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僕の友達は… クズでした  作者: モモノ猫
序章 初めての友達が出来ました
3/16

3話 その日、少年に…

 ―――パチ―ン!


「おきろ!」


 頬に走る痛みで目が覚める。

 そして、意識の焦点が合いはじめ…


「父さーーーん!」

「はーい、パパですよ」


 僕の叫びに、

 黒ずくめの男がやる気なさげにそんな事をほざいた。

 辺りを見渡す、そこに両親は居ない。

 そして、村人も。

 ここはレノアですらない。

 ただの森の中。

 近くにたき火が焚かれていた跡があり、

 ここで一晩過ごした事を告げている。

 そして胡散臭い男が一人、僕を覗き込んでいた。


「大丈夫か?」

「父さん達は?」

「おいおい、質問を質問で返すな。

 俺はお前の心配をしてるんだぞ」


 優しい声で答えが返る。


「ごめんなさい。

 でも、お父さんを」

「でも、でも、でも。

 ガキはこれだから困る。

 お前の体の方が大切だ。

 とりあえず落ち着くまでそこに座ってろ」


 お道化た感じで頭を揺らしながら話す男。

 手際よくたき火を点けなおした。


「何か食うか?」

「いえ」

「そうか」


 この人は事情を知っている。

 何とか聞きだして先に進まないといけない。

 そんな風に思考しながら黒ずくめの男を見詰めていると、

 僕が自身を観ている事に気付いたのか、

 男は重い口を開いた。


「お前の親だけどな。あきらめろ」


 全てが終わる音が聞こえた。


「お前の村はもうない。

 あの賊に火を点けられてな、全て燃えた」

「村人達は?」

「全てだ。

 お前を助ける為に俺も必死だった」


 涙が自然に溢れ出す。

 あれだけ出て行くかを悩んだ村なのに、

 無くなった事を聞くと涙が止まらない。

 もう、あそこには帰れない。

 その事実が、胸を締め付けた。

 父さん達も燃えたのか?

 その事が気になった。


「父さん達も?」


 男が顔を振る。


「分からん。

 逃げるのに必死でそこまでは…」


 少しの希望が胸に沸く。


「さっきも言ったがあきらめろ。

 火の手を逃れても賊の手の中だ。

 その先は奴隷か殺されるかだ。

 期待するだけ…」


 男が僕の顔を観ていた。

 涙を目に溜めた僕の顔を。


「これだからガキは困る…」


 そう言い残し、

 男は泣き止むまで静かに待ってくれた。



 僕が泣き止むと男がたき火に土をかける。

 そして僕の隣に腰を下ろした。


「前にも言ったが、君と話がしたい。

 それに、これからの話もある」


 体がびくりと震えた。

 両親を失った僕に行く当てなどない。

 僕の今後がここで決まる。


「はい、僕も話がしたいです」

「よかった」


 僕の返答にそれだけを語ると、

 優しくニカっと微笑んだ。


「最初に言っておく。

 俺たちは対等だ。だから遠慮はするな。

 ただし、調子に乗って対等だと言う事は忘れてくれるな」


 何が言いたいのか意味が解らない。

 とりあえず僕達は対等と言う事らしい。


「実はお前の両親から逃げる前にお前を任されてる、

 俺も了承した。つまり俺はお前の新しいパパだ」

「え?」


 突飛すぎて話についていけない。

 でも話がおかしいのは解る。


「パパ?」

「そう、パパだ」

「無理です」

「…。

 ああ、君の、意見だ、、、そうだな。。。」


 僕のきっぱりとした拒絶に。

 明らかな動揺を示した。


「ちなみに、何が無理なんだ?」


 そんな事を聞いてくる。


「僕にはまだ両親がいます。

 まだ父さん達は死んでません!」

「ああ、そうだな」


 その言葉に納得した様子の男。

 動揺は薄れた様だ。


「顔が無理とかじゃなくてよかったよ。

 そうか、まだあきらめてないか。

 では、これではどうだ?

 兄弟!

 うんしっくりくる。

 イケメンの兄貴だ。

 女の子にもポイント高いぞ」

「その、僕から、、提案をよろしいですか?」

「何だ兄弟!」


 人懐っこい返答に戸惑う僕。

 男は僕との関係を決めたいらしい。

 ならば、一番似合う関係が有る筈だ!

 顔が熱くなる。

 汗が流れだして止まらない。


「ぼ、ぼこの、、、、」


 噛んでしまった。

 男は目を丸くしてこちらを見詰めている。

 言うなら今しかない。

 そして、



「僕の友達になってください!!」



 言えた。

 言ってやった。

 男の顔が観れない。

 俯いて待機する。

 返答は? まさか…NO?

 さっき拒否した事を思い出す。

 そして昨日拒否した事も…


 図々しすぎる…

 顔が青くなり。絶望が心を支配した。

 男の沈黙の長さが不吉な返答を予感させる。

 僕は選択を… 間違えたのか?


 ぽん!

 そんな音が頭で響いた。

 頭に大きな手が乗っている。

 とても暖かくとても頼りがいのありそうな温もり、

 まるで父さんに頭を撫でられたような心地よさがそこにはあった。


「いいぜ兄弟。

 これから俺たちは」


 涙が溢れる。


「友達だ!」「友達です!」


 誰も居ない森の中、

 僕達の声が重なり響いた。

 それはきっと誰にも届かない。

 でも、僕の心に響き続けた。


 父さん、僕に初めての友達が出来ました!

 とても頼りになる友達です!

 僕は彼と… 

 そういえば名前を聞いていなかった!


「あの!貴方のお名前は?」

「ああ、そうだった!俺はナナシだ」

「僕はトールと言います!」

「そうか、トール良い名前だ」

「な、、なしさん!」


 感極まって再び噛んでしまう。

 それをナナシさんは笑って流した。

 何かこう言うのってすごく良い!!

 僕がそう興奮しているとナナシさんが話し掛けてくる。


「ところでトール!

 物は相談何だが…」


 とても言いにくそうにその後を渋るナナシさん。

 僕なら何でも頑張ります!!

 眼を輝かせながらナナシさんを見た。

 ナナシさんも照れ臭そうに笑う。

 そして…




「金かしてくれ。

 今、手持ちが無くてな。

 連れが後で返すから!」


 時が止まる… 僕の時が。

 父さんから聞いた事がある。

 金をせがむ奴には気を付けろと。

 しかも、自分で返すのではなく、連れが返す???


 父さん、僕の初めての友達は、、

 どうやらとんでもないクズのようです…

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