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新世紀日米戦争  作者: 007
第4章 崩壊
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ロッキー山脈越え

2002年10月1日総指揮官の命令により、全部隊がロッキー山脈越えを開始した。ロッキー山脈を越える州間高速道路は何本か存在する。アメリカ領内で最も北を走るロッキー越えの州間高速道路はワシントン州シアトルからマサチューセッツ州ボストンまでを結ぶ90号線であり、アイダホ州のコー・ダリーンからモンタナ州のミズーラ、ボーズマン、ビリングスを通って山脈を抜ける。ロッキーの中央部を抜けるのがサンフランシスコとニューヨークを結ぶ80号線であり、ロッキーの西麓にあたるソルトレイクシティからワイオミング州のエバンストン、ロックスプリングス、ララミーを通って東麓のシャイアンへ抜ける。その南を走るのが70号線で、ユタ州の中央部からコロラド州のグランドジャンクションを通り、東麓のデンバーに抜ける。何本かのロッキー山脈を越える鉄道が敷設されているが、その鉄道は貨物輸送が主体となっている。

ロシア連邦陸軍とインド陸軍の『玄武部隊』は90号線から、大日本帝国陸軍とタイ陸軍・大韓民国陸軍・ベトナム陸軍の『白虎部隊』は80号線から、中華連邦陸軍とインドネシア陸軍・フィリピン陸軍の『朱雀部隊』は70号線から、それぞれロッキー山脈越えを開始した。貨物鉄道は補給物資を満載して、東進させる事になった。西海岸の空軍基地や空港に展開した空軍は、戦闘空中哨戒を行っており圧倒的な航空優勢を確保していた。もはやアメリカ合衆国本土でありながら、アメリカ空軍は飛来すらしていなかった。

それは国防総省からの命令で、ロッキー山脈を越えさせてグレートプレーンズにて迎撃作戦を行う事を決定した。グレートプレーンズを第1防衛線とし、中央平原を第2防衛線、アパラチア山脈を最終防衛線としていた。しかしグレートプレーンズは防衛線と言いながらも、陸軍部隊しか展開させられず即席の地雷原を作るのが精一杯であった。国防総省は中央平原とアパラチア山脈の防衛強化に全力をあげていた。この2ヶ所は未だ距離がある為に、時間的余裕がありアメリカ合衆国中からありとあらゆる資源を投入して防衛線を作り上げていた。しかし必死になって作業を続けていてもその全ては、宇宙空間から偵察衛星で捕捉されていた。



『総指揮官に同行していた私は、ユタ州ソルトレイクシティに位置していた。白虎部隊と共に80号線を東進してロッキー山脈を超える事になっていた。ここに至るまで数多くのアメリカ国民と出会って来たが、偶然なのか優しい人物ばかりであった。ネバダ州を移動中に出会った男性が特に私には印象的だった。ジャックと名乗る中年の男性は、私達に何処まで行くのか尋ねてきた。それに私は、ワシントンDCまでですかねアメリカ合衆国が降伏すれば途中で終われますが、そう答えた。するとジャックは「それじゃあワシントンDCまで行くハメになるな。」と笑いながら言い切った。困惑する私に、「まあ無理せずに頑張りな。俺はテレビを見ながら見守るぜ。」と一方的に言うとその場を後にした。あまりにも一方的な言葉に私は暫し呆然とした。気を取り直して総指揮官の天幕に戻り、事の次第を伝えると総指揮官は笑いだした。そして一通り笑い終わると口を開いた。「それがアメリカ合衆国の本質かもしれませんよ。アメリカ合衆国という合衆国の言葉がややこしいですが、多くの人や物が集まる[合衆]では無く、正しくは州が集まった[合州国]と言うべきです。我が国で言えば江戸時代が似たような形ですかね。あの時は各藩に権限があり、それを束ねるのが江戸幕府将軍の役目でした。アメリカも州の権限が強く州自体が独立国家のような物で、その州が集まりアメリカを形成し、州を束ねる連邦政府があるのです。大泉総理の呼び掛けにロッキー山脈以西の州が降伏を表面したのも、州としての権限が強く独自性がある為です。そして我が国に降伏し占領されてる以上は、もはや連邦政府の事は知ったことではない。ジャックはそういう心境なのでしょう。」総指揮官の言葉に私は納得した。国が違えば制度や風習が違うのは当たり前だが、ここまで違うものなのかと見せ付けられた思いだった。総指揮官の天幕ではその後、偵察衛星の捕捉した偵察画像を確認しながらの作戦会議となった。偵察衛星は中央平原とアパラチア山脈で防衛線構築が行われているのを確認していた。しかも中央平原には塹壕が掘られており、トーチカの構築も行われていた。塹壕とトーチカという前世紀の戦いを彷彿とさせる防衛線に、総指揮官以下幹部陣は驚いていた。何としても侵攻を食い止めるという、アメリカ合衆国の覚悟が現れていたからである。しかし総指揮官は無慈悲にも空軍に対して徹底的な空爆を要請すると断言した。その言葉には私も大いに同意した。何も同じ土俵で戦う必要は無いのである。被害が軽減出来るならそれに越したことはない。空爆の要請を空軍に対して行うと、総指揮官は東進の命令を下した。』

広瀬由梨絵著

『新世紀日米戦争』より一部抜粋

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