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新世紀日米戦争  作者: 007
第4章 崩壊
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転換点

大日本帝国によるニューヨーク空爆とフィラデルフィア核攻撃に、世界は度肝を抜かれた。北海道釧路市が核攻撃を受けた際にフランスの大統領は記者団からの質問に、『これでアメリカ合衆国が大日本帝国に核攻撃を受けても、非難する国はいないだろう。』と語り世界各国も同様の発言をしていた為に大日本帝国の核による報復は事実上容認されていた。アメリカ合衆国前大統領により核戦力無力化が行われた為に、大日本帝国は核攻撃を一時停止していただけであった。それが今回のアメリカ西岸連邦に対する核攻撃で、大日本帝国は核攻撃を決意したのである。

ニューヨーク空爆は徹底的に行われた。燃料気化爆弾まで投下され、ありとあらゆる物が灼熱地獄に襲われた。ニューヨークには国際連合本部がある為に、空爆前に大日本帝国は世界各国に知らせていた。しかしそれでも巻き添えは発生し、国連大使や外交官等50人以上が死亡した。だが巻き添えで死亡した国連大使や外交官等の国々は、大日本帝国を非難しなかった。事前通知がありながらも死亡した為に、各国は不慮の事故として処理した。大日本帝国も巻き添えで死亡した事は知っておらず、その事を知ったのは日米戦争が終わってからであった。

ニューヨーク空爆による一連の犠牲者は500万人以上となり、この数は通常兵器を使用した攻撃では歴史上最大の被害であった。本来なら大日本帝国によるニューヨーク空爆は歴史上最悪の大殺戮として非難されるが、現状では世界各国はただ単に報道するだけであった。そしてそれはフィラデルフィアに対する核攻撃についても同じ反応であった。人口160万人のフィラデルフィアが一瞬にして消滅したが、この核攻撃もアメリカ合衆国への当然の報いと受け止めていた。世界各国はもはやアメリカ合衆国が崩壊するのを心待ちにしている状態であった。その筆頭はヨーロッパ各国でヨーロッパ連合という国家連合で、アメリカ合衆国に成り代わろうと画策していた。経済規模や域内人口・軍事力等全ての面で亜細亜条約機構に負けているが、ヨーロッパ連合は成り代わろうという野望がとてつもなく貪欲であった。ユーロという共通通貨を創り出し、各国家の通貨を統一させた。既にドルはアメリカ経済が崩壊しかけている現状から基軸通貨としての地位を失い、基軸通貨は円を筆頭にユーロが続いていた。

このようにアメリカ合衆国の味方をする国は世界に存在しなかった。あれ程親米国家と見られていたイスラエルやサウジアラビア・アラブ首長国連邦・クウェート等もアメリカ合衆国を声高に非難している。大日本帝国のニューヨーク空爆やフィラデルフィア核攻撃もそれ等の国々は何も非難していなかった。ある意味で勝ち馬に乗るという事であった。大日本帝国への軍事物資の支援は世界各国が続々と行っており、今では直接アメリカ西岸連邦の港に物資を揚陸していた。それはロサンゼルスが核攻撃を受けても、別の港に振り替え輸送が行われていた。アメリカ合衆国の兵站線破壊の目的は全く果たされなかった。一部は輸送機での空輸を中部の空港や空軍基地に行っているので、その目論見は更に果たされずにいた。

物資輸送は言い逃れ出来ない明らかな戦争協力である。アメリカ合衆国はそれらの国々を攻撃する権利はあった。しかしそうなれば文字通りの世界大戦になってしまう。今でもアメリカ合衆国は亜細亜条約機構と戦争をしている事から、一部学者は『第三次世界大戦』だと言っている。もはやアメリカ合衆国に打つ手は無かった。



ホワイトハウスでは大統領が報告を受けて、頭を抱えていた。アメリカ西岸連邦のロサンゼルスを核攻撃したばかりに、ニューヨークとフィラデルフィアが壊滅したのだ。もはや被害でいえば国家破綻まっしぐらである。事実前線に送る補給物資にも事欠く始末であった。戦う事自体が厳しくなっていた。大統領は残された戦力で後どの程度戦えるかを尋ねた。聞かれた国防長官以下の軍首脳部は、正直に答えた。1ヶ月も戦えません。

この答えが全てを表していた。経済は崩壊しかけており、軍需企業も軒並み破壊されている。しかも世界各国からは非難され孤立無援。ある意味で世界とただ1国で戦っているようなものだった。寧ろ今まで保てたものだと言えた。それ程にアメリカ合衆国は追い込まれていた。海軍は残された希望の攻撃型原子力潜水艦ロサンゼルス級は全て撃沈され壊滅。空軍も稼働可能な航空機を掻き集めて300機前後。陸軍はアパラチア山脈防衛線とワシントンDCにしか配備出来ず、州兵も壊滅状態だった。残された戦力を全て投入しても勝てる気がしない。圧倒的な戦力差であった。しかしそれでも後1ヶ月は戦えるのだ。大統領はその点に着目した。そしてアパラチア山脈防衛線で少しでも長く抵抗して、被害を与える事により停戦交渉を行うと表明した。

遂に大統領から戦争を終わらせるとの言葉が出たのだ。それを聞いた国防長官達は涙を流した。ようやくその段階に入れたのだ。凄まじい犠牲を払ってきた結果だ。とにかく終われる事に安堵していた。そして大統領は最後の命令として、アパラチア山脈防衛線での死守命令を出した。アメリカ合衆国軍としては極めて異例の命令だ。そして大統領は付け加えた。

「21世紀のアラモにアパラチア山脈防衛線はなってもらう。」

大統領は終戦と引き換えに、アパラチア山脈防衛線守備隊に全滅するまで戦えと言ったのだ。その後大統領はテレビ演説も行い、アパラチア山脈防衛線こそが最終防衛線であり、アラモの気概で死守するように命令したと宣言したのだ。

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