グレートプレーンズ進出
ロッキー山脈を越えた陸軍部隊は補給と整備を行い、
2002年10月15日グレートプレーンズに進出しようとした。
陸軍は常に補給と整備を、行わなければいけなかった。今の所は上陸作戦以後、大規模な陸戦は行われていなかった。だが装甲車輌にとっては移動するだけで負担が大きかった。その為に大日本帝国陸軍以外の機甲部隊の一部車輌は、整備が追い付かず空港に運び大日本帝国空軍の輸送機で本国に送り返した程であった。輸送機で各国の本国に送られた装甲車輌は、本国に残置した機甲部隊の装甲車輌と交換された。そして再び装甲車輌を搭載した輸送機はアメリカ合衆国の空港に降り立ち、各国の機甲部隊に補充された。ロシア連邦陸軍はT-90戦車、中華連邦陸軍は99式戦車、インド陸軍・大韓民国陸軍・インドネシア陸軍・フィリピン陸軍・タイ陸軍・ベトナム陸軍は88式戦車を主力に運用していた。
大日本帝国陸軍は大東亜戦争の敗戦から、後方支援部隊の充実度は世界トップクラスであった。湾岸戦争での派遣ではアメリカ合衆国陸軍が絶賛する程であった。その為に西海岸に上陸して以来、整備と補給は万全に行われていた。むしろ世界で大軍を遠隔地に派遣して補給と整備が万全に行えるのは、大日本帝国とアメリカ合衆国だけであろう。その事は大日本帝国も重々承知の為にロシア連邦を筆頭とする各国陸軍に、補給物資の輸送や提供のみならず輸送機でのピストン輸送も行ったのである。本来なら全く関係無い戦いである。それを亜細亜条約機構に加盟しているとの事で、戦争に参加してくれているのだ。助け合うのは当然であった。
90号線を利用した『玄武部隊』はモンタナ州ビリングスから、80号線を利用した『白虎部隊』はワイオミング州シャイアンから、70号線を利用した『朱雀部隊』はコロラド州デンバーから、それぞれグレートプレーンズに東進した。空軍が連日空爆を行っていたが、ここ数日は整備の為に出撃していなかった。しかし陸軍部隊は臆する事なく前進した。あらからアメリカ合衆国陸軍は蹴散らされており、脅威は低いと思われていた。そして未確認情報ながら中央平原まで防衛線を後退させたと思われていた。I3の諜報活動待ちだが、その情報は正しいと陸軍総指揮官は考えていた。
『ロッキー山脈を越えると、北米大陸の広大な平野が広がっていた。補給と整備を行っている間に総指揮官と私は、部隊を視察しに行く事になった。まずは玄武部隊を視察する事になり、私達は7式汎用ヘリコプターに乗り込んだ。90号線沿いのモンタナ州ビリングスに展開する玄武部隊を訪れた私達は、ロシア連邦陸軍とインド陸軍を視察した。アメリカ合衆国の大地にロシア連邦陸軍のT-90が展開しているのは、冷戦を繰り広げた両国の関係からすれば凄まじい光景であった。インド陸軍はカシミール紛争で戦ってきた歴戦の部隊を派遣してくれていた。ロシア連邦陸軍もインド陸軍も士気が高く、総指揮官への状況報告を行う各指揮官は溌剌としていた。
玄武部隊の視察を終えると次は、70号線沿いのコロラド州デンバーに展開する朱雀部隊を訪れた。中華連邦陸軍・インドネシア陸軍・フィリピン陸軍から構成される朱雀部隊は、凄まじいまでの律儀さではっきり言えば堅苦しさがあった。中華連邦は日中戦争で敗北して以来初の戦争であり、インドネシアとフィリピンは独立以来初の戦争であった。緊張状態にあると判断した総指揮官は、部隊視察をしながら声掛けを怠らなかった。各指揮官も緊張していたが、総指揮官はその緊張を和らげた。そして一通りの視察を終えるときには、緊張状態は目に見えて和らいでいた。中華連邦陸軍の指揮官は99式戦車の初実戦を心待ちにしているようであった。
そうして私達は80号線沿いのワイオミング州シャイアンに展開する白虎部隊に戻って来た。そしてタイ陸軍・大韓民国陸軍・ベトナム陸軍の視察を行った。タイには感謝しか無かった。大東亜戦争でも共にアメリカ合衆国と戦い、そして今回も戦っているのだ。大東亜戦争では兵站補給面での協力だったが、今回は陸軍部隊を派遣しての本格的な協力である。タイ陸軍の指揮官は総指揮官に力強く状況報告を行っていた。ベトナム陸軍はかつてのベトナム戦争の報復の意味も大きかった。ベトナム戦争で枯葉剤を散布され国土を荒廃された事の仕返しが行える事を、ベトナム陸軍指揮官は喜んでいた。大韓民国陸軍は竹島奪還の日韓戦争で敗北して以来、徹底的な対日追従政策を行っていた。亜細亜条約機構成立の為に北朝鮮に侵攻し、南北朝鮮が統一されて国力が増大してもなお、大日本帝国に付き従う道を選んだ。大韓民国陸軍指揮官は総指揮官に、必ずアメリカを打倒する事を誓います、と言い切った。
最後に自分の指揮する大日本帝国陸軍を視察した後に総指揮官は、私に一言呟いた。「皆連れて帰らないといけません。」その言葉は私の心に響いた。そして補給整備が終わると、2002年10月15日総指揮官はグレートプレーンズへの進出を命令した。しかしその瞬間に大日本帝国本国から緊急命令が大泉総理の名で下された。[東進は一時中止せよ]最高指揮官からの命令により、陸軍部隊は東進を一時中止する事になった。』
広瀬由梨絵著
『新世紀日米戦争』より一部抜粋
何が起きたのでしょうか。
次回判明します。