表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺が決める未知  作者: 三木香
4/69

4.日直の仕事

 キンコンカンコン、キンコンカンコン。

 一時間目が終わるチャイムが鳴った。

「はい。今日はここまで。って言っても、全員の委員が決まったんだがな。このクラスは優秀だな。決めるのが早い。いいことだ。じゃあ、日直号令よろしく」

「先生。日直ってだれですか?」

「おお、そうだった。出席番号の早い順、二人ずつでやってもらうことになるから、今日は荒井と猪野だな。よろしく」

「はい。じゃあ、俺が終わりの号令かけるから荒井は始まりの号令かけてくれ。それでいいか?」

「ああ、いいぜ」

「起立。礼。着席」

 ガラガラ。号令を聞いてから田中先生は出ていった。ざわざわ。教室が一気に騒がしくなる。友也後ろを向き、俺と涼の方を見て言った。

「篤志、やってくれたな。俺に面倒臭い仕事押しつけやがって!」

「だって、友也が適任だと思ったんだから仕方ないだろ。他にできそうなやつ知らないし……」

「ったく。そんなことだろうと思ったぜ。しょうがねぇなぁ、お前は」

 ふう。っとため息をついた後、友也は続けた。

「っつうか、いつも思うが、篤志はどっ直球な発言をするよな」

「そうかぁ? そうでもないと思うが……。え、そう思ってるのって、もしかして俺だけ?」

 友也と涼が呆れた顔をしてこっちを見ていた。俺は戸惑った。

 俺って思ったことダダ漏れ? それって不味くない?

 などと俺が内心焦っていると、

「まあ、それが篤志のいいところでもあるけど」

 と涼がフォローしてくれた。しかし、いつの間にか机に本を出して読もうとしている。

「涼、お前いいやつだな」

「そうでもないよ。僕も思ったことは割と言う方だからね」

 と涼は本を読みつつ相槌を打った。

「そう言えば、そうだな。俺って結構言われっぱなしかも……」

 ガラガラ。担任が慌てて戻ってきた。

「おーい、日直の二人。言い忘れていたんだが、配布物があるから職員室まで取りに来てくれ。ちょっと量が多いから手伝えるやつ何人かも頼む」

「はーい。田中先生、配布物って何ですか?」

「教科書や資料集、あとはプリント類かな。進路指導関係もあるぞ」

「うわぁー。けっこうありますね。友也と涼、手伝ってくんない?」

「いいよ」

 と涼は言い、本を置いた。

「しょうがねぇなぁ。まあ、学級委員だし、手伝ってやるよ」

「お、じゃあもう一人の学級委員にも手伝ってもらおうぜ。おーい、愛美も手伝ってくれないか?」

 と俺が遠くの席の愛美に呼びかけた。愛美は出席番号が一番最後なので、廊下側の一番後ろの席だ。その前が千夏で左隣が裕子の席だ。教室の後ろの扉もすぐ近くにある。俺の席とほぼ対極だ。愛美は俺の方に頷くと、千夏と裕子を誘っていた。千夏と裕子も手伝ってくれるらしい。そして、みんなでワイワイ言いながら職員室へと向かった。

「これだけ人数がいれば運べないことはないだろう」

「いのっちは力持ちの方?」

「まあ、男だから裕子よりは力があると思ってるぜ」

「へぇー。じゃあ、私たちより重いもの運んでね」

 裕子に笑顔でお願いされてしまった。俺はしまったという顔になる。

 うわ、やられた。上手く乗せられてしまった。まあ、男だし運べないことはないだろう。しかし、裕子は口が上手いよな。

 俺は内心そんなことを思いつつ、荒井に話を振る。

「まあ、必然的にそうなるわな。男子は頑張って重い荷物運ぶぞ。荒井頼んだ」

「え、俺かよ。まあ、女子にいいとこみせるチャンスだしやってやってもいいぜ」

「荒井、分かってんじゃん。その意気だよ。頑張れ」

「猪野、お前他人事のように言ってるな。お前も運ぶんだぜ」

「えー。俺はそんなに重いもの持ちたくないなぁ」

「何言ってるんだよ。俺ら日直に頼まれた仕事だぜ」

「まあ、そうなんだけどね」

「しっかりしてくれよな」

 荒井と俺のやり取りの横で、涼と千夏が何やら話していた。

「千夏、風紀委員でよかったの?」

 と、涼は聞いた。

「うーん、別にやりたい委員会もなかったし、風紀委員でもよかったかな」

「ふーん」

「ふーんって何よ。なんか言いたそうね」

「別に」

「何よ。言いなさいよ。気になるじゃない」

「いや、篤志と一緒だけどよかったのかなと思って」

「別にいいわよ。だって、アッツーの面倒見れるのって私ぐらいだから、しょうがないじゃない。だけど、これからはいつもより早く行かないといけなくなると思うから、ちょっと大変かも。アッツーなかなか起きないから……」

「そうだね。本当に篤志はなかなか目を覚まさないから」

「そうなのよねぇ。何とかならないのかしら」

「ま、起こすの大変だと思うけど頑張って」

「涼は他人事ね。まあいいけど」

 ガヤガヤ言いながら職員室へと向かう。



 ガラガラ。職員室のドアを開ける。

「失礼します。3年1組です。配布物を取りに来ました」

「おお、日直。こっちへ来て。これ全部な。よろしく。あと、教室に運んだら先に配っといてくれ」

「うわぁ~。先生多くないですか」

「まあ、こんなもんだろ。それにその人数なら運べるだろ」

「まあ、そうですけど。荒井、分担するぞ」

「OK。んじゃ、俺これ持つわ」

「頼んだ。涼はこっちの段ボール持って。で、友也はこっちお願い。後の軽そうなやつは、ちぃたち適当に運んでくれる?」

「あー、はいはい。了解。じゃあ、愛美はこれお願いね。裕子はこれお願い。私はこれ持つわ」

「よし、これで全部だな。んじゃあ、行くか」

「失礼します」

 ガラガラ。ドアを閉めて、職員室を出る。

「けっこう重いなぁ。ちぃ大丈夫か」

「何よ、アッツー。これぐらい平気よ。それよりさっさと行くわよ」

「はいはい」



 教室についてドサドサっと配布物の入った段ボール箱を下ろした。

「ふう、重かった。なあ、荒井。これって配るんだったか。先に配れって言われたっけ?」

「えっと、どうだったっけ?」

「おいおい、お前らそれくらい覚えとけよな。全く。教室に運んだら配れって言われただろ」

「そうだった。さっすが友也。頼りになるなぁ」

「お前のそういうところがストレートなんだよ。篤志」

「うん? そうかぁ? まあ、いいじゃん。じゃあ、荒井配るぞ」

「はいよ」

 そしてクラス全員に配布物を配り終わったのであった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