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261話 レイグの戦い

「……どうして……ここに?」


 私は痛むお腹を押さえながら、何とか体を起こす。その間に私の側へと来ているレイグ。


「俺は公爵の依頼で来てたんだよ。目の前のクソ野郎を捕まえるっていうな。今日来たばかりだが、まさかこんなに早く会えるとは」


 そう言いながら構えるレイグ。私も何か手伝えないかと思ったけど、足とお腹の痛みのせいで上手く体を動かす事が出来ない。


 気が付かなかったけど、足からは血が流れていて、所々内出血して青紫色に腫れていた。無理して技を使った反動だと思う。レイグも私のそんな姿を見て


「邪魔だから下がっていろ」


 と、言う。私は悔しくて涙が出そうだったけど、今は泣いている場合じゃない。悔しいけど今出来るのはレイグの邪魔にならないようにする事。なんとか這って建物の側まで行く。


 その間、顔色を変えずに私達を見ていた男。レイグを前にしても余裕の表情を崩さない。


「はぁ、私は男には興味はないのだが」


「奇遇だな。俺も野郎には興味がねえよ。だが、依頼でお前を捕らえる、無理だったら殺すように言われてんだわ。それに、その髪の色に興味があるしな。悪いが逃がさねえぞ?」


 レイグはそう言いながら構える。レイグの体に魔力が巡らされて、隙のない姿は流石にAランク冒険者だろう。


 だけど、そのレイグを見ても私と対面した時と同じように余裕の表情を崩さない銀髪の男。どうしてここまで余裕でいられるのか、初めはわからなかったけど、今ならわかる。


 理由は男の首だ。左側は私が絶風を使い、首の半ばまで切ったのに、今は既に繋がっているのだ。普通の人間であれば、首を半ばまで切れば死ぬのは当たり前なのに、あの男はそれでも笑みを浮かべながら生きていた。そのとてつもない生命力と回復力があの男の余裕に繋がっているのだろう。


「行くぜ!」


 レイグにその事を伝える前に、レイグは飛び出して男へと向かってしまった。レイグは男へ迫りながら左側側頭部に向かって右足で回し蹴りを放つ。


 男はその蹴りを動く事なく左腕で受け止めた。あのレイグの蹴りを軽々と受け止めるなんて。だけど、レイグは慌てる事なく男の顔に向かって左拳を放つ。


 男は顔を反らせるだけで避けるが、レイグはそのまま反らした顔に向かって左拳を振る。流石に避けられないと思ったのか男は一歩後ろに下がるが、直ぐにレイグが追うように今度は男の腰あたり向かって左足を振り上げる。


 しかも振り上げられた左足には火を纏わせていた。だけど、男はそれを見ても今度は避けようとせずにレイグの蹴りを体で受け止めた。男の腰にレイグの火を纏わせた左足がぶつかった瞬間、ドンッ! と大きな音と共に爆発した。


 爆発のせいで煙に包まれる2人だったけど、出て来たのは何故かレイグの方だった。いや、出て来たと言うよりは、吹き飛ばされたように出て来た。


「ちっ、ダメージくらいながら攻撃してくるってマジかよ」


 レイグは胸元を押さえながらバックステップでバランスを取る。胸元には斜めに傷が入っており、そこから血が流れていた。


「ははは、その程度の攻撃では、直ぐに回復してしまうぞ?」


 そして、煙の中から思っていた通り余裕な表情で飛び出してレイグの方へと向かう男。男の方から向かってくる姿は初めて見る。


 男は距離があるのに腕を振るう。私には何をしたのか見えなかったのだけど、レイグは見えていたようで、回避の行動をとる。


 すると、レイグの避けた場所の先にある壁や地面に傷がつくではないか。まるで風切のような。よく見れば男の爪はかなり鋭く尖っている。その手を振る事で斬撃を飛ばしていたのだろう。


 男はレイグに近づくと首目掛けて右手側の鋭い爪で突きを放つ。レイグはそれを左腕を下から男の右手を払うように振り上げる。


 レイグが男から距離を取ろうとするけど、さっきとは逆に男の方から迫って行き、レイグは攻められる一方になった。


 理由はやっぱり、男の傷をものともしない攻め方のせいだ。レイグがいくら攻撃しようとも、軽い傷なら気にしないようでくらいながらも攻めてくる。傷を負った側から治っていくのだからレイグもかなりやりづらいのだろう。


 レイグは当たり前だけど傷を負っても直ぐには治らない。ポーションは持っているのだろうけど、数には限りがあるだろうし。


「ちっ、しゃらくせえ! 炎天波!!」


 だけど、そんな男の攻撃が面倒になったのか、両足に火を纏ったレイグが地面に手をついて両足で回転蹴りをした。


 男は後ろに下がって避けるけど、レイグは直ぐに地面に足をつける。そして火を爆発させて推進力を出させて、一気に男へと迫った。まるでさっきの私のように。


 だけど、さっきの私と違うのは、速さが腹の立つ事に私より上だと言う事だ。それに、私のような付け焼き刃ではなくて、洗練された技の1つだと言う事。


「おらぁっ!」


 かなりの速度で放たれた右腕の一撃は、男は避け切れることが出来ずに胸元にぶつかる。そして、先ほどの以上の爆発が起こり、吹き飛ばされた男。


 これなら倒したかも? と思ったけど、私たちの思っていた以上に、男は異常だった。何故なら、胸元をさすりながら吹き飛ばされた時にぶつかって壊した壁の向こうから現れたのだから。


「面倒な野郎だ」


 レイグと同じ意見なのが腹立つ。

書籍第1巻発売まで1週間、今日から頑張って毎日更新をしていこうと思いますので、よろしくお願いします!

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