ある彼の話4
異世界に行きたい男子高校生は探す。
走り回って、壁とか、地面などをくまなく両手でさわっていく。
「異世界に、異世界に行ける方法」
男子高校生はできることはするために。
「…」
男子高校生は気づく。
「でも、俺の行きたいような異世界に行けるもんなのか…?」
男子高校生は気づいてしまった。
そんな甘い話は世の中にはない。
そんなものだ。
頭を抱える。
「俺は優しくされたいんだー!」
と、叫んだ。
「…」
そこへ身長の低い少女がやってくる。
彼女は白いワンピースに大きな一つの紫の花が
刺繍されている。
「おにーちゃん」
とてもかわいらしい声が響く。
「おにーちゃん、なにしてるの?」
「え…俺、異世界に行きたくて…」
少女は伸ばした茶色の髪を揺らすと自分の手を後ろに組み、にこっとする。
緑色の目が細まる。
「いせ、かい…?」
なぜか男子高校生はしゃべっていた。
「俺、学校ではうまくしゃべれなくて、友達は一人いるけど、俺と違って明るい方だし、俺は物語の中だと自然としゃべれて、だから行きたいんだ、そうすれば、俺は…」
少女は男子高校生の頭をなでる。
いいこいいこするように。
「なっ!」
「なきそう、だいじょうぶ?」
男子高校生は年下の少女に心配され、悔しさを感じる。と同時に恥ずかしくなる。
「俺!大丈夫だから!」
「よかったー」
少女はにこりとした。
そうすると急に後ろを向いてどこかを指をさす。
「おにーちゃん、あのね、あれこわいの」
男子高校生はそっちを見るが建物しかない。
「なにが?」
男子高校生は後ろを向くと少女はもういなかった。
彼は少女をきょろきょろとさがすがいない。
「…あれ?おーい…?どこに」
とりあえず少女の指をさした方へと走ってみる。