二度目の王狼と女帝リン
決闘が終わり歓声が聞こえる中ジェスタの方へと歩みよる、ジェスタもそれに気づくとこちらへ向かって来る。
「完敗だ。盾の扱いには結構自信があったんだがな…まさか1つも弾きが決まらない所か、まともにダメージを食らわせたのが衝撃だけとは…。いずれにせよ勝てはしなかっただろうがな。」
「いや、作戦が上手くハマったおかげだよ。あのまま斬りかかっているだけだったらいずれ打開されてただろうしな。」
ジェスタは、笑いながら謙遜はよしてくれと言うと、「まあそれはともかく迷惑をかけてすまなかった。お礼と言えばいいのか、お詫びと言えばいのかわからんが、今度いっぱい奢らせてくれ」と言ってきたので、未成年だから酒は飲めないが構わないと伝えると、フレンド登録をして、お互いに別々のほうへと向かった。俺はもちろん、ユズの方へだ。
ユズの方へと向かうと、そこには気付きこそしなかったが、決闘を見ていたのだろう、<残念勇者>ことユウと、<獣王>レグルがいた。
開口一番ユウが
「カグヤはやっぱすげぇな。観てた女のプレイヤーがホの字になってたぜ。」と言うとユズに足をぐりぐりと踏まれ引きつった笑いを見せた。
ユズはというと、いつも通りの賞賛の嵐だ。
少し気まずそうにしながらもレグルが「いやーたまげたぜ!想像以上だ!まじでウチのクランにこねーか?」と言ってきたが、まあそのうちクランに入ろうかと思った時には考えるよ。と返しておいた。そのあといくつか雑談をしていると日が暮れてきた。
俺とユズはグラムとの約束があるので、そろそろ行くと告げ、ユウにレグルと別れてグラムの店へと向かう。
グラムの店へと着くと。どうやら丁度店を閉めたところだったらしく、丁度よかったと迎えてくれた。
グラムの武器とプレイスタイルを聞き西の森へ向かう。どうやらグラムは豪快な見た目通りハンマー...ではなく基本は片手剣でサブ的な役割で投合術と付与魔法を使うらしい。
曰く、投合術は在庫処理。付与魔法はライトノベルでよくある、作成した武器に特殊な効果を…的な流れを期待してとったらしい。今の所それに至ったプレイヤーは居ないらしいが…。
まあそれについては置いておくが投合術も付与魔法もグラムとの相性はいいらしい。
グラムは生産がメインのプレイヤーの為最低限以外のステータスポイントはDEXとLUKに振っているらしい。
投合術はDEXによって、命中率の判定があるし、付与魔法は低めのステータスの底上げとして重宝しているそうだ。
もっとも生産がメインということもありレベルは8だったのだが...。
とはいえ、俺とユズがいるためあまり心配もいらないだろうということで、せっかくなのでしばらくグラムのパワーレベリングをしてボスに挑むことにした。その結果ボスフィールドの前に着いた時には、グラムが16Lv俺が20Lvユズが19Lvとなっていた。
さてボス戦へ!!と行きたいところだが何組か先来ていた為、順番待ちをする。何人かのプレイヤーが話しかけてきたり、忌々しそうな目でみたり、してきていたが、そんなことよりも先に並んでいるプレイヤーに目がいった。
魔族であろうか?頭から二本の羊のような角を生やした。女性プレイヤーだ。スタイルのいい華奢な体には似合わない大剣を背中にかけており、恐らくは有名なプレイヤーなのだろう。
周りのプレイヤーが俺やユズに向ける視線と同様のものと、ヒソヒソと話すすがたが見える。
するとその女性プレイヤーはこちらを向き、今俺たちへ話しかけていたプレイヤーが離れるのをみると、前後のプレイヤーに(おそらく列を少し離れるといった事だろう。)言葉を交わすと、こちらへ向かってきた。
「やっほーユズ。久しぶりだねー‼︎
そちらは噂の旦那様かなー??」と
話しかけてきた。
ユズは顔を赤くして「いやっ!その旦那様なんて…恐れ多い...」と最初こそ勢いがよかったが後半に行くにつれて尻すぼみに声が小さくなり俯いている。女性プレイヤーはそれを「愛いやつめ」と笑いながら茶化すようにいうとこちらへ挨拶をしてきた。
「はじめまして真祖君!私は見ての通り魔族でリンって言うの!噂は聞いてるよーって決闘も隠れて観てたんだけどねー」
「そうだったのか、俺はカグヤだ。
よろしくな。ユズとは知り合いなのか?」
「そうかそうか!カグヤ君は正式版からの参加だったね!そうだなー知り合いというか、βテストの時のイベントで一度一緒に戦って、それからお互いに固定パーティ組んでいるわけじゃないからたーまに狩にーって感じかな!」
とリンと話しているとやはり周りから視線を感じる、グラムの方もリンを知っているのか、なんとも言えない表情をしている。そこで俺は気になっていたことを聞いてみる。
「へぇーそうだったのか。所でリンは有名なプレイヤーだったりするのか?
