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汝は何を買い求めるか

『切れのある深い味わいNEWブレンドコーヒーアダマンタイト!新発売っ!!!!!』

『ミルクのこくUP!! さらに加わるマジカルなカロリーオフの味!カロリアーヌ』

そのCMを見たのは今朝だった。

今朝、ソファーでテレビを眺めていたときだった。新製品と聞けば食いつく八迫にとってそれは聞き捨てならないCMだった。それを見た瞬間、一日中家にいるつもりだった思考が一瞬にして切り替えられる。

これを買いに行くという思考に。




そして至る現在、八迫は悩んでいた。

目前にある缶コーヒー、アダマントイトとカフェオーレのカロリアーヌ。どちらも今朝宣伝されていた、そして八迫が気になっている二つの飲み物だ。

どちらもほしい。だが今現在持ってきている財布に入っている硬貨は三桁の一番小さい額、一枚のみだ。

先刻本屋にぶらりと立ち寄り馬鹿の様に大人買いして待ったつけが回ってくる。それを理解すると今自分の両手に下がっている重りが鬱陶しく見えてきてしまってどうしようもない。さらにそれを理解したことによって手がしびれてきてしまった。

目の前にあるのは自らが求めていた二つの飲料。

どーする、どーするよ!俺!状態なのだ。


ふと八迫の目の端に軍隊のように押し寄せてくる主婦の集団を見つけてしまった。何と八迫はすでにここで二時間半ほど立ちすくんでいたのだった。そして、今の時間はちょうど主婦達の狙いの時間らしく、新製品好きの主婦の手によって一本、一本と減っていく。


八迫には解っていた。

このままでは・・・このまま悩み続けていてもどちらも買うことができなくなってしまうということに。

必ず自分には一本も手に入ることがないだろうということも。


八迫はついに決心した。そして一本のカフェオーレ、カロリアーヌに手を伸ばした。

ーあぁ、これで一本、俺の手に入る・・・ー

そう思いながら、手を伸ばした八迫の手が空をつかむ。

それどころか、箱自体の存在が消失していた。主婦の一人が、箱買いをしたらしい。

しかたない。と空をつかんだ手を反対の缶コーヒー、アダマンタイトに手を伸ばす。

伸ばそうとしたのだが背後から鋭い殺気がその空間を支配した。そしてその殺気で一瞬油断したことが命取りとなった。

八迫の背後から殺気を放ち時間を支配した主婦がアダマンタイを買い占めて消えていった。



こうして新商品と八迫の戦いは白く固まった石膏像のような物体を作り、終わった・・・。


そして、動けるようになった八迫の前に残されているのはアダマンタイトと、カロリアーヌの値札。そしてかさ上げのための空箱。


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