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僕の友達は… クズでした  作者: モモノ猫
序章 初めての友達が出来ました
2/16

2話 黒ずくめの事情

 村の近くに差し掛かると辺りは暗くなっていた。

 しかし、何かが違う。いつもと違う空気。異質な雰囲気に足が止まる。

 そこには村の風景にそぐわない一団が中央にある広場を占拠していた。

 僕は急いで物陰に隠れる。

 そして、息を殺し広場の方を見詰めた。

 立派な鎧で着飾り、そして手には抜き放たれた剣を持っている。

 遠目から見てもそこに温和な空気が流れている様には見えなかった。


「時化てやがる。どーするよ隊長」

「全くだ、国が見放す訳だぜ。

 取れるものがねーとはな」

「家畜は売れるとしても、

 人は…

 もう少し若けりゃ買い手もつくのに」

「そこの二人は売れるだろ?」


 不穏な発言が聞こえた。

 そこの二人?

 僕の両親がそこに立たされていた。

 父さんには所々傷があり抵抗の跡がある。

 母さんは無傷だ。良かった。

 良くはないんだけど…

 父さん達が売られると言うのか?

 何故?

 みんな動かない?

 何故抵抗しない?

 このままじゃ、


「お前は賢いな」


 隣に黒ずくめの男がいた。

 俺の顔を見るなりニカッと笑い掛けてくる。


「お前くらいのガキだと。

 広場に突っ込んで行くだろ普通。

 どうした?とーちゃん達連れて行かれるぞ?」


 その通りだ。

 僕は村人達が動くのを待って自分は動こうとしなかった。

 怖くて動けなかった。

 動かない僕を見て黒ずくめの男はニヤニヤとしている。


「その選択が正解だ。

 行っても死ぬか。売られるか。

 辛い未来しか待ってない。

 お前は自分を守ったんだ」


 優し声音だった。

 この人なら僕を助けてくれるだろうか?

 胡散臭い雰囲気を依然として醸し出すその男を信じて良いのだろうか?


「逃げるぞ」

「え?

 助けてくれるんじゃ?」

「だからお前を助けんだろ?」

「父さん達は?」

「ありゃ無理だ」


 即答で答えが返って来る。

 こいつは… ダメだ… こいつは信用できない。

 僕はその場を立ちあがり、両親の方へと走り出した。


「ちょ、おま!」


 制止の言葉を掛けられたが気にしない。

 両親の近くまで走った。

 前方に鎧の男達が立ち塞がるまでは。


「おお、これはこれは。

 良いのがいるじゃないか」

「父さん達を返せ!」


 恐怖そっちのけで鎧の男達に叫ぶ。

 それと同時に横から殴りつけられた。

 その威力で僕は吹き飛ぶ。

 口の中が痛い。

 体が痙攣している。

 目の前が真っ赤に見えた。  


「おいおい、勇ましいな。

 小僧どこから来た?他にもいるのか?」

「おい、顔を潰すな。

 そいつは高く売れる」

「すいません。隊長」


 隊長と呼ばれる男にペコペコとする男。

 その姿を横目に僕の意識は失われていく。

 依然、周りにいる村人は怯え、僕達を助ける様子はない。

 黒ずくめの男が言うように辛い未来が僕を待ち受けているのだろう。

 意識が… 途切… れ… る。



 おいおい、どうするよ?

 黒ずくめの男は隠れた場所から少年を見詰めていた。

 鎧の男達に抱えられ、戦利品を集めてある場所に寝かされた。

 とりあえず少年の身は安全のようだ…


 何が「ようだ」だ!

 これじゃまるでストーカーじゃないか。

 まさか男の追っかけをやる事になるとは、死にたい!

 黒ずくめの男はその場で悶えた。


 黒ずくめの男にも事情がある。

 全ての元凶はあの男。

 へミールとかいう腐れ外道。

 どこぞの帝国の将軍様。

 世界征服を企む、権力の亡者。

 俺はあの男に呪いを掛けられていた。


 一方的なペアリング。

 それは見事に俺の命を刈り取った。

 不死に近い俺に見事弱点を与えた。

 その呪いは、対象者の生死を他者とリンクすると言うもの。

 他者は呪いの発動時に選定される。

 そして選ばれた者は殺され。

 俺も死ぬ事になった。

 まあ、俺は蘇るんだけどな。

 それですべてが終わり、

 俺の復讐劇が始まる筈だった。


 知ってるか?

