総決算
新世紀日米戦争は多大なる被害を、人類史上最悪の犠牲者を出した。戦争を終わらす為の戦争と言われた第一次世界大戦での死亡者数約1600万人、人類史上最大の戦争と言われた第二次世界大戦での死亡者数約6500万人、これらの数字を上回り約8500万人という人類史上最悪の犠牲者となった。犠牲者の95パーセントは核攻撃による被害であるのも大きな特徴であった。純粋な軍人の戦死者は約280万人である。アメリカ合衆国が陸海空海兵隊全て合わせて約200万人いるが、約190万人がこの戦争で戦死した。そしてロシア連邦陸軍40万人とインド陸軍50万人がアメリカ合衆国よる核攻撃で全滅。ロシア連邦とインドの被害は陸軍の損失だけであった。
大日本帝国軍はアメリカ合衆国本土戦で陸軍4000人が戦死、海軍と空軍・海兵隊戦死者無し。中華連邦軍は陸軍が2万人戦死した。インドネシア・フィリピン・タイ・大韓民国・ベトナムは各数百名の陸軍兵が戦死した。これ以外の死亡者数が核攻撃と大日本帝国の戦略爆撃によるものであった。特に大日本帝国とロシア連邦が行ったアメリカ合衆国東海岸への全面核攻撃が、最終的に死亡者数を尋常では無い数に押し上げる事になった。通常ならこの凄まじいまでの核攻撃による被害は、ジェノサイドと批判されるものであった。だが今回はアメリカ合衆国が理不尽極まりない理由で大日本帝国に戦争を仕掛け、先に核攻撃を行ったのもアメリカ合衆国であった。フィラデルフィアへの核攻撃はアメリカ西岸連邦首都ロサンゼルスへの核攻撃に対する報復であり、東海岸主要都市の核攻撃もロシア連邦陸軍とインド陸軍への核攻撃に対する報復であった。サンフランシスコへの空襲も大日本帝国本土空襲の報復であり、ニューヨーク空襲もアメリカ西岸連邦首都ロサンゼルスへの核攻撃に対する報復であった。殆どが報復措置である為に世界各国はジェノサイドと非難しなかったのだ。
自業自得ではありながら、アメリカ合衆国は善戦した方である。最終的にアメリカ合衆国は、大日本帝国を筆頭に亜細亜条約機構加盟国全てのロシア連邦・中華連邦・インド・タイ・大韓民国・インドネシア・フィリピン・ベトナム・ブルネイ・カンボジア・ラオス・マレーシア・ミャンマー・シンガポール・パプアニューギニア・東ティモール・バングラデシュ・スリランカ・モンゴル・パラオ・カザフスタン・キルギス・タジキスタン・ウズベキスタン・イラン・アフガニスタン・パキスタン・ブータン・ネパール・モルディブ・トルクメニスタンから宣戦布告を受けた。実際に武力行使をしたのは上記の国でベトナムまでであり、それ以下の国々は資金援助を行った。だが実際には亜細亜条約機構加盟国だけで無く、ヨーロッパ諸国が中心となりアフリカ・南米・中東諸国も大日本帝国を支援した。砲弾・弾薬・ミサイル等の無償提供もしくは超低価格での販売を行い、大日本帝国の兵站線を支援した。
大日本帝国は今回の新世紀日米戦争で臨時補正予算を編成し約15兆円を戦費として投入した。2002年の一般会計予算が約173兆円であり、国防予算は約25兆円を確保していた。戦費として臨時補正予算約15兆円を編成したのは、国内軍需企業への増産と他国からの購入費用に使用し、当然ながらアメリカ合衆国への遠征費にもなった。約3ヶ月の短期決戦となり、大日本帝国経済に与えた影響は最小限に抑えられた。もちろん北海道釧路市が消滅したという悲劇はあったが、折からの大日本帝国の好景気による経済に何ら影響は無かった。寧ろ釧路市の復興事業で大日本帝国政府の編成した復興事業臨時補正予算10兆円により、北海道全域の経済が活性化され良性な公共事業として寄与する事になった。
それはアメリカ合衆国とは対照的であった。アメリカ合衆国経済は今回の新世紀日米戦争に於いて完全に崩壊した。既にアメリカ合衆国本土上陸以後からニューヨーク証券取引所は機能しておらず、代わりに大日本帝国の東京証券取引所とイギリスのロンドン証券取引所が台頭していた。それは大日本帝国海軍連合艦隊空母機動部隊によるニューヨーク空襲によりニューヨークが完全に破壊された事で、決定的な機能代替となった。更にロッキー山脈以西の州がアメリカ西岸連邦として分離独立したのも、アメリカ合衆国経済には大きな痛手であった。そして決定的となったのが大日本帝国とロシア連邦による東海岸主要都市への全面核攻撃である。これによりアメリカ合衆国は都市を筆頭に社会インフラ・交通網・人的資源全てに於いて大打撃を受けた。大日本帝国以下の陸軍部隊によりロッキー山脈以東からアパラチア山脈以西までは占領されていたが、いわゆる中央部は人口も希薄で農業地帯であり西海岸や東海岸に変わりうる経済規模は無かった。
アメリカ合衆国の崩壊で、世界のパワーバランスは大きな変化を迎える事になった。その第一歩となったのが2002年12月1日にニューヨーク国連本部で開催された講和会議であった。