」
「んーそうだなー。二つ名は一応あるわよっ!あまり好きではないけど<女帝>ってやつをね!」
やはりだ。話しているうちに、薄っすらと掲示板に書いていたことを、思い出していた…そうβテスターの中で戦闘において四強の1人言われていたプレイヤー…魔族…大剣使い…そう目の前にいるリンがその魔族であり<女帝>だったのだ。
「ねぇよかったら私も第二の街まで一緒に行ってもいい?」
予想以上のビックネームに驚いているとリンがそう提案してきた。
「俺は構わないが、いいのか?それにリンであればソロ討伐が可能だろうし、ソロ討伐の報酬もあるだろ?」
「別にパーティー組みたくない訳じゃないのよ!ユズはもちろんカグヤ君もわかるだろうけど、勧誘が多くてねーだからなんとなく気に入った人としかパーティは組まない様にしてるんだー。それにそれは問題ないよっ!一度討伐してるからね!ただ大剣を作るにはもう一本王狼の大牙がいるからこうしてまた討伐に来たってわけ!」
お揃いだねーと首にかけた首飾りを見せな言ってくる。そう、キングウルフのソロ討伐で得られる王狼の首飾りだ。
「そうだったのか。ならよろしく頼むよ」
ユズとグラムに確認をとると問題ないとの事だったのでそういうと、フレンド登録を行いリンにパーティ申請を行う。しばらく話していると俺たちの番がやってきた。
二度目のボス戦。最初と同じ様にボスフィールドを覆っていた霧が晴れると
キングウルフとリーダーウルフ三体が出迎える。一応鑑定を使い、モンスターの情報を確認する。
《キングウルフLv23》
《リーダーウルフLv19》
《リーダーウルフLv19》
《リーダーウルフLv18》
どうやら、一定範囲内で毎回多少レベルが違うようだ。
(グルゥァアァア!!)
前回と同様キングウルフの咆哮から戦闘が始まる。ユズとグラムは咆哮により硬直状態になるが、俺とリンには王狼の首飾りがあるため威圧は効かない、まずは素早く俺とリンでリーダーウルフを1匹ずつ狩る。残り1匹がリンの方への向かうがリンの元へたどり着く前に俺が斬り捨てる。
そこでリンが「決闘の時よりも早いねー」と言ってきたので「夜だからな」と答える。そこでキングウルフが前足でリンへ襲いかかるがリンは簡単に避けると、「邪魔しないでくれるかな?」と大剣を振るう。後はもう一方的だった。グラムが俺たちに攻撃力upのエンチャントをかけ、リンが大剣を、俺は刀を振るう。ユズは火魔法
で攻撃する。
戦闘が終わると、レベルが1つ上がり21になっていた。
名前…カグヤ
種族…吸血鬼族(真祖)
Lv…21
HP…1150→1300
MP…1200(150)→1350(200)
STR…45
VIT…20
AGI...45
DEX...20
INT...45
MIN...20
LUK…20
ステータスポイント15→0
メイン
【刀術Lv31】【格闘Lv28】【回避Lv36】【危機察知Lv35】【気配察知Lv35】【MP増加Lv20(200)】【闇魔法Lv18】【雷魔法Lv17】【詠唱短縮Lv21】【アクロバットLv9】
スキルポイント10
称号
【称号の解禁者】
【孤軍奮闘】
ステータスポイントを振り、パーティメンバーと少し雑談をしながら考える。
リンについてだ。トッププレイヤーの中でも最強に近いであろうリン。
正直、ここまでとは思わなかった。
MVP報酬こそ俺が頂いたが、先程の戦闘を見た限り強いというのがよくわかった。だが間違いなくあれが全力ではないだろう。だがそれでもだ...底が見えないのだ。もちろん俺の考えすぎかもしれないが。
二つ名と言うのは基本的には戦闘力が高いプレイヤー、または名物プレイヤーにつけられる。
