赤井13
赤井家 屋敷内 空間? 入り口付近
茶髪の少年。
仁は、陸へと向かっていく。
拳を陸へと向ける。
陸は、顔を殴られる。
仁は、あっけないため、何度も拳を打つ。
陸は両腕で防ぐ。
仁が聞く。
「お前、弱いな」
「…」
仁は足を横へと振り、陸の足へと当て、陸は体が支えられず地面へと倒れそうになるが、右の手のひらを地面につけ、何とか倒れることはなく、後ろへと下がる。
仁はいらだちの声を出す。
「さっさと倒れろよ!てか、お前!能力とかないのかよ!使ってこいよ!」
仁は叫びながら拳を向ける。
「…………っ!!」
陸は拳を受け止める。
「力使えっていってんだろ!」
「僕の能力は傷つける力が強いです」
「あ?…ちっ…力に頼んのは嫌だけど…でも」
仁は小さくつぶやくと自分のポケットに手を入れる。
そうすると急に走りだす。
スピードが速くなる。
陸は、思いきり拳を腹に受ける。
速すぎて、よけることも、打ち返すこともできない。
陸は何もできず、後ろへと仰向けに飛ばされた。地面に倒れる。
「倒れてろよ!俺は悠磨さんの所に行く」
陸は何とか起き上がる。
「待ってください…行かせないし、そもそもどうして…」
仁はいう。
「あいつは危険なんだろ?理由はそれだけだ。悠磨さんはここを守ろうとしてる」
桜子は危険の可能性がある。
けれど、一度だって暴走していない。
彼女が自分を抑えたからだと思う。
それは彼女の自分での危険でないことの証明になる。
「お前らは間違ってる。絶対に」
間違っていてもきっと、陸はそうしてしまう。
「間違っていても…僕は止めます」
彼女を守ることはできなくても。せめて、ここで。
陸は前に立つ。
仁は、いらっとする。
「どけよ!かいとって奴はまあ、隼斗がどうにかしてるが、行かないとなんだよ!」
「行かせないです…」
「ここで、暴走させて自分で自分を破壊させようとしてたんだ!なのに、上なんだか知らねーが、あいつがお前らなんか呼ぶから」
仁は悔しげにするが、陸へと向かう。
拳を向けた。
陸は拳を向けていて、隙のある腹へと自分の体勢を低くして、手のひらで打つ。
仁は、倒れることはない。
何かの能力なのかと思うが。
「俺は能力がない」
だから、ポケットから石を出し、強く握る。
「石に頼るしかねー奴だ」
仁は、とても悔しそうに唇をかんだ。
物に頼ることが相当嫌がっているようだ。
強化石を仁は持ち、せめて陸はここで止めようとすることにする。
だが、倒れないようだ。
仁は。
だから、仁は桜子のことは隼斗と悠磨でどうにかもなると思える。
だから、ここで陸と戦うことにする。
そこへ、かいとの叫ぶ声がした。
だが、二人はその声で止まることはなく戦う。
仁は石を握ると右腕が大きくなり、拳を陸の右腕へぶつける。
「…っ!」
左腕に痛みが走る陸だが、気づく。
「…うわ…いった…」
左腕は使うのをやめて、仁を見る。
腕が大きくなっても弱い部分はあるはず。
よく見る。
右腕を上げながら走ってくる。
拳を腹へと何度も打ちこまれる。
陸は仰向けに倒れる。
痛い、痛いもわからなくなるほど、痛い、けど。
まだ動ける。なら、と。
上体を上げて、ゆっくり、ゆっくり、起きようとする。
膝に手を置きながらも立ち上がろうとする。
下を向いていたが、前を向く。
「…力を僕は使いません」
「…なんでだよ!」
「…あなたが力がないからです。力のない人に僕は力を使いません」
仁は頭に筋ができ、馬鹿にされたことにいらだつ。
「馬鹿にすんじゃねえ!」
拳が飛んでくる。
勢いで、怒りにまかせてきてる。
なら、どうにかできる!
陸は拳が来る寸前、右へと避けると仁の体へ入るように前に来る。
自分の下から上へと拳を仁の腹へと押し込んだ。
「…がっ………!」
仁は腹を押さえる。
腕が元の大きさに戻っていく。
「…!まだだ!」
仁は叫ぶ。
「…力がないからって!………馬鹿にするな!力がないからってなんだ!…………力が…力が…あれば!」
仁は、石の力を使ってたからか相当に体力がなくなってるのか…ふらついてる。
それでも、立っている。倒れたりしない。
陸は、何もしない。
倒れる。
わかる。
仁は倒れる。
陸はそれを見た。
「…力が……………まだ、だ…」
陸は何も言わない。
戦いは終わったのだと。
お互いにきっとわかっている。
でも、彼は立とうとしてる。
立っているものだけが勝ったということなのかもしれない。
けれど、立とうとしているものが負けているとは言わないと思う。
「…俺は、まだ………!」
仁は立ち上がろうとしている。
まだ。
陸は…。
立ち上がるまで見つめた。
仁はがんっっと、拳を地面に打ち付ける。
「…力も……使ってねーやつに…俺は……………っ!」
仁は意識を失う。
陸は、何も言わず仁を見続けた。
立ち上がろうとした彼を。
見つめた。