…?あなた」


「か、かいと」


「あ……かいとさんでしたね。すみません。出来事が多く……忘れてしまって」


「いや、いいんだけどさ!」


「では。近づかないでくださいね。私とツミウは共に消えるのですね」


「消えるって」


現ツミウは笑う。


「消えて、みんなを解放するのですね」


「かいほう…!?て、後ろ」


現ツミウ、似ツミウの後ろにいるのは。

尖る物体と円錐爪が接着されたような存在が近付く。

現ツミウは笑う。


「都合の良い現実さん。私たちを捧げますね」


似ツミウはまだ抵抗する。

近付く存在へ薄塗りの青色は溢れるように中央で水ではなく硬い四角形が縦横に並ぶものを出現させる。


現ツミウは苛立つ。


「ツミウ!まだ抵抗するのですかね!」


「しますね!私はそうはさせないですね!」


かいとはこの状態にどうすればいいか分からない。

かいとは待たない。

自分から聞いた。


「ツミウ!俺がどうしたらいいか教えてくれ!」


似ツミウが答える。


「かいとさん!あの巨大な存在は私だけでは倒せませんね!同時に攻撃してほしいのですね」


かいとはとりあえず頷く。

似ツミウは自分の肘を曲げて上げると手の平を現ツミウの顔の前へ出す。

一度目を閉じたが、似ツミウは現ツミウの腹へ続けて膝を打ちつける。

現ツミウは腹を押さえた。


「似ツミウ……!どうして、あなたも」


似ツミウは走り出すと、かいとの隣に立つ。


「かいとさん。同時に力をぶつけてほしいのですね」


かいとはうなずくが、そこへ尖る物体と円錐爪が接着されたような存在が近付く。

現ツミウは腹を押さえ立ち上がる。


「私だけでもいいから…飲み込んでくださいね」


都合の良い現実は現ツミウを突き刺し、力を吸い、上から落ちてくる。


似ツミウは手を伸ばす。


「ツミウ!まだ捧げるんですかね!?」


現ツミウはしっかりと前を向く。


「ここまでしますね」


かいとは現ツミウの方へ走った。

落ちてくる都合の良い現実はかいとごと飲み込んだ。


似ツミウはいう。


「かいとさん……!!!」


_____________

どこか。


かいとは現ツミウの隣にいた。


「あ!俺も来てしまった!?ツミウ!ごめん!」


現ツミウはかいとの姿にいう。

クスリと笑う。


「あなたが外にいないのでしたら、もうツミウと戦う方はいませんですね?よかったですね。これで………」


かいとは顔を振る。


「……いや、いる……かも」


かいとは思った。

いる……かも。と。


だから、かいとはここに来ることを選べた。

かいとは手のひらを出す。


「一緒に帰ろうぜ。ツミウ」


現ツミウは自分の手を持ち上げた。

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