赤井5
赤井家 屋敷内 和室
「赤井桜子は、壊れるかもしれない、そんなもの守りたくない」
悠磨ははっとする。
「あ…つながりの場所忘れてた」
悠磨はそのことを忘れていた。
「戻る…か。もう動けるようにしてるはず」
仁がいう。
「なら俺が相手になるぜ!」
隼斗もいう。
「俺も…どうにかします」
桜子は静かにしている。
ほこが肩に現れる。
「桜子ーん?」
悠磨はにこりと挨拶する。
「はじめまして。俺は悠磨。よろしく」
「よろしくよろしくー」
そこへ、かいとが走ってくる。思いっきり拳を作って、悠磨へ向けるが。
仁が前に出てくる。
お互いに両手を重ねるように合わせる。
かいとは、にらむ。
「どけよ」
仁もにらみつける。
「てめえこそどけよ?」
かいとは、手は離さず、足を向け蹴りをいれるように動かすが仁は体を後ろへ下げるように動いて当たらない。
そこへ、陸も来る。
陸の前には隼斗がいる。
陸はいう。
「僕は…戦うのはあまり好きじゃないんです」
「…俺もです。でも…悠磨さんには近よらせません」
「…わかりました」
いつきは来るが、悠磨はにこりとしてくる。
びくっとする。
「あ…の、桜子さん、を」
いつきは声が小さくなっていく。
「…こ、こわさないで…ください!」
「いつきちゃんは何かできるの?」
「…え」
いつきは手をつかまれる。痛くはない加減で手を引かれる。
悠磨は桜子へという。
「一度戻るんだけど…いつきちゃんに何もされたくないよね?」
桜子は静かにうなずく。
ほこは、はっとする。
桜子が静かにしていて、ほこも静かにする。
赤井家 屋敷内 第二部屋
悠磨たちは敬造のいる所へと戻った。
「赤井と桜子をつないでいる何かがあるはずだ、それを教えろ」
「そんなものはない」
「あるだろ?」
「ない」
父の言葉に笑う。
「大事なものほど、自分の部屋には置かない、じゃあ、んーそうだ、意外と外の物置?とか」
「あっ、それとも桜子ちゃんの部屋?かいとくんが使ってた部屋?いつきちゃんの部屋?それとも、意外と台所?」
「ないと言っているだろう」
「そもそも、あんな危ないもの、どうしてこの家は守ることに?押しつけられただけだろ」
「桜子は…」
「危険なものだ、まだかけらのままならよかった…なのに人にわかれるなんて、しかも他国のものは壊れて、暴走したって聞いてる」
悠磨は言葉を続ける。
「だから来たんだ、でも…あれだけは守りたくない」
「…悠磨…」
悠磨は、父と戦う気はないのだ。
「俺は赤井の家を桜子から解放したいだけなんだ」
ほこは、思いきりいつきへと飛び込み、いつきはその勢いで悠磨から離れた。
ほこは叫ぶ。
「いつき!桜子連れて逃げて!」
いつきは桜子の手を掴んで走る。
向かうその先は地下だ。
地下にはかけらがある。
逃げるとしたらかけらは一緒じゃないと。
地下につくと、桜子は闇色をしたかけらの入るびんを見つめる。
ほこがいう。
「…逃げよう!桜子」
いつきもいう。
「行こう…です」
逃げるってどこへ?
桜子は思う。
逃げるところなんてないのだ。
「私は、かけらで、人じゃなくて…でも人、で?あれ?私は…どっちなの…」
桜子はつぶやく。
いつきは何も言えないが、ほこはびんを持つ。
「うわ…!おもーい!」
重そうなほこを見ていつきも持つ。
「…大丈夫ですか!」
ほこはにこっとする。
「どっちも桜子!行こー!」
桜子ははっとして、自分のびんを持つ。
「…あ…ごめんね…私が持つ」
赤井家 屋敷内 和室
陸は隼斗と向き合う。
陸も隼斗も動かない。
お互いに先に動く方ではないのかもしれない。
陸は、向き合い続けていたが、その状態を変えるには動くしかないと思ったのか
陸は前へと走りだす。
隼斗はそれでも動かない。
陸は、右に拳を作り、隼斗の体を打とうとしたが、隼斗は急に後ろに下がる。
右の拳は当たらず、隼斗は自然に流れるように陸の右腕をつかむ。
ぐいと、引っ張られ、予想していなかった。
前へと倒れそうになるが、右足が支えようとして前へと出た。
陸は、倒れないために浮いた左足を自分で膝を曲げて力を入れて地面を踏む。
つかまれていない方の手で無意識に隼斗の服の首元付近をつかむと、自分の頭を思いっきり隼斗にぶつけた。
ガツンッ!
陸も隼斗も、頭に痛みが走り、お互いにふらりとする。
「…………っ!」
「…っ!!!」
が、陸の方が衝撃があったようで、片手で頭を抱える。
「…いった…!」
隼斗も頭を抱えたが、すぐに動き、後ろへと行く。
隼斗は指で小さな羽を手に持つ。
その羽を陸へと向ける。
陸はなんとか振り返ると、隼斗の腕を掴む。
隼斗はいう。
「…後ろを向いているので、今だと思ったんですが」
陸はぐっと、腕に力を入れる。
隼斗は悠磨が戻ることは知っていた。
戻るわけにいかない。
隼斗は、つかまれた腕で持つ羽を手首の力のみで陸の方へと飛ばす。
陸の頬をかする。
隼斗は無理に腕を動かして、陸から離れて後ろへと下がる。
「…ここで寝ていてください」
「何を…?……?」
陸はがくりとする。
陸は膝をつく。
前にいる隼斗がよくわからなくなる。
前が薄れていく。
「な…に…」
隼斗は一応説明しておく。
「安心してください。少し眠くなるだけなのにしましたので…では」
「まてっ!…ま…て…」
陸は床に倒れた。