185話 アルバスト防衛戦(14)
俺はシュバルツから流れてくる闇属性の魔力を身に纏い、パトリシア王女と対峙する。本来であれば魔法の適性がない黒髪の俺では絶対に出来ない魔天装だ。見た目以上にかなりの集中力がいる。
その代わり、闇属性の能力を身に纏う事が出来る。シュバルツに備えられている闇属性の能力は消滅。闇の力に触れたものを消し飛ばす能力がある。
俺もついこの前まで気が付かなかった。かなり魔力を込めないと発動しない能力なのだ。そのため、現在進行形でかなりの量を持っていかれているが。
更に何かを消滅させる度に魔力を持っていかれる。それも巨大なものほど比例して消費量は増えていく。あまり多用出来ない技なのだ。それでも強力なのには変わりないが。
俺のこの姿に、全身の毛を逆立てて威嚇してくるパトリシア王女。俺はそんなパトリシア王女を助けるために踏み出す。
迫る俺に向かってパトリシア王女は三尾の尻尾に再び火の玉を作り放ってくる。俺を近づけないように次々と放ってくるパトリシア王女。
俺は迫りながら火の玉を切る。魔闘眼で魔力の少ないところを狙い、消滅の効果を触れる瞬間のみ発動。更に黒く輝くシュバルツで火の玉を切って行く。
切った火の玉は消え去り、避けた分は地面にぶつかり爆発する。爆風に煽られるが、その勢いに身を任せ更に加速する。
全ての火の玉を避けられ、忌々しそうに俺を睨んでくるパトリシア王女。なんだかそういうところはまだ人間っぽさが残っていて可笑しいな。
俺はパトリシア王女へと迫り、右上からシュバルツを振り下ろす。パトリシア王女は左手の爪で防ごうとするが、それは悪手だ。再び触れる瞬間に消滅を発動。パトリシア王女の爪を抵抗を感じる事なく切り落とす。
そのまま、胸に埋まる魔石に向かってシュバルツを振り下ろすが、パトリシア王女はギリギリで反応して避ける。そのまま右手の爪で突いてくるが、下から左手を上げ、上に打ち上げる。
そして、そのまま振り下ろしたシュバルツを返して振り上げる。パトリシア王女は下がって避けようとするが遅い!
「旋風流、風昇閃!」
俺が振り上げた一撃が、パトリシア王女の体を斜めに傷を付ける。更にしたから吹き上がる魔力の衝撃に吹き飛ばされる。
パトリシア王女は直ぐに態勢を立て直すが、パトリシア王女の横腹を蹴り飛ばす。腕を間に入れて防ぐが、そのまま蹴り抜く。
パトリシア王女は跳んで勢いを逃し、後ろへと距離を取ろうとするが、既に俺は目の前だ。尻尾を払ってくるが、シュバルツで弾き、魔闘拳をした左腕でパトリシア王女の体を殴る。
メシメシと左手に響くパトリシア王女の骨の軋み。パトリシア王女は口から空気を吐き、地面を何度も転がる。このまま押し切るため、更に迫るが、パトリシア王女はそこまでは許してくれなかった。
パトリシア王女の体中が金色に輝き出したと思えば、一気に炎が放出、彼女を守る壁のように俺を阻むのだ。
魔天装のお陰で痛みや熱さは無いが、衝撃だけは防げず、距離を取るしかなかった。その隙に何処かへと走り出すパトリシア王女。一体何処へ?
このまま、見失うのは論外だ。どこへ行くのかもわからないが、俺もパトリシア王女の後を追いかける。
パトリシア王女が向かっていったのは、先程まで彼女が高まっていたテントの側にある別のテントだった。パトリシア王女はそのテントに向かって火の玉を放ち燃やし出すと、燃え上がるテントの中へと入って行ってしまった。
何故彼女はあそこに? 訳も分からずに、入ろうかどうかも迷っていると、突然燃えるテントが吹き飛ぶ。吹き飛んだ場所から吹き荒れるパトリシア王女の魔力。
中からパトリシア王女が現れたが、手にはさっきまで持っていなかった剣を握っていた。その握る剣からも魔力を感じる。あれは魔剣か。パトリシア王女はあれを取りに行っていたのか。
パトリシア王女は左手を地面につけ剣を構える。自身の体から溢れる火と、彼女が持つ魔剣から吹き荒れる風が、彼女を包んで行く。
「ははっ、凄えな」
これが彼女の本気か。触れるものを全て燃やす炎に、全てを吹き飛ばすように荒れ吹く風。その2つの力が、彼女を守るように渦巻き1つの球体のように変わった。
「ガルゥア!!!」
パトリシア王女がはみ出した瞬間、地面が爆発する。火の爆発力と風の推進力で速度を一気に上げて来た。俺はカウンターを狙う様にシュバルツで横薙ぎを放つが、彼女の周りを渦巻く風と火の壁に阻まれた。
逆にパトリシア王女の魔剣は、壁が初めから無いかのように俺に降ろして来た。直ぐに手元に戻したシュバルツで防ぐが、防いだ瞬間、パトリシア王女の魔剣が爆発。俺は爆風に吹き飛ばされると同時に放たれたかまいたちに体を切り刻まれる。
何度か地面を転がりようやく止まったが……魔天装を使ってなかったらやばかったな。
それに、今気が付いたが、よくよく見れば彼女の尻尾が三尾から五尾へと尻尾が増えていたのだ。
パトリシア王女の魔力は増え、先程まで小麦色だった毛は、微かに金色へと変わっていた。
……だけどまあ、やることは変わらない。パトリシア王女を助けるだけだ。彼女をこれ以上獣人化させるわけにはいかない。俺自身も魔天装がそんなに持たない。
そろそろ終わらせる!
気が付けば今日で「黒髪の王」を投稿し始めて1年が経ちました!
ここまで続けられたのも皆様のお陰です!
ありがとうございます!
前にも話しました通り書籍化打診があったり、その話が無くなったりと、色々な事があった作品ですが、これからも投稿していきますので、皆様よろしくお願いします!
記念としてこの3連休は「黒髪の王」を連続投稿していきたいと思います。
閑話で夫婦のデートも投稿したいと思いますので、よろしくお願いします!




