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268話 褒美

少し遅れてすみません。

「久し振りに帰って来たなぁ」


「そうですね、レディウス様」


 馬車の窓から見える、1ヶ月ぶりくらいの王都の景色に、俺は思わず呟いてしまう。それに反応してくれたロナもどこかホッとした様子が見える。


 死竜の討伐にセプテンバーム公爵領地での謎の銀髪の男との戦い。この短期間で何度死ぬかと思ったか。ロナはそれに合わせて、俺の護衛なんかにも気を使わないといけないからな。かなり疲れているだろう。これが後領地に戻るまで続くのだから申し訳ないな。


 王都で少し休んでもいいだろう。ヘレネーたちには物凄く早く会いたいという気持ちは溢れんばかりあるが、それでロナに苦労させるのは違う気がする。ロナも大切な家族だからな。


 それに、ロナはまだ公爵領での事を気にしている。公爵領から1週間近くの道のりだがその間で吹っ切れるかと思って何も言わなかったが、まあ吹っ切れなかったようだ。


 あの日から少しロナとの間に距離感があるというか、ロナが暗いというか。謁見が終わった後落ち着いたらロナと少し話さないとな。


 それから俺もロナも黙ったまま馬車から見える景色を眺める。王都も1月ほどではそう変わらないな。色々と増えた店はあるものの、大きく変わった様子はない。


 王城に着くまでぼーっと眺めていると、ロナがばっと窓際まで行き何かを探していた。その勢いに俺は驚いてしまった。あまり見ない必死さだったからだ。


「ど、どうした、ロナ?」


「あっ、いえ、知り合いの方が見えたのかと思ったのですが人違いでした」


 恐る恐る尋ねると、帰って来たのはそんな言葉だった。笑って首を振るロナだが、明らかに気にしているのはわかる。このまま聞いていいのか、どうしようかと考えていると、王城に着いてしまった。


 少しロナの事が気にはなるが、先に陛下に報告を済ませてしまおう。馬車が王城の中の停め場に着くと外から扉が開かれる。


 それに合わせて俺は馬車を降りる。ロナは付いてくる事が出来ないため馬車で待機になる。


「待っていたよ、アルノード伯爵」


 馬車の事をロナに頼んで降りると、そこにはレイブン将軍が待っていた。その後ろにはケイネス将軍もいた。


「お久しぶりです、レイブン将軍、ケイネス将軍。無事に任務を果たして来ました」


「ああ、トルネス王国からの先触れで伝わっているよ。だけど、陛下は君自身から報告を聞きたいようでね。お待ちだから行こうか」


 そう言い王城の中へと進むレイブン将軍。俺はその後に続く。結構複雑な王城の中をレイブン将軍の後に続いて進む事数分、十字路になっている廊下で、右側の通路から誰かが出て来た。出て来たのはリストニック侯爵だった。後ろには寄子と思われる貴族を連れて。


「おや、リストニック侯爵。そちらも、玉座の間へ?」


「……レイブン将軍。ふん、そうだ。悪いが先に行かせてもらうぞ」


 リストニック侯爵は俺たちを睨んでから先に進む。いやぁ、思ったより嫌われているな。レイブン将軍たちもだが、俺も悪意を持った目で見られた。


 そんなリストニック侯爵たちの後に続いて俺たちも玉座の間に辿り着いた。既に陛下は中にいるようで、特に待たされる事もなく中に入れられた。


 中に入り真ん中辺りまで行ってから片膝をついて頭を下げる。


「面をあげよ。よく戻って来たアルノード伯爵。よくぞ援軍として活躍をしてくれた。トルネス国王からの手紙にもそなたがおらなければ、死竜は倒せなかったと書いてある」


「はっ、私は自身のするべき事をしたまでです」


「うむ、わかっておる。だが、そなたの働きをしっかりと評価してほしいと書いてあったな。レイブン将軍」


「はい。こちらに」


 陛下がレイブン将軍に言うと、レイブン将軍は何かを持って来た。それを陛下に渡す。手渡したのは剣のようだ。


「アルノード伯爵は剣士としても有名だからな。宝物庫にある中で、実戦で使える剣をレイブン将軍に見つけてもらった。銘を魔剣イデア。これをそなたに託そう」


 陛下はそう言って玉座から立ち上がり俺の前まで来てくれた。そして俺に差し出してくれる。陛下から直接何かを貰うことなど普通はあり得ない。周りの貴族たちも騒ついている。その中で俺は堂々と頭を下げながら両手で剣を受け取る。


 レイディアントは勿論、シュバルツよりも重さがあるイデアからは、独特の気配がある。抜いたらよりわかるのだろうけど、これはかなり扱いの難しい剣だろう。早く振りたい。


「その剣を使い今後も国のために働いてほしい」


「はっ、命を賭して」


 陛下は俺に剣を手渡すと満足そうに玉座に戻る。このまま終わりそうな雰囲気なのだが、まだ俺から伝えなければいけない事がある。


「陛下、実はセプテンバーム公爵から手紙を預かっております。そちらを読んでいただけないでしょうか?」


「ふむ、公爵からか。勿論だとも」


 陛下は近くにいる文官に指示を出して、文官は俺の元へと来る。俺は、セプテンバーム公爵から預かった手紙を懐から出して文官へと渡す。これの説明もしないとな。

投稿が遅れてしまったため、発売日が明日になってしまいました!

いよいよ明日から書店に書籍が!!!

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