俺が知っているプレイヤーでは、ユウ、ユズ、レグル、リンが当てはまるが、ユウに関しては不明。レグルは恐らくは戦闘力。ユズは今の所は半々といったところか…ユズに関してもまだ全力を見たことがなく、底が見えないのだ。そしてリンに関しては間違いなく戦闘力だ。
いずれPvPのイベントが開催されることもあるだろう。俺は最強になりたいわけでは無いが、それでもトッププレイヤーやその中でも最強クラスとされる四強の連中と対等に闘えるようにはなりたい。種族に関してはケチのつけようが無いほどいいものなのだ。これから先、他のトッププレイヤーと肩を並べ闘うには、今よりもっとレベルにしろ、PSにしろ鍛えていかなければならいな。
あとはパーティーか…
今回のボス戦で感じたが、やはり効率が段違いだった。まぁメンバーがメンバーだっただけにそのおかげもあるだろうが。そこでメリットとデメリットを考えてみる。
メリットとしては、狩りの効率アップ、狩りの安定、といったところか。
デメリットに関しては特にはないが、夜の狩りか...夜は真祖の特性であるステータスが2倍がある為、ある程度の戦力が無ければ、足手まといになるであろう。
結局の所、ある程度の実力と信頼、信用ができる相手であれば、確実にパーティーを組んだほうがいいだろう。
ユウに関しては、クランに所属している為、無理だろう。
ユズは友達とパーティーを組むことや、βテスト時にはリンとパーティーを組む事もあったようだが、今の所は俺に付き合ってくれているので、少しは期待してもいいだろう。
結論だが、圧倒的に知り合いが少ない為、徐々に信用できるヤツを勧誘していくことにした。信用できるヤツをという理由だが、よくあるパーティーでの揉め事で、ドッロプアイテムの分配などがある。それに、このゲームでは実際に自分の意思で体を動かすし、喋る時も自分の口で、目の前の相手とコミュニケーションをとる。そのことから、パーティーはメンバーは信用ができ、実力があるものをと考えた。
どっちにしてもユズの承諾も貰っていなければ、知り合いも少ないので考えていても何もできないのが現状だが。
雑談を終えると、俺たちは第二の街へと到着した。MVP報酬である王狼の大牙はリンに渡した。俺には必要が無く、リンが集めているものだったからだ。リンは「ありがとう!今度お礼をしにいくからねっ!」と言うと、今日はもうログアウトするらしく、宿へと向かっていった。
グラムに関しても一度転移門ではじまりの街へ戻り依頼されている武器を作るそうで、「ありがとう!助かった!またなにかあれば連絡してくれ」と言って広場へと向かっていった。
俺とユズはというと、宿を取り、その後食事をしながら俺が先程考えていたパーティーについて話した。
結果から言おう。即答で承諾してくれた。友達はいいのか?と聞いた所、友達は料理がしたいらしく、<料理研究会>という、クランに加入する予定のようだ。第二陣以降、友達が参加する予定はあるらしいが、それはそれで時間を作ればいいとのことだった。
その他にも色々と話していると時刻は10時になっていた。
その後は1日のログイン制限時間まであまり時間がなかったこともあり、第二の街をいろいろと歩き回った後、宿へ戻りログアウトした。
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ヘッドギアを脱ぎ、型のついた髪を手で搔き上げる。ゲーム開始初日、ゲーム内で2日という時間を過ごした訳だが、多少の疲れはあるものの、早く明日になりログインするのが待ち遠しい
。時刻は午後9時前。俺は洗濯や風呂をすませるとその日は眠りについた。