5.部活
初めて評価を頂きました!とっても嬉しいです。
キンコンカンコン、キンコンカンコン。
そんなこんなであっという間に放課後になっていた。
「よっしゃぁ。部活だぜ。今日も走るぞ。涼はもう帰るのか」
「いや、僕は図書室に寄ってから帰るよ」
「そうか。んじゃあ、また明日な」
「うん。またね」
涼は本を片手に教室を出ていった。俺もグラウンドへ急いだ。
「よお、ちぃ。早いな」
「当たり前でしょ。春の大会が近いんだから」
ストレッチをしながら千夏は答えた。肩まである髪をポニーテールでくくっていた。
「俺も頑張らないとな」
俺も千夏の隣りでストレッチを始めた。
「調子はどうなのよ」
「まあまあかな」
「とか何とか言って、アッツーけっこう調子いいでしょ」
「あ、わかる? なんでかちぃって先生より俺の調子よくわかってるよなぁ~」
俺は少し照れながらストレッチを続けた。
「あ、当たり前でしょ。何年一緒にいると思っているのよ? ずっと一緒に走ってるから分かるわよ」
「まあ、そうか」
「そろそろアップに入るからじゃあね」
「おう。俺はもうちょっとストレッチしてから走るわ」
ちぃはじゃあね、という感じで手を振りながら去って行った。ゆっくりと体を温めるようにトラックを走り始めている。
さてと、俺もそろそろ体もほぐれてきたし、アップを始めるとするか。
伸びをしてゆっくり走り始める。タッタッタ、タッタッタ。規則正しいリズムで走る。タッタッタ、タッタッタ。タッタッタ、タッタッタ。そのうち、ちぃに追いついた。
「ちぃ、ハードルはどう? 短距離から変わったじゃん。上手く飛べてるか?」
「うーん。なかなか難しいかな。ただ走るのとは違って飛びながら走るからちょっとね。タイミングとかまだまだ課題が山積みって感じ」
ちぃは真剣な顔をしている。何事もやるからには本気だ。
「あんま無理すんなよ。けっこう飛ばし過ぎるんだからな、ちぃは」
「分かってるって。けがしない程度に頑張るわ」
「そう言って、いつもけっこう遅くまでやってるだろ。大会近いからってやりすぎんなよ。そろそろ調整の時期だろ」
「そうなんだけどね。まだ、納得いかないとこがあるから……」
「まあ、付き合うぜ。今日は何時までするんだ?」
「……。6時までかな。っていうか、別にアッツー先に帰ってもいいんだからね。私につき合う義理はないんだから」
そう言うちぃの顔は少し赤くなっている。
「別に、いつものことだろ。俺も練習しながら待つぜ。どうせ帰るとこ同じだし」
「同じじゃないし。隣の家だからね」
「まあ、似たようなもんだろ」
「はぁ。アッツーってそう言うとこ適当よね」
「俺は細かいことは気にしないんだよ。おおざっぱでもいいだろ」
俺はニカッと笑ってみせた。ちぃはやれやれという顔をしながらリズムよく走る。
「集合!」
部長の号令がかかり、俺たちは朝礼台の前に集まった。そして、顧問から今日のメニューを指示を受けてそれぞれの種目に分かれ練習を始めた。俺は中距離の練習に移り、後輩と一緒に100mの10本ダッシュ、体幹トレーニングを含む筋トレの後、春期体育大会(略称、春体)の出場種目の800mと1000mのタイムを計った。タイムはそこそこ。調子はいいと思っていたが、自己ベスト更新には至らなかった。ちょっと悔しい。
「あーあ、そう上手くはいかなかぁ。よし! 気持ちを切り替えて…もう一本、お願いします!」
そう言って俺はまたスタートラインの前に立った。
俺と千夏は部活の時間が終わっても自主練を続けていた。暫くすると下校10分前のチャイムが鳴る。俺は千夏に声をかけて帰ることにした。
「おーい、ちぃ帰ろうぜ。もうすぐ6時だ」
「うーん。あとちょっとだけ」
「やりすぎもよくないって言ったろ。それに、下校時間よりも残っていると怒られるぞ。ほら、今日はもう終わろうぜ」
「分かったわよ。じゃあ支度してくるから校門でね」
「おう。じゃああとでな」
それぞれ陸上部の部室に行って着替える。俺はさっさと着替えを済ませていつもの待ち合わせ場所に向かう。辺りはすっかり真っ暗だ。春だといってもまだ日が落ちるのは早い。街灯の明かりが道路を照らし始めている。ぐぅ~。お腹が鳴った。
ちぃのやつ遅いなぁ。はぁ~、腹減った。今日の晩御飯は何だろ。
そんなことをぼんやり考えていたところ、ちぃが小走りでやってきた。
「お待たせ」
「おう。帰るか。お腹減ったなぁ。ちぃんちの晩飯何か聞いてるか?」
「ううん。聞いてないなぁ。何だろ。アッツーんちはどうなのよ?」
「俺ん家は御馳走だぜ。何が出るかは聞いてないけど」
俺と千夏は並んで歩きだした。俺の家では進級祝いに御馳走が出る。母さんが腕によりをかけて俺の好物を作ってくれるのだ。母さんは調理師で、パートで仕事をしている。しかし、俺が帰って来るまでに仕事を終わらせて、夕食を作って待ってくれているのだ。俺の好物は、豚カツにカレー、ラーメンにピザ、寿司に餃子、和洋中なんでもござれだ。というか嫌いなものがほとんどない。どれが一番好きかと聞かれると非常に困る。その時の気分によるし、なんたって母さんの作る料理はどれも美味いのだ。今日はどんな御馳走が出るか楽しみである。ぐぅ~。再びお腹が鳴った。晩飯のことを考えていると余計お腹が減る。
「アッツー、お腹が鳴ってるわよ」
千夏はそう言って笑う。
「仕方ないだろ。部活頑張ったし、下校時刻ギリギリまでやってたら普通にお腹減るだろ」
俺は言い返した。ぐぅ~。再び腹が鳴った。
「アッツーが限界みたいだし、早く帰りましょう」
千夏が少し早足になった。気を遣ってくれているようだ。俺も早足で追いつく。そのうち競争になって家まで走って帰ったのだった。
千夏の容姿描写を追加しました。