過去1 6の1
これは、俺の話。
子どもの時、兄のように強くなりたかった。
扉の後ろに隠れて、兄のかなたが扉を開けたら、思いきりパンチする。
が、兄は俺の握った拳を手のひらでつかむ。
「兄ちゃん!俺が勝つんだ!」
兄は、すぐに手を離す。
「兄ちゃんに勝つんだー!」
パンチを兄に何度も打つが、全て手のひらで受け止められる。
にやりとかいとの兄、かなたが笑う。
「やるか?かいと」
「勝つ!」
かなたは、屋敷の広い体育館のような場所で行き、俺につきあってくれる。
俺は、パンチを兄へと何回もする。
兄は、避けていく。
「俺をちゃんと見ろ、どこ狙ってんだ?」
ただ、やみくもにパンチをしていく。
だが、当たらない。
俺は、ちゃんと見ている。
ちゃんと見ている。と、思い込んでたと思う。
かいとはかなたの腹へと拳を向ける。
なのに、手のひらが俺の拳を掴み、思いきり飛ばされる。
かいとは、床へと倒れた。
かなたは、やべえ!という顔をして、かいとの元へと行く。
「かいと!わるい!大丈夫か!?」
かなたはかいとへと近寄る。
かいとは、にまりとする。
拳を作り、かなたの左頬に当てる。
かいとは、はっきりとにらむようにいう。
「俺がガキだからって手加減すんな!」
かなたは、弟に対して意外と優しさがある。
そのためか、甘くしてしまう。
「わるいな、でもな!お前弟なんだよ!思いっきりできるかよ!」
かいとはむかっとしてかなたの背中を何度も思いきり叩く。
「俺とちゃんとたたかえ!!」
「えー、もっと大きくなったらな」
「やだ!俺とたたかえ!!!」
「痛いって、いてぇって!」
そこへ、扉が開く。
そこには、黒髪の小さな少女がいた。
彼女はいつきだ。
かいととかなたの妹だ。
「かなたお兄ちゃん、さくお兄ちゃん来てる」
いつきはそういうと、かなたはいう。
「おう!作か!て、何しに来たんだ?」
「かなたお兄ちゃんと戦いたいって」
「おう!いいな!で?作は…_」
いきなり、かなたの目の前に足裏が向かってきた。