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151話 結婚式前

「……おい、少しは落ち着けよレディウス」


 右へ左へと何度も往復する俺を見て、はぁ、とため息を吐くガウェイン。


「仕方ないだろ。俺だって緊張しているだからさ」


「カッカッカ! 対抗戦や親善戦では全く緊張しなかったレディウスでも、やっぱり結婚式では緊張するんだな!」


 笑い過ぎだぞ、ガウェイン。腹抱えて笑いやがって。俺だって緊張ぐらいするぞ。なんて言ったって今日は、一世一代の結婚式だ。


 主役は俺なんかより花嫁であるヘレネーとヴィクトリアだろうけど、それでも新郎の俺が失敗するわけにはいかないからな。


「ハハハ……はぁ、はぁ、ふぅ、笑い過ぎたぜ。でも大丈夫なのか、レディウスは?」


「ん? 何がだよ?」


「お前、大怪我負ったんだろ? もう大丈夫なのかよ?」


「ああ、その事か。あれぐらい大丈夫だよ。ハイポーションが無ければヤバかったらしいけどな」


 俺はそう言って、自分の脇腹をさする。ガウェインが言っているのは先週の師匠との決闘の事だな。


 あの時、俺の技と師匠の技がぶつかった時に、俺の技は押し負けて、脇腹を半ばほど切られてしまったのだ。


 そのあと吹き飛ばされて、俺はそのまま気を失ってしまったとか。ただ運が良かったのは、途中で師匠の剣が折れてしまった事だ。師匠の技に俺の技がぶつかって耐えられなかったようだ。


 師匠の剣が折れてなかったら、俺の体は上下で分かれていたと、グリムドは言っていたな。


 俺も3日ほど気を失っていたようだし。目が覚めた時に、目の前に目を赤く腫らしたヘレネーたちがいたのを見た時は、かなりの罪悪感があった。


 師匠も、さすがに結婚式前に大怪我させたのは、申し訳ないと思ったのか、俺に謝ってきたし。別に俺は自分が決めた事なので構わないとは言ったのだが。


 そんな事があったのだが、何とか予定通り、結婚式の日を迎える事が出来た。俺の傷も表面上は治ったし。あまり激しい動きをすると開くそうだが。


「うむ、中々似合っているでは無いか」


 色々とガウェインと話をしていたら、突然入口の方から声がした。その方を見ると、そこにはアルバスト国王にセプテンバーム公爵、護衛としてだろうか、レイブン将軍が立っていた。


 扉の向こうにはロナとマリーが申し訳なさそうに立っている。


「ああ、彼女たちを怒らないでやってくれ。私が内緒で、と頼んだのだ。外の兵士たちにもな」


 そう言って笑う国王。後ろにいるセプテンバーム公爵はやれやれといった感じで、レイブン将軍は苦笑いだ。


 俺の隣にいるガウェインは固まってしまった。それも当然か。国王陛下にセプテンバーム公爵、そして自分の父親であるレイブン将軍がいるのだから。


「これは、お出迎えもせずに申し訳ございません、国王陛下」


「何、先ほども言った通り、内緒で早く来たからな。気にする事はない。それより聞いたぞ。数日前に瀕死の重傷を負ったとかな」


 げっ、なんで国王陛下まで知って……って、それは知っているか。別に隠しているわけではないし。ちょっ、セプテンバーム公爵怖いって! そんな睨まないで下さいよ。ヴィクトリアを泣かせたのは謝りますから。


「ははは、良いじゃないですか、陛下。彼はこれから国を担う武将の1人です。少し死にかけるぐらいが良い修行になるのですよ。私もミストリア様に相手をしてほしいぐらいです」


 そこに助け船を出してくれたのが、レイブン将軍だった。


「確かにの。彼には色々と頑張ってもらわんといけんからな」


 なんか、俺の知らないところで色々と話が進んでいるけど、何のことだ? 俺が首を傾げていると、何だか外が騒がしい。一体なんだろうか? 


 みんなで首を傾げていると、ドタバタと廊下を走る音が。そして、現れたのがグリムドだった。普段の彼からは見られない慌てた様子。よっぽどの事があったんだな。


「国王陛下、ご歓談中申し訳ございません!」


「グリムドか、どうかしたのか?」


「それが、2名王女様方が出席したいといらしておりまして……」


 2王女? ……って、王女!? さすがに国王も予想外だったのか驚いている。そして部屋を出て行ってしまう。


 その後にセプテンバーム公爵たちも付いて行き、俺も付いて行く。さすがにこのままいるわけには行かないからな。


 そして、屋敷を出ると、2人の女性が立っていた。1人は金髪の髪をボブカットにしており、眼鏡をかけており、物凄く真面目そうな雰囲気がある。


 その隣にはゆるふわな金髪を腰辺りまで伸ばしており、隣の女性とは反対にほんわかとした印象を与える。


「メレアーナにパトリシアではないか。一体どうしたんだ?」


「これは父上、お久しぶりです。どうしたと言われましても……」


「うふふ、ヴィクトリアの花嫁姿を見に来たのですよ、お父様。彼女は血は繋がっていませんが、私たちの妹のような存在ですからね」


 そう言って微笑む2人……やばい、フローゼ様もそうだったが、王女たち物凄く良い人たち過ぎるだろ! あの王子とは違い過ぎる。


 そして、俺と目が合うと、2人は近寄って来た。


「君がレディウス君か? 私の名前はメレアーナ・アルバストだ。君には感謝しかないよ」


「うふふ、私の名前はパトリシア・アルバストよ。馬鹿弟のせいで、ヴィクトリアには辛い思いをさせてしまったからね。あなたには感謝しているのですよ」


 ……やっぱり、違い過ぎるよ。

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