ハワイ陥落
88式戦車とM1A1エイブラムス戦車が