第一章4 エアーターミナル
どっ、と汗が出た。
「………………っはあっはあっ! 何だ、いきなり。想像はしていたけれど、あんな一斉にやってくるとは思いもしなかったぞ!!」
「そりゃあ、誰も彼も『鉱物姫』を狙っておるのじゃ。そのようなことになるのは間違いなかろう。それはご主人様も分かっていた話だと思っていたが?」
「それとこれは話が別だろ! あーもう! 金で解決出来る物事ならもっと真面目に生活しているっつーの! それぐらい理解しろ常考!」
「いや、常識的にあちらのほうが正しい選択のようにも思えますけれど……」
そんなことはどうだって良い。
それよりも鉱物姫の情報が欲しかった。
「そんなことよりも、だ! レーダーは未だ機能しているんだろうな!?」
「鉱物姫が出している微弱な電波、それをとることが出来れば苦労しないですにゃー。大方、コンツェルンのことじゃから、電波を遮断するルームでも作ってそこに閉じ込めているんじゃにゃーか?」
「面倒臭い構造しやがって! ということはどうにかして馬掛コンツェルンに侵入するしかない、ってことだな!」
「侵入ってどうやって? それに、鉱物姫全てをこの信楽市に集めているという根拠は?」
「根拠は単純明快。神がこの市にやってきたからだ。そしてそれを信用している。多くの人間はそんなこと気づかなかっただろうがな。二つ目は、この市に隕石が落下したクレーターがある。そこに不思議な石碑があってね。それは普段なら気づかないはずだが、きっとあれが鍵を握っている」
「根拠は?」
「偶然だ! 神がこの市を指定したのも、クレーターがあるのも! きっと偶然の産物! でも、それがほんとうかどうかははっきりとしない。けれど、間違いなく事実! そこに行けば、鉱物姫は反応を示すはずだ」
「それがどうなるやら。正直、ご主人様は無鉄砲が過ぎる。そのうち、死にかねないぞ」
「死ぬなんて出来る訳が無いさ。鉱物姫で夢を叶えるまではね」
「そう言っておいて、どこまでうまくいくかのう……」
そうして、英二の車は海岸線沿いの道を走っていく。
目的地は、馬掛コンツェルンの拠点があるエアーターミナルである。
◇◇◇
エアーターミナルは人工島に置かれている。人工島には空港だけではなく、オフィス棟も置かれており、その一角を支配するのが馬掛コンツェルンだった。
「ここか?」
駐車場に車を止め、スマートフォンを眺める英二。
誰かと電話をしているだとか、そういうわけではない。スマートフォンの内部に入っているアマテラスと会話をしているだけに過ぎないのだ。
「うむ。ここで間違いなかろう。少なくとも、馬掛コンツェルンはな。鉱物姫が実際にいるかどうかは明らかでは無いがな」
「怪しい荷物をわざわざ社外に持ち出すことはない。となれば、社内に置いておくのが一番だろう。……だが、問題はどうやって中に入るか、だが……」