絶叫回避!!!!
各自自由な休暇を提出した切り裂きジャック御一行の休日報告!!!!
彼は今、自らの生命の終わりが今ではないか?と実感していた。
実際にこれまでの少ない人生で体験していた出来事が浮かんでは消えて、浮かんでは消えていくからだ。
その理由は彼の目前にあった。
巨大な機械。それは一周してもとの場所に戻ってくる。ゆっくりと回転して、元の場所へと戻ってくる。
それは彼が今いるここには必ずと言っていいほどの確率であるものだった。
そして彼の周りには子連れの家族や、出来たてだかなんだかのカップル。誰一人としてその場に一人でいるものはいなかった。かくゆう彼も一人ではなかった。
「ねぇー!亮祐!!次、次アレのるっ」
彼、亮祐は目線を下げ、下を向く。そこにいるのは自分の家族。一文字紋太だった。
今、中片亮祐と一文字紋太は人生初の遊園地に来ていた。
すでに、お化け屋敷やメリーゴーランドなどのマイナーな乗り物は全て乗った。
そして日も暮れ終わりが近づき最後となった乗り物、観覧車の前で亮祐は先ほどから立ちすくんでいた。
ヤバイやバイヤバイヤバイヤバイヤバイイイイ!!!
亮祐の脳内サイレンが鳴り響く。
と言うか響き渡りまくっている。
高いの無理高いの無理高いの無理高いの無理ぃぃ・・・。
亮祐はそんなことで脳の大半を埋め尽くしつつことの発端を思い出していた。
アレは数日前の昼ごろのことだった。
突然理緒が叫びながら駆け込んできたのだった。
「当たった当たった当たったのよぉぉぉ!!!マジで」
その台詞に食いついたのが厄介ごと大好きのサディスティックフレンド八迫だった。
「あにが??」
そう聞いたのをとめていればよかったのかもしれない。けれどすでに時は遅く、それが遊園地のチケットであること、それがペアご招待券であることが判明し、さらに誰が行くかとの発展でとどめとなったのが紋太の一言、
「遊園地って何?」
だった。
紋太にしてみれば、ただの知らない単語を聞き、それを知りたいと言う好奇心から来た言葉だろうが、それを聞いてしまったほかの皆様からの視線は痛かった。
「お前今まで一度も連れて行ってやらなかったのかよ」
「金持ちの癖にそんな程度の娯楽すら味わったことないの?」
それを必死に連れて行きませんでしたと訴えたのも、過去のことであり、それを聞いた理緒が哀れみの眼差しで亮祐にチケットを渡し、
「ここに・・・います・・・」
思わずつぶやいてしまう。
きっと八迫は自分が高所恐怖症であることを知ってでの発言だろうし、これは嫌がらせに他ならない!!
単に紋太を遊園地に連れて行かなかったのではない。
連れて行けなかったのだ。連れて行ってやりたい気持ちはあったが、子供は観覧車が、好きという統計アンケート【2009年版】を見てしまってからは到底言い出せなくなってしまっていて・・・。
「ねぇ、行かないの?」
紋太のまちきれずわくわくの目でそう尋ねられると帰ろうとはとてもいえずに、亮祐はついに観覧車の列に並んでしまった。
これは、どんな敵よりも今迄で一番手ごわい・・・。
亮祐は自分の恐怖心と戦いながらそう思った。
次回 少女と少年【仮】