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俺が決める未知  作者: 三木香
3/69

3.クラス委員の選定

 ガラガラ。教室に先生が入ってきた。

「はーい。みんな席に着けー。一時間目始めるぞー」

 先生の掛け声でみんな席についた。席は出席番号順になっている。出席番号の早い順に左詰めとなっていた。俺は一番左側の前から2番目で、窓側の席だ。右隣の席は涼だ。前の席は荒井で右斜め前は片山。千夏の席は俺からは遠い。

「今日から3年1組の担任になる田中浩二だ。よろしく。早速だが、出席をとるぞ。荒井亮二」

「はい」

「猪野篤志」

「はい!」

 俺は元気よく返事をした。

「――、山内愛美」

「はい」

「よし、全員出席しているな。では、一時間目は委員会などを決めてもらおうか。新学期が始まったばかりだからな。まずは、学級委員長と副委員長を決めるぞ。委員は男女一名ずつだからな。あと、クラス全員に何らかの委員をやってもらうことになるから、よく考えておくように。では、誰か立候補者はいないか?」

 ……。クラスが静まり返る。この静けさはあまり好きではない。だが、俺は委員長などする柄ではないから、立候補はする気にはならない。

「おーい。誰もいないのか?」

 田中先生の声にクラスがざわつき始めた。

「荒井、お前やれよ」

 誰かが、荒井の名前を挙げた。

「えー。俺はだよ。面倒臭めんどくさいし。そういうお前がやったらどうなんだよ」

「えー。俺は人の上に立つ器じゃないし。無理だな(笑)」

「なんだよそれ(笑)」

 荒井と誰か押し付け合いをしている。俺は小声で涼に相談した。

「涼、お前学級委員長とかしないよな?」

「うん。僕はそう言うクラスをまとめるのとか苦手。篤志の方が向いていると思うよ」

「いやいや。俺もそんな柄じゃねえしな。ちぃとか立候補しないかな?」

「うーん。どうだろ? 千夏は向いてるかもしれないけど、自分から立候補する方ではないよね」

「そうだよなぁ。誰かやってくれないかなぁ」

 そう言ってから、教室内をキョロキョロ見まわした。すると、片山友也かたやまともやと目があった。

 お、友也とかいいんじゃねぇ? あいつ賢いし、人気あるし。確か前も学級委員長してなかったっけ? よし、言ってみるか。

「先生」

 俺はそう言いつつ手を挙げた。

「はい。えーと……」

 先生は出席簿を確認していた。どうやらまだ顔と名前が一致していないらしい。俺は自分から名乗ることにした。

「猪野です」

「おお、猪野どうした? 立候補してくれるのか?」

「いや。俺は向いてないんで、推薦したい人がいるんですけどいいですか?」

「ああ、いいぞ」

「片山友也君がいいと思います」

 俺がそう言いつつ友也を見ると、友也はちっと舌打ちをしていた。友也は少し嫌そうな顔をしながらこっちを睨んできた。友也のやつ、やっぱ面倒臭いって思っているよな。俺は申し訳なさそうな顔をしつつ少し頭を下げた。友也はため息をついていた。

「片山、やってくれるか?」

「……はい。いいですよ」

 友也は渋々という感じで引き受けてくれた。俺はありがとうという気持ちを込めて笑顔を送った。しかし、友也は俺の方は見ていなかった。折角満面の笑みを浮かべたのに、何か損をした気分だ。

「よし。では学級委員長は片山でいいか? 反対の人は挙手するように。いないな。では、学級委員長は片山に決定だ。後は副委員長だが、誰か立候補はいないか? 推薦でもいいぞ」

