兄が好きすぎて困る
兄が好きすぎて困る。
兄がどうして好きなのか?
兄はどうして好かれるのか?
わからない。
「兄が好きすぎて困る」
妹であるいつきはつぶやく。
学校帰りに公園をよると兄の姿が見えた。
兄は黒の制服を着ていて、隣にも制服を着ている女性がいる。
兄は意外と女性に好かれやすい。
なぜなのか?
いつきは見つめる。
「…」
兄の名前はかいと。
かいとは、同じクラスで幼なじみの赤井桜子といる。昔からよく一緒で確実にかいとを好きだと思う。
赤井桜子
黒髪を長く伸ばし、ふわりと揺れる美しい女性。性格は穏やかで優しい。
いつきはすべり台の後ろから二人の会話を聞く。
桜子がいう。
「かいとくんはいつも女の子にもてるよね」
かいとが横に手をぶんぶんと振って答える。
「全くもててねーよ!もててんのは桜子だろ」
「私なんてもててないし、かいとくんのほうがもてもてだよ…好きな女の子いるの?」
いつきは思う。
あっそれは気になると心の中でいう。
かいとはすぐに答える。
「…いないな」
「いないの?そっか…よかった」
桜子はほっとするように両手をふくよかな胸の前で合わせた。
その顔は本当に安心した表情。
いつきは思う。
とっとと好きな人とくっつけ。
いつきにとっては大事なことだ。
いつきの後ろから誰かの声が響く。
「いつき、なにしてんの?」
「色葉!色葉こそなにしてるの?」
いつきは笑顔になる。
「ん?私も帰りで、というか!かいと先輩!?いって来るね!」
「う、うん…」
里先色葉
銀色の髪を横で一つにまとめている。
制服を着ていて、かわいらしい。
顔の右頬に白いシップをつけている。
かいとの元へ行くとかいとの腕にくっつく。
いつきは頬をふくらます。
「…」
かいとは驚いていう。
「な、なんだ!?色葉!?」
「かいと先輩!私とどっか行きませんか!?」
「いや、行かねーし」
「どうしてですか!?」
「これからやることあるんだよ」
「私も行きたいです!」
その光景に桜子はじいと二人を見つめる。
桜子はどこか眉をひくひくさせる。
「色葉さんよね?かいとくん困ってるよ?」
色葉は一層ぎゅうとする。
「困ってませんよね?かいと先輩?」
かいとは力の強さになんとか言葉を出す。
「いや、困ってるから、離れてくれ」
「えー!?」
色葉は仕方なく離れた。
桜子がいう。
「かいとくん、用事あるんでしょ?行ったほうがいいと思うよ」
「あ、ああ。じゃあ、俺行くな」
かいとは行ってしまった。
色葉と桜子が残される。
色葉がいう。
「邪魔しないでくれますか?桜子先輩?」
桜子はニコニコと答える。
「邪魔をしていたのは色葉さんのほうだよ?」
いつきはそれを見てつぶやく。
「兄が好きすぎて困る」