アメリカ大統領弾劾
帝國連合艦隊〜史上最大の空母艦隊出撃!!〜も昨日から更新再開してます。
週一更新になりますが、良ければ読んでもらえると嬉しいです。
あっちも10年振りの更新です……
アメリカ西岸連邦の成立はアメリカ合衆国に凄まじい衝撃を与えた。アメリカ合衆国が分裂したのである。1861年2月4日に『アメリカ連合国』が結成されて以来、141年振りの分裂であった。前回の分裂はその後内戦である『南北戦争』に発展。しかし今回の分裂は対外戦争に於いて引き起こされたのである。大日本帝国との戦争の筈が、亜細亜条約機構も戦争に参加。しかも世界各国からは見捨てられ、アメリカ合衆国は孤立無援で戦う羽目になった。そして海戦では大日本帝国海軍連合艦隊空母機動部隊に大敗し、グアム島・ミッドウェー島・ハワイ諸島を次々と失陥。遂には独立戦争以来の外国勢力の上陸を許してしまった。カリフォルニア州全域が占領されて大泉総理の降伏要求により、まさかのロッキー山脈以西の全ての州が大日本帝国に降伏する事態になった。そこまではまだ良かったのである。許容範囲内の事態だった。だが事態は急変した。まさかのアメリカ西岸連邦としての独立である。アメリカ合衆国の構成州が降伏では無く、完全に別の国になってしまったのだ。ハワイ州がアメリカ西岸連邦建国に加わらなかったのは、大日本帝国がハワイ諸島を割譲させる為だとアメリカ合衆国政府は判断していた。
アメリカ合衆国はロッキー山脈以西を完全に失う事になってしまった。西海岸の領土が無くなるのは、まるで時計の針が数百年も巻き戻ったかのようであった。アメリカ合衆国のマスコミは『南北戦争以来の危機である。』と騒ぎ立てた。そしてここに至り連邦議会が弾劾に向けて動き出した。弾劾に向けた動きの中心になったのは野党民主党では無く、身内の筈の副大統領であった。アメリカ合衆国での弾劾訴追は下院が過半数の賛成に基づいて訴追し、上院が裁判を行い上院出席議員の3分の2の多数の賛成で弾劾を決定する。弾劾裁判の審理は、通常は上院議長を兼ねる副大統領または上院仮議長が弾劾裁判長としてこれを司るが、大統領が弾劾の対象となっている場合に限っては連邦最高裁長官が弾劾裁判長としてこれを司る事になっている。また上院議員は陪審員としての責務を担う事になる。
弾劾に向けて動き出した副大統領は国務長官を味方に引き入れた。この時の国務長官はアフリカ系アメリカ人で女性初の国務長官であった。前任はアメリカ合衆国国家安全保障問題担当大統領補佐官だったが日米戦争開戦により、国務長官が辞任した為に昇格する形で就任した。辞任した国務長官は湾岸戦争時の統合参謀本部議長であり、大日本帝国軍の実力をまざまざと見せ付けられていた為に断固として開戦に反対した。国務副長官共々に政権の穏健派として事態を沈静化させようとしたが、大統領の意思が強いと分かり国務副長官と同時に辞任した。そして史上初の女性国務長官が誕生したのである。
副大統領はその国務長官を味方にすると、積極的に動き出した。上下両院で過半数を得ている共和党としては単独でも弾劾訴追は可能だった。しかしアメリカ合衆国として国家の意思としての弾劾が必要だとして、副大統領は民主党にも弾劾への賛成を呼び掛けた。民主党としては願ったり叶ったりな事であった。そして協力を得る事が出来た副大統領は、自ら共和党内の意思を統一させる事にした。一部の議員からは『クーデター』だと批判が出たが、副大統領はその言葉を無視した。
党内で弾劾の動きがある事は大統領は気付いていた。しかも副大統領が中心になっている事も。全てを承知で大統領は当初は、成り行きに任せようとした。しかし弾劾という結末を、大統領自身が受け容れる事が出来なかった。そこでかつてウォーターゲート事件当時の大統領と同じ方法を行う事にした。弾劾訴追前の辞任である。2002年10月17日大統領はテレビ演説を行い、自らが大統領職を辞任する事を発表。そして副大統領は即刻就任宣誓を行い、大統領に昇格した。就任宣誓を行った新大統領は早速テレビ演説を行った。
『アメリカ合衆国国民の皆さん、こんばんは。私は前大統領の辞任により、大統領になりました。今は合衆国の危機です。敵は本土に上陸し、ロッキー山脈を越えました。そしてロッキー山脈以西の州が、独立してしまったのです。まさに南北戦争以来の危機です。国家の存亡に関わります。このまま座して滅亡を受け入れる事は出来ません。もはや名誉の問題です。合衆国は必ずや戦争に勝たなければいけません。戦い続けましょう。その為に私はアメリカ軍の総力を挙げて、敵を叩き出す事を命令します。具体的にはヨーロッパに駐留する全軍を本国へ引き揚げます。アフガニスタンにいる部隊も全て引き揚げます。ヨーロッパ諸国には説明を行っており、理解と了承を得ています。徹底的に戦い続けましょう。皆さんに神のご加護を。』
新大統領のテレビ演説を聞いていた世界は衝撃を受けた。まだ戦う気かと。特に大日本帝国の大泉総理が受けた衝撃は大きかった。I3が弾劾の動きがある事を掴むと、陸軍部隊に東進は一時中止せよと命令したのだ。大泉総理は降伏する為に、大統領を弾劾により排除するのだと考えていた。しかし結果は違っていた。まさかの戦争継続である。衝撃を受けて呆然とした大泉総理だが、気を取り直すと怒りを抑えながら命令した。
『陸軍に東進を。海軍と空軍には空襲を。全力で徹底的に行う事を命令します。遠慮はするな。叩き潰せ。』
あまりの剣幕に担当者は震え上がった。