 クラスのざわめきが強くなった。ひそひそ声での会話が聞こえてくる。

「キャー。片山くんが委員長だって」

「どうする?」

「私、立候補しようかな?」

「えー。私も片山くんとだったらやってもいいかな」

「だよね」

 ヒソヒソ。キャッキャ。……。

 やっぱ、友也はモテモテだな。あいつを推してよかった。これで副委員長も速く決まるだろう。

 俺は何気なく千夏たちの方に目を向けた。何やら相談している様子だ。

「愛美、友也が委員長だって。チャンスじゃん」

 千夏はそう言って、愛美をつついた。

「えー。そうだけど……」

 山内愛美やまうちまなみの態度は煮え切らない。

「そうよ。愛美、距離を縮めるチャンスよ」

 そう千夏を援護したのは竹中裕子たけなかゆうこだ。

「うん。分かってるけど……。自分から立候補したら、変じゃないかな?」

「大丈夫よ」

「そうそう。変じゃないよ」

 千夏と裕子が愛美を励ます。

「でもでも、意識してるとか思われないかな?」

 愛美は不安を拭い切れない様子だ。千夏はちょっと考えてから答えた。

「うーん。どうだろう? 私たちって友也とアッツーと涼といつもつるんでるから大丈夫じゃないかな?」

「だからこそ心配なのよ。友也君に私の気持ちバレないかな?」

 愛美は不安そうな顔をする。

「むしろバレた方がいいんじゃないの? 友也って勉強はできるけど、鈍いし」

 裕子はズバッと言ってのけた。

「えー。このタイミングでバレるのは嫌よ」

「じゃあ、愛美。私が愛美を推薦しようか?」

「いいの? 千夏ちゃんありがとー」

「いいわよ。じゃあ、先生に言うわね」

「うん。お願い」

「先生。山内愛美さんがいいと思います。山内さんを推薦します」

「はい。ありがと。他に立候補者はいないか?」

 ヒソヒソ。

「山内さんが立候補したよ」

「私も片山くんとやってみたかったけど、山内さんがやるなら太刀打ちできないわ」

「そうよね。私も諦めるわ」

「山内さんに任せましょう」

「そうね」

 コショコショ。小声での話がかすかに聞き取れた。どうやら、山内愛美に決まりそうだ。

「他には誰も居ないな。山内がやることに反対のやつはいるか? よし、居ないようだな。では、山内に決定だ。これから、片山と二人で頼むぞ。じゃあ、今からは委員長の二人に時間を譲るから残りの委員を決めてくれ。片山と山内は前に出て」

「はい。愛美よろしくな」

「うん。よろしく、友也君。私は板書するね」

「分かった。司会進行は俺がやるよ」

「うん。お願い」

「えー、片山です。学級委員長になりました。これからよろしく。じゃあ、委員を決めます。図書委員、美化委員、体育委員、文化委員、風紀委員、保健委員、放送委員、給食委員、新聞委員、飼育委員、福祉委員、園芸委員、連絡委員、これらを決めます。まずは立候補者からお願いします。空いている委員があったら、後で推薦も受け付けます。取り敢えずは立候補者からで。じゃあ、やりたい委員がある人は挙手してください」

「はーい。俺、風紀委員やりたいです」

「猪野篤志、風紀委員。はい、他にやりたい委員のある人はいますか?」

 愛美は委員会名の下に立候補者名を板書していった。

「篤志には風紀委員とか無理じゃねー? いつも遅刻ギリギリだし(笑)」

「確かにー」

 教室に笑いが起こった。

「えー。酷くない? 俺ってそんな扱い?」

「そうだよ(笑)いのっちは遅刻ギリギリ記録の最高記録保持者だよ(笑)」

「なんだよ、その記録。誰が計ってるんだよ?」

「あ、私(笑)」

 竹中裕子が言った。

「なんだよ、裕子。そんな記録いつからつけてるんだよ?」

「うーん、中一からかな」

「え、マジかよ! そんな前からかよ」

 またドッと笑いが起こった。

「いのっちより千夏の方が風紀委員向いてると思うなぁ。私は」

「え、私?」

「うん。千夏やりなよ。風紀委員。それに、いのっちを起こせるのって千夏しかいないでしょ?」

「確かにー」

 クラスに納得というような雰囲気が流れた。そして、千夏に視線が注がれた。裕子の後押しとクラスの期待により、千夏は風紀委員に立候補した。

「じゃあ私、風紀委員やります」

 おー。というどよめきと拍手が起こる。クラスメイトは納得しているようだ。

「じゃあ風紀委員はこの二人で決定ということでいいみたいだな」

 友也がそう言うと、愛美は風紀委員の下に書かれた二人の名前に丸を付けた。

「風紀委員以外でやりたい委員がある人はいますか?」

「はい。私、新聞委員やってみたいです」

「竹中裕子、新聞委員。他―」

「はい。僕、図書委員やります」

「北原涼、図書委員。他に―」

 ……。こんな感じでドンドン委員会の役員が決まっていった。ほとんどの生徒が自分が希望した委員になれたようだ。俺たちは全員希望した委員になることができた。



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