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124話 食堂で

「…………ふがあっ!」


 ドスン! という音ともに、体中に広がる痛みで俺は目を覚ました……どうやら、寝ぼけてベッドから落ちたようだ。


 寝ぼけながらも目を開けると、見慣れた天井だが、何時もより若干薄暗い。それに窓には何かが当たる音がする。俺はベッドに手をついて立ち上がって窓を見ると


「今日は雨か」


 そんなに強くは無いけど、あまり外に出たくは無いほどの天気だ。まあ、今日は外に出る事は出来ないのだろうけど。俺は顔を洗い、服を着替えて何時もの食堂に向かう。


 昨日の親善戦の後はあのまま終了となった。親善戦は1年生から行って、俺たち4年生が最後だったため中止にはならなかったが、閉会式などは無いまま各王から労いの言葉を貰い、話は今日聞くから昨日は休むように言われたのだ。


 ロンドルたちも王宮にいるはずだ。アルフレッドは兵士に連れていかれたが、他のメンバーは話を聞くために王宮に連れていかれていたからな。


 俺は食堂までやってくると、中から話し声が聞こえてくる。どうやら他のみんなも来ているようだ。俺は食堂の扉に手を付けて


「みんな、おはよ……う?」


 開けながら挨拶をするが止まってしまった。理由は


「ほら、ガウェイン様、あーんしてくださいまし!」


「ば、馬鹿野郎! 俺は1人で食えるって言ってんだろうが! この金髪ドリル女!」


「もうっ! 私の事はシャルンと呼んで下さいと言っているではありませんか。ガウェイン様のいけず!」


 顔を赤く染めながらも甲斐甲斐しくガウェインの世話を焼こうとするシャルンに、口では汚い事を言っているが、力づくでどうこうする気は無いようなガウェインがいたのだ。あっ、無理矢理あーんされている。


「あっ、おはようございます、レディウス。昨日はよく眠れましたか?」


「ああ、おはよう、ヴィクトリア。昨日は良く眠れたせいなのか、今朝ベッドから落ちて目が覚めてさ。なんとも言えない目の覚め方だったよ」


 俺はぶつけた腰をさすっていると、ヴィクトリアも口に手を当てて笑ってくれた。可愛い。


「それで、これはどういう事なんだ?」


 俺は未だにあーんをし続けるシャルンと嫌々ながらも食べるガウェインを見る。


 ティリシアとクララはニヤニヤしながらみており、他のメンバーであるロンドルは呆れながら見ており、ビーンズは苦笑い、メイリーンに関しては我関せずと黙々と朝食を食べている。


「それがですね〜……どうやらシャルンさんはガウェインに恋をしたそうなのです」


「……恋?」


 俺はガウェインたちを見て目を擦る。そして再びガウェインたちを見る……恋? えっ? ギルドであんな喧嘩したシャルンがガウェインに恋……えっ?


 俺があんぐりと口を開けながらガウェインたち見ているとヴィクトリアが


「先ほどシャルンさんが言っていたのですが、シャルンさん、ガウェインに2度も命を助けられているのですよね? オークキングの時と昨日の親善戦で」


 ……あ〜、そう言えばそうだな。オークキングの時は洞窟から飛んで来た大岩から、ガウェインがシャルンを庇って助けて、昨日は取り憑かれたアルフレッドから助けていたな。


 確かに絶体絶命の時に命を張って助けられたら恋もするか。


 俺がそんなガウェインたちを見ながら席に座ると、侍女が朝食を持って来てくれた。俺の隣に座ったヴィクトリアにもだ。


「あれ? ヴィクトリアはまだ食べてなかったのか?」


「え、ええ、わ、私も今来たばかりでして」


 と、ヴィクトリアは言う。そうだったのか。俺はそのまま朝食を食べ始めると、隣でヴィクトリアがチラチラと俺を見てくる。どうしたんだろうか?


「どうした、ヴィクトリア。俺の顔に何か付いているか?」


「い、いいえ! な、なんでもありません!」


 ヴィクトリアに尋ねて見るもヴィクトリアは首を横に振って黙々と食べ始めてしまった。俺は首を傾げながらも、止まっていたフォークを進める。


 目の前では、朝食を食べ終えたのか、ガウェインの口周りを甲斐甲斐しく拭くシャルンに、もう諦めたのか、目を瞑りながらされるがままになっているガウェインの姿があった。俺も思わずニヤニヤと笑ってしまう。


「わ、笑うんじゃねえよ、レディウス!」


「くくっ、いつも俺をニヤニヤと笑ってくる仕返しだ」


 ガウェインが顔を赤くしながら言ってくるが、俺の言葉に心当たりがあるガウェインはぐっ、と黙ってしまう。ふふふ、仕返しが出来たぞ。


 それから、俺とヴィクトリアが朝食を食べ終えると、ロンドルが


「みんな、昨日は助かった。お前たちのおかげでアルフレッドを止める事が出来た」


 と、頭を下げて来た。それに合わせてシャルンたち他のメンバーも頭を下げる。


「別に気にする事はない。俺たちも戦わないとやられていたからな」


 ガウェインが代表してそう言うと、目をキラキラさせたシャルンがガウェインに抱き着く。ガウェインは頑張って引き離そうとするが離れない。俺たちはそれを苦笑いで見ている。


「それで、アルフレッド君がああなった理由はわかったのですか?」


「ああ、俺も話を聞いただけだが、どうやらアルフレッドが持っていた剣が原因だったようだ」


 ヴィクトリアの質問にロンドルがそう答える。やはりそうか。昨日、ガウェインに聞いたが、アルフレッドが剣の力を解放した瞬間、そこから黒いナニカが出て来てアルフレッドに取り付いたと言う。


 それに、アルフレッドの手を切り落とした時も、アルフレッドから黒いナニカが剣に戻ろうとしていたし。


「みんなも気づいているかも知れないが、アルフレッドが持っていたのは……魔剣だ」

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