7話 仕事は順調に進んでいるようです
カン!カン!カン!
甲高い音が荒地になり響く。
ウー、アー、ウー。
と薄気味悪い唸り声と共にゾンビとスケルトンの大軍が
音の発生源である塀に群がってきた。
その数100体を優に超えている。
日暮れ共に荒地の地面から姿を現す彼らは、
音に敏感らしく、それ以外には興味を示さない。
しかし、一度音に反応すると大軍を成して襲い掛かってくる習性がある。
その為、この様に荒地を塀で囲いこいつ等を閉じ込めているのだ。
ゾンビとスケルトンは死霊系でも下位個体で、討伐推奨レベルも15前後。
はっきり言って雑魚だ。でもその数が100体ともなると話は変わってくる。
知能は低いものの、他の同種を踏み台にして這い上がろうとするその姿は、
とても悍ましく、油断のおけない存在であった。
こうしている間にも、新たに別個体が荒地から発生し、数を増している。
刺激をしなければ朝の陽ざしで消滅していくだけの存在だが、
僕はあえて更なる刺激を与える。
カン!カン!カン!
甲高い音が新たに発生した個体にも届く。
そして、塀に群がる個体数は凡そ300体位に膨れ上がっていた。
「頃合いかな」
僕は塀に群がるゾンビ達の真上に陣取り、
そして、
「ライト!!!」
僕の声が辺りになり響く。
そして僕を起点に光源は発生していた。
それは光属性低級魔法『ライト』普段は光源を創るだけの魔法だが、
弱点属性の魔物に、特効性を持ち絶大な威力を発揮する魔法だ。
僕の指し示す方に光源が向く。
すると、低い悲鳴をまき散らしながら、
ゾンビ達が燃え上がり消えていった。
次はスケルトンの群れに光を向ける。
同じくカラカラと音を立てて崩れ去って行く。
その光景を目にし、僕はまた自分が強くなるのを感じていた。
ステイタスを確認する。
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トール 13歳 男 人間
レベル:32
HP :294/323 (294)
MP :487/558 (507)
筋力 :61 (55)
体力 :108 (98)
敏捷 :200 (182)
魔力 :186(169)
耐久 :46 (42)
耐性 :139(126)
魔法 :ライト★
称号 :死霊ハンター
特性 :孤高 獣語使い 光の知識(lv2)
死霊特効(lv2)
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:特性:
光の知識「光属性攻撃が強化する」
死霊特効「死霊系種族に対して特効を得る」
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レベル32。
この仕事が始まってから4日。
ナナシさんの提案で開始したこの狩は、
驚くべきスピードで僕を成長させていた。
父さんから聞いた事がある。
今の僕は国の正規兵として十分に通用するレベルだ。
自身のステイタスを観て大きな満足感を得る。
おっと、いけない。
早く下に降りてドロップ品を回収しないと…
死霊系の魔物は他の種族と違い。
ドロップ品が発生する。
本で読んだ知識だが、
死霊系の魔物は魔力を含んだ物を核にして生まれてくる種族だ。
その核になった物が魔物を倒すと零れ落ちるのだとか。
大抵の場合、魔力の土塊か死霊の骨だけど、これがそこそこの値段で売れるのだ。
それこそ、そこいらの魔獣の皮なんかよりも高値で。
魔獣の皮が1枚10銅貨前後なのに対して、
魔力の土塊は1つ20銅貨前後。
死霊の骨は1つ15銅貨前後。
そして、一度に狩り取れる数が多い。
300の個体から得られるドロップ品は大体10個前後。
これを夜が明けるまで大体6回は繰り返す。
つまり60個前後のドロップ品が手に入るのだ。
仮に全てが死霊の骨だとしても一日9銀貨位になる。
そして、警備の報酬を足すと1日12銀貨。
この額は1人の男性が一月に稼ぐ最低賃金に迫る額だった。
僕はドロップ品を袋に詰めていく。
その間、近づいてくる魔物はライトで消去。
結局、彼らは大きな音さえ立てなければ、無害なのだ。
本当に良い狩場だった。
何故みんなこの狩場を使わないのだろうか?
そんな事は解っている。
死霊系モンスターは物理攻撃が効きにくい。
そして、数で押してくる彼らを範囲的に攻撃できない者は、
その物量に押し潰されてしまう。
彼らとは戦いにくいのだ。
死霊系モンスターが嫌われる理由がそこにあった。
しかし、この狩場を使用する為に冒険者はやってくる。
その人達に注意勧告し、入らせないのが僕達警備の仕事だ。
「ナナシさん働いてるかな…」
少し不安になった。
モンスターが再び沸いてくるまで時間はある。
僕はナナシさんの居る屯所に、一度戻る事にした。
:設定:
貨幣についての補足説明です。
1銀貨=100銅貨
1金貨=100銀貨
価値としては、
1銅貨=100円
1銀貨=1万円
1金貨=100万円
と言ったところです。
はい、テンプレ設定です。