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281話 重なる告白

「……困ったなぁ」


 俺は馬車から見える街並みを眺めながら1人呟く。溜息の理由は今朝起きた事について。確かにティリシアの裸を見た責任は取るつもりだが、それがまさか娶って欲しいなんて誰も思わないだろう。例えそれが目の前に座るロナの入れ知恵だとしても。


「どうされましたか?」


 その悩みの元凶であるロナが微笑みながらこてんと首を傾ける。可愛いのだが、今は素直にそう思えない。


「朝の事だよ」


「ふふっ、久し振りにレディウス様の困っている顔を見る事が出来ました。でも、レディウス様を困らせたいからああ言ったのでは無いのですよ。ティリシア様は気がついていない様でしたが、同じ気持ちである私には、レディウス様の事を好いているのはわかりました。だから、少しお手伝いをさせて頂いただけです」


 そう言ってニッコリと微笑むロナ。俺は額に手を置き馬車の天井を仰ぐしか無かった。……だが、ここまで言われて嫌だと言えるわけもなく、それどころか、黒髪の俺を好いてくれる2人に嬉しく思ってしまう。


 俺がヴィクトリアたちを説得すれば良いだけだ。怒られるかもしれないが、ティリシアを知っているみんななら許してくれるだろう。そんな淡い期待をしながら、オスティーン伯爵家へと向かう馬車から覗く景色を楽しむのだった。


 ◇◇◇


 ……そして、俺は今頭を抱えていた。俺の隣に座るロナも驚きの表情を浮かべている。向かいには俺に向かって頭を下げてくるオスティーン伯爵が座っており、隣には同じように頭を下げてくる夫人と、困った表情を浮かべるドレス姿のアレスが伯爵を挟むように座っていた。


「……ええっと、取り敢えず頭を上げては貰えないでしょうか。色々と確認したい事がありますので」


 俺の困った雰囲気が伝わったのだろう、オスティーン伯爵も夫人も頭を上げてくれた。しかし、2人も俺に負けず劣らず困った顔を浮かべている。


 知り合いであるオスティーン伯爵の頼みなら大抵の事は協力したいと思っているし、頼まれなくても首を突っ込んでいるかもしれない。


 ……しかし、さすがに今回のことに関しては余りにも突然過ぎるし、俺の一存では決められない事だった。俺もロナも驚いた内容は


「それでどうしていきなりその……アレスと結婚して欲しいなんて話になったのですか?」


 と言う事だった。来て早々そんな事を言われるなんて思っていなかった俺は、ただただ驚いてしまった。俺が再度尋ねたせいで、アレスの顔が赤く染まっているが、そこは少し我慢して欲しい。


 ただ、オスティーン伯爵も急に思い付きで言ったわけでは無いのだろう。何か理由があるはずだ。俺は真っ直ぐとオスティーン伯爵の目を見ながら尋ねる。オスティーン伯爵も俺の目を見て、ふぅと息を吐いた。


「そうだな。いきなり言われてもアルノード伯爵も困ってしまうな。すまなかった」


 そう誤ったオスティーン伯爵は、ぽつりぽつりとこうなった理由はを話し始めた。


 始まりは、この前俺と向かった戦争の後からだった。元々男爵だったオスティーン伯爵は、早期に前線に向かい、援軍が来るまでの間、耐え抜いた優秀な将として、子爵位を飛ばして、陛下から伯爵位を賜った。


 領地は貰えず名誉のみではあるが、オスティーン伯爵はそれだけでも十分だった。


 元々軍の中では有名だったオスティーン伯爵。色々な人がオスティーン伯爵から学びたいと思っていたようだが、そこで邪魔をするのが爵位だった。


 俺みたいな成り上がりなら全く気にはしないが、生まれた時から貴族の人たちの中には、下の爵位の者に教えを請うのは、家名を傷付けると考える人も中にはいるようで。


 だが、伯爵位を賜ると掌を返したように、皆がオスティーン伯爵に近寄って来たらしい。その中に、エシュフォード伯爵という武門の家系もいたらしく、どうやらその人が今回の話の原因だとか。


 結論から言うと、そのエシュフォード伯爵にアレスが見初められて結婚を迫られたらしい。良い話なのだが、オスティーン伯爵はその話を断ったそうだ。


 理由は色々とあるが、1番は悪い噂が絶えないからだと言う。エシュフォード伯爵は伝統ある家系らしく、その伝統に比例するように色々と闇があるようで、中には盗賊とも手を組んでいるとか、違法な薬を使っているとか、色々とある。


 あくまでも噂程度なので、表立って言う人はいないが、火のないところに煙がたたないのと一緒で、何かしら噂になる種があったのだろう。ただ、国が調べても証拠が出なかったため、上手く隠しているのかもしれない。


「……アレスが結婚を断った話はわかりましたが、どうしてそこで俺との結婚という話になるのでしょうか?」


「……今までは私が馬鹿なせいでアレスには男の格好をさせて過ごさせていたため、そういう話は無かったし、元の姿に変えた後も、男爵であった時は軽く話す程度で済んだ。

 だが、伯爵になってからは毎日のように縁談の話がやって来た。そして、中でもエシュフォード伯爵がしつこく迫ってくるのだ。最近では脅すようにな。なぜそこまでアレスを欲するのかはわからぬが、何かあるのはわかる。

 そんな奴にアレスを送るぐらいなら、断って敵対した方がマシだと考えたのだ。エシュフォード伯爵は王国内でもそこそこの寄親だ。そして、リストニック侯爵の派閥だ。断った後は色々とやってくるだろう。その前にアレスが好きな相手に送りたかったのだ」


「お、お父様っ!!」


 重要な話をしながらぶっ込んでくるオスティーン伯爵。アレスは伯爵の言葉に首筋まで真っ赤に染まっていた。


 ……色々と話を聞いたが、どうしたものか。

1日遅れましたが「黒髪の王」2巻が3月10日発売が決定しました!

今回は戦争に学園とあり、新ヒロインであるヴィクトリアも出て来ます!

良かったらお手に取って下さい!!

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[良い点] こんにちは。やまさんの作品どれもいつも楽しみに読ませてもらっています。 ただ、もう少し更新のペースをあげてもらえるともっと嬉しいです。 続きが読みたくて毎日ブクマ更新するのですが、なか…
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