 死んでも呪いは消えないんだぜ…

 リスポンした直後。

 呪いは新たなリンク対象を選定した。

 それがあの少年。

 あの少年が死ぬまで俺の弱点はあの少年。

 あの少年が死ねば俺も死ぬ。

 そしてリスポン。

 また選定。

 はい、そうですとも。

 復讐どころではないのだ…


 何としてもあの少年には強く生きて貰わないといけない。

 と、俺らしくもない事を考える。

 その考えに至ったのにも理由はあった。

 実は少年は2人目ではないのだ。

 俺の巻き込まれ体質とも言うべき特性の犠牲で、

 既に数度のリスポンを終えていた。


 はっきりと言おう。

 めんどくさい!

 めんどくさいのだ。

 なんで他人が死んだら知らない場所に飛ばされないといけない?

 本当にふざけてやがる!

 迷惑極まりないとはこの事だ。

 だから俺は、

 選ばれた者には強くなって貰う必要がある、そう結論付けた。


 そして今に戻る。


「おい、そこで何をしている?」


 見つかった。

 さすがに不用心過ぎたか?


「出てこい!」


 その叫びに俺は手を挙げて前へ出た。

 鎧の男達が無遠慮に俺を値踏みする。


「こいつは良い。

 少年と美青年。こいつは高く売れる!

 おい!撤収だ。

 面倒だ家畜は潰せ。

 皮と肉だけ有ればいい」

「うっす」


 その声に村人がどよめく。


「待ってください。

 家畜を潰されては…」

「だまれ、お前らの事など知るか!

 どうせ消え行く村だ。

 俺達が全て頂く。

 お前らはこれから焼く村と心中しろ!」


 言うが早いか抗議した村人が剣で貫かれる。

 俺は流れ弾が来ないよう事の結末を大人しく見守った。


 それから起ったのは虐殺。

 年配者しかいない村人達はなすすべもなく殺されて行く。

 俺はただそれを観ていた。

 最後に家畜を潰し終わると、本当に村を焼き払った。


「撤収だ!

 戦利品を忘れるな!」


 隊長格の怒号が飛ぶ。

 俺を含めた、戦利品が荷馬車に積まれた。

 そして、鎧の男達は隊列を組み何処かへと進みだす。


 このまま行くと俺は奴隷だ。

 そして目の前にいる少年とその両親も。

 眠る少年を心配そうに見詰める両親。

 ここだ。


 俺は動き出した。

 両親に怪しまれない様に、そしてお子さんを俺に託してくれる様に。

 できるだけ優しく言い放つ。 

 

「少年を救うのに、

 一つ提案があります」


 おっと、少し声が上ずったかな…


「「本当ですか!」」

「静かに、ばれますよ…」


 思ったよりの食い付きだ。

 これは良い。

 これなら少年だけを連れだせる。ニヤ。


 その時の怪しい笑みを少年の両親はどう受け取ったのだろうか?

 何かを悟った両親は、俺の話に耳を傾ける。

 そして全てを了承した。


 俺は手に闇を造ると、それに少年を飲みこませた。

 定員は一人。勿論、嘘。

 両親は涙ながらにそれを見守った。

 そして、俺は闇と同化し外へと姿を消した。

 両親を残して。


 両親と交わした約束はこうだ。

 少年を俺の子供として育てる。

 それだけ。

 それだけの口約束を両親は信じた。

 そして全てを受け入れた。

 ホント馬鹿じゃねーのか?と思う。

 俺達も助けろと何故言わない?

 心に悪態をつく。


 俺は嘘なんてついていない。

 大事な半身だ。最高の息子に育上げるさ。

 ただし、性格は保証しかねるけどね。

 姿の見えなくなった両親にそう囁いた。


 と言うか俺はまだ21だぞ。

 大きな子供が出来ちまった…

 やっぱ、子持ちってモテないよな…

 どうするよ、まったく…

 これも全ては糞へミールの…


 その夜、俺の悪態が絶える事はなかった。

:設定:

前作を読まれていな方向けの補足説明です。



黒ずくめさんは

基本的に不死に近い存在です。

そして死んだとしても、知らない場所にリスポンします。

これは彼が消えて無くなるまで続く呪いの様なものです。


黒ずくめさんは

『闇の羽衣』『獄卒の腰袋』と言うスキルと魔法を所持しています。

前者が闇になったりするスキルです。

後者はモノを入れておく倉庫の様な魔法です。

これを使いトール少年を飲みました。


黒ずくめさんは

『自覚なき歯車』という迷惑極まりない特性を持っています。

これは自分を中心に何かが起きると言う特性です。

良く言えば主人公体質。

悪く言えば巻き込まれ体質。

要するに、他者からすると彼は疫病神以外の何者でもありません。

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