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閑話 屋敷に戻ると

「……ぐすっ、もうお嫁に行けません」


「いや、もう俺の嫁じゃん」


 普通に返して来るレディウスを睨みます。ううっ、恥ずかし過ぎます。どうしてあんな事をしたのでしょうか。思い出しただけでも顔が熱くなるのがわかります。


「まあ、そんなに恥ずかしがるなよ。俺もヴィクトリアがあんなに積極的で嬉しかったしさ」


 レディウスはそう言いながら私の頭をなでなでしてくれます。むうっ、これはこれで役得で……


「ほんとムッツリは怖いわよね。突然何をするかわからないのだから」


 ニヤニヤとしながらヘレネーはそんな事を言ってきました。だ、誰がムッツリですか!? 私はヘレネーを睨みますが、ヘレネーはどこ吹く風です。


「まあまあ、喧嘩するなよ2人とも……まったく夜はあんなに仲が良いのに」


 レディウスのぼそりと呟いた言葉に私とヘレネーも顔を赤くします。だって、夜の時はレディウスの方が私たちより体力が多いのですもの。2人で協力しないとレディウスが満足しないまま私たちは倒されちゃいますから。


 そんな恥ずかしい事を思い出していると、前から4人組の男たちが近寄って来ます。真っ直ぐ私たちの方へと。あー、これは厄介な予感が


「おいおい、あんなところに無能の黒髪がいるぜ?」


「おおっ、マジだ! 初めて見たぜ!」


「しかも、周りを見ろよ! なんだよ、あの美女!」


「うおっ! こんな美女見た事ねえ!」


 気が付けば私たちは囲まれていました。この人たちはレディウスの事を知らないのでしょうか? もしかして、最近この国に来たのかしら? 周りの人たちはレディウスとヘレネーの強さを知っていますので可哀想な視線で男たちを見ます。


 その視線を私たちに対してと勘違いしたのか、更に笑みを浮かべて近寄って来ました。うっ、ニヤニヤと気持ち悪いです。ヘレネーに至ってはデートを邪魔されて今すぐにでも殴りかかりそうな雰囲気です。


「ほら、黒髪の無能、俺たちが彼女を連れて行くからとっとと消えろ」


「そうだぜ。これから俺たちと楽しい事するんだからよ!」


 男はそう言って私の手を掴もうとしますが、その前にガシッと男の手を掴む手が私の横から伸びて来ます。当然伸びて来た手の主はレディウスです。


 よく見れば薄っすらと手に魔力をまとわせていました。初めは離せ! や、ぶっ殺すぞ! など、叫んでいましたが、レディウスに握られている手が微動だにしないのに、段々と顔を青くさせていきます。


「てめえら、人の妻に手を出すって事はわかってんだろうな?」


 私でもわかるほどの殺気を出すレディウス。うふふっ、私たちのために怒ってくれています! レディウスは握った男の腕を引っ張り襟を掴んで投げ飛ばしてしまいました。


 男たちは咄嗟に武器を構えて来ますが、丁度そこに騒ぎを聞きつけた兵士たちがやって来ました。兵士の皆さんは私たちと武器を構える男たちを見てから、男たちを捕え始めます。


「なっ、なんで俺たちが捕えられるんだよ!? 先に手を出して来たのはあいつらだぞ!?」


 男たちは兵士たちに向かって喚き散らしますが、兵士の皆さんは呆れた顔で男たちを見ます。そして、兵士の1人が私たちの事を話したのでしょう。男たちは顔を真っ青にして私たちを見て来ました。


 まあ、この領地の領主に武器を向けたのです。それ相応の罰は受ける事になるでしょうね。自業自得ですね。


 それから、気を取り直して私たちは街の中を見て回ります。いつの間にか増えた店を見たり、いつも黒色ばかり着ているレディウスの服を探したりと、中々楽しかったです。私自身、このように街の中を歩いて回るという事をあまりしませんでしたし。


 気が付けば日が暮れかける時間帯になり、外で遊んでいた子供たちが笑いながら走って家に帰っています。ふふ、元気で可愛いですね。私もあのような可愛らしい子供が欲しいです。レ、レディウスとの愛の結晶を。


「ほら、ああいうところがムッツリなのよ」


「まあまあ、ああいうヴィクトリアも可愛いじゃないか」


 後ろで変な事言っていますが、レディウスに免じて許してあげます。さて、そろそろ屋敷に戻りましょうか。皆様の用意も出来ているはずです。


 私がヘレネーに目配せすると、ヘレネーも頷きます。再び私たちはレディウスの両隣に並んで腕を組み屋敷へと向かいます。


 屋敷へと戻ると、入り口のところでロナさんとミネルバさんが立って待っていました。ヘレナさんとマリーではないのは珍しいですね。まだ、準備をしているのでしょうか?


「お帰りなさい、レディウス様!」


「お帰りなさい、主人殿」


「おう、ロナ、ミネルバ、ただいま。2人揃って出迎えなんて珍しいな。なんかあったのか?」


 レディウスが首を傾けながら尋ねます。あら、可愛い。そんなレディウスの姿を見たロナとミネルバさんはくすくすと笑いながら門を開けてくれました。


 不思議そうな顔をするレディウスの手を私とヘレネーが手を引いて中へと入ります。いつもならレディウスの執務室へと行くのですが、そのままパーティーなどができる会場へと向かいます。


 いまだに首を傾げているレディウスから私とヘレネーは離れます。そして、会場の扉を開けると


 パン、パン、パン!


 と、大きな音がなります。これはクラッカーというもので、魔力を流すと音がなる魔法陣が反応して音がなるようになるものです。突然の音に驚いたレディウスに向かって


「お誕生日、おめでとうございます!」


 と、会場の中に待機していた皆様が声を揃えてレディウスを祝います。そう、今日はレディウスの誕生日でした。確か今日で17歳だったはずです。


「……ああ、そっか。今日は俺の誕生日だったか」


 やっぱり、レディウスも忘れていたようですね。ここのところずっと忙しかったですものね。本当なら周りの貴族たちにも手紙を送ってパーティーを開いたりするのですが、この前は結婚式もあったので、今年は見送ったのです。


 その代わり、身内だけで祝おうと思ったのですが、皆さんが予想していたとおりすっかりと忘れていましたね。


 それからはレディウスに挨拶をしてもらい、本日は無礼講という事で屋敷に働く全員が参加しました。普段お酒をあまり飲まないレディウスも楽しそうに呑んでいました。


 パーティーを終えた後、湯浴みを終えた私とヘレネーでレディウスを自室に連れ込みます。そしてベッドへと押し倒して、私たちは服を脱ぎます。


「ふふっ、今日は私たちがご奉仕するからじっとしてなさいよ?」


「拙いかもしれませんが頑張ります、ご主人様」


 17歳の誕生日おめでとうございます、レディウス。

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