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240話 死竜討伐戦(2)

 死竜が吼えた瞬間、俺たちがいる外壁に途轍もない衝撃が襲った。俺たちは予想のしていなかった衝撃に耐える事が出来ずにその場で膝をつく。


 全員が全員、あまりにも突然の事で戸惑っていると、外側に立っていた兵士が声を上げる。その声につられて俺たちも外壁から外を覗くと、そこには先ほどまでいなかった魔獣がいたのだ。


 外壁のすぐ側に大きな穴を作り出て来た魔獣は、そのまま外壁へと体をぶつける。先ほどの大きな衝撃は魔獣が体をぶつける衝撃だったのだ。


「……どうしてここにロックドラゴンが」


 近くにいた兵士が震える声でその魔獣の名を呼ぶ。本来なら山奥に生息する魔獣のロックドラゴン。俺とも縁のある魔獣だ。


 ……ワイバーンだけだと油断した。まさか、ロックドラゴンまで連れて来ていたとは。俺たちが魔獣の大群に気を引かれている内に地中から近づけていたのか。


 何度も体を打ち付けて外壁を壊そうとするロックドラゴン。今はまだ耐えているが、このまま打ち付けられれば突破されるのは目に見えている。


 それに気が付いた兵士たちが慌てて攻撃しようとするが、奴の外皮に阻まれて攻撃が通らない。


「ロナ、片方のロックドラゴンを頼む。牽制するだけでいい!」


「わかりましたが……レディウス様はどうされるのですか?」


「俺はもう片方を倒す」


 このままやらせる訳にはいかない。俺は近い方のロックドラゴンがいる外壁まで行く。周りで兵士たちが外壁から遠ざけようとするが、効果は薄そうだ。


「お前たちは近づいてくる魔獣たちに矢や魔法を放て!」


 俺の指示を無視して矢や魔法を撃ち続ける兵士たち。この辺はトルネス兵士たちか。そして、兵士の中から隊長のような男が近づいて来た。


「何を意味のわからない指示をしているんだあんたは! 今奴を外壁から遠ざけなければ突破されるだろうが! これだから黒髪は!」


 ……一瞬、こいつらを置いて帰ってやろうかと思ったが、そんな事をすればレグナント殿下やフローゼ様が危険に晒されてしまう。


 俺は無言のまま男を睨みつける。殺気を含めた視線に、男は腰を抜かしてしまった。


「そんな事はわかっている。黙って指示に従え!」


 俺はそのまま下が覗ける場所まで近づく。下では俺たちの攻撃を無視して壁にぶつかるロックドラゴンがいる。


 高さは15メートルってところか。結構高いが、前の戦争で空から落とされるよりは低い。それに比べたらマシだろう。


 俺はレイディアントもシュバルツも鞘に戻して、外壁に立つ。その光景に周りの兵士たちはギョッと顔を浮かべて俺を掴もうとするが、俺はそのまま前に倒れて行く。


 上から軽く悲鳴が聞こえて来たが、俺はそのままロックドラゴン目掛けて落ちて行く。同時に纏・天を発動して、抜剣の構えを取る。


 一撃で仕留めるため狙うのは首だろう。死なずとも致命傷は与える事が出来る筈だ。


「烈炎流奥義……」


 俺はシュバルツの柄を強く握り締め、魔力を流す。ロックドラゴンの首が眼前に迫った瞬間、爆発的に魔力を流し、その勢いで鞘から剣が抜けようとする力を利用しつつ、剣身にも魔力を凝縮して纏わせる。そして、一気に振り抜く!


「絶炎!!!」


 一気に降り抜かれた剣が、ロックドラゴンの首へと衝突する。衝突した瞬間、シュバルツに纏わせる魔力を増やし闇属性の魔力へと変換する。そして、ロックドラゴンの硬い皮膚を消滅させる。


 再び外壁に体を打ちつけようとしたロックドラゴンは、地面へと叩き付けられて、首を半ばまで切り落とされた。


 勢い良く巨体のロックドラゴンが叩き付けられた衝撃が大地を揺るがす。俺はロックドラゴンの背に着地してから、すぐさまもう一体のロックドラゴンへと向かう。


 ロックドラゴンは片割れが倒された事を流石に無視出来なかったのか、向かってくる俺の方へと向きブレスを放って来た。


 俺は纏から魔天装に昇華させ、闇属性の魔力を纏いブレスを消滅させる。まさか真正面から向かってくるとは思っていなかったのだろう、ロックドラゴンは珍しく戸惑いの声を上げる。


 その間に俺は距離を詰める。右腕を限界まで引き絞り、矢を放つように構える。


「旋風流奥義」


 ロックドラゴンの顎下に入り込み引き絞った右腕を突き放つ。ロックドラゴンは俺を硬い顎で押し潰そうと頭を振り下ろして来た。その振り下ろされる顎目掛けて


「死突!!!」


 シュバルツを突き放つ。剣先にはさっきと同じように闇属性の魔力を纏わせている。硬い皮膚を消滅させ、顎から脳目掛けて貫く。


 勢い良く放たれた突きの衝撃は内側は柔らかいのか容易く貫き、ロックドラゴンの頭から貫通し脳漿をぶちまけた。


 力が抜け横倒れになるロックドラゴン。死んだのを確認して俺は魔天装から纏まで魔力を下げる。少し魔力を使い過ぎた。


 しかし、休む暇が無かった。俺はかなりの速さに近づいて来る気配に直ぐに魔天装を纏い直す。そして、魔力を纏わせたシュバルツを下から振り上げた瞬間、腕に途轍もない衝撃が走った。


 何とか耐えようとしたが、耐え切れずに外壁に吹き飛ばされてしまった。吹き飛ばされ外壁に叩き付けられる。魔天装のお陰でダメージは少ないが、それでも痛いものは痛い。


「……高みの見物は終わりかよ」


 俺の目の前には、ドロっと濁った目で睨んでくる死竜が目の前にいたのだった。

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