壱 山道捨子《マウンテン・ストリートチルドレン》
今の少年と青年の関係はここから気づかれたんだ。
親がそういったとき子供は聞いた。
それからそれから?
親は笑って答えた。
彼らは有名な切り裂きジャックになって、世界を守ったんだ。
壱 山道捨子
木枯らしが、その日は山を吹いていた。
そろそろ山も暗くなってきた午後五時半。
小学生の亮介は、その山道を一人、急いで上っていた。
木枯らしの音に混ざって、何かの声が聞こえた。
声といえるかもわからない、たぶん声ならすすり泣くといったような感じだ。
亮介の背筋は凍った。
この山にはあれが出ると噂されていたからだ。
白いはかまを着た、青白い顔で・・・・。
じいやからはそれが出てくるから早く帰ってこいといわれている。それは子供を・・・小学生をさらうといってた。亮介はばっちりその条件に当てはまっている。
亮介は気のせいか、木枯らしが声を出しているように聞こえた。
「オイデェィ・・オイデェィ・・・。」
そのうえ、山はやまびこを発しその声を何十のにもだぶらせて、帰してくれた。丁寧に。
亮介は震えた。
走って山道を降りようとしたそのときだった。
かささぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・。
風が吹き、草が道を出した。その道には、三、四歳の子供が、うつむき、座っていた。その子供の衣服は所々破けて、肌が出されていた。しかもつぎはぎだらけの服装。
その子から声が発せられていたと、冷静な判断が出来なくなっていた良助は涙目になった。
亮介は疾風のごとく、山道を下った。
草が出した少年は、誰かいたのかと涙で赤くなった目で、音がしたほうを見たが、風が吹き終わり、道は見えなくなった。
亮介は、屋敷でじいやに言ってみた。
じいやは笑って付いてきてくれた。
山には、誰もいないということはなく、少年が、つぎはぎだらけのぼろぼろの破れた服で、泣いていた。
亮介は、じいやに頼んで屋敷につれて帰ってもらった。
その道中、一度も少年は、口を開かなかった。
ずっと、空気を見つめていた。
「ねえ名前はなんていうの。」
亮介は亮介の同じぐらいのときに来ていた服を着たシャンプーのにおいがする少年に聞いた。
「・・・・・・・・・・・・・。」
少年は、空を見つめ、静かに口を開いた。
けれどその口から言葉は発せられなかった。
その頃の竜太といえば、テストの結果を見て親が頭を抱えているのだった。
空を見つめた少年は、いつまでも空を見つめていた。
それを見ていた少年もまた、同じく空を見上げた。
少年には、少年が空を見ているように思えたから・・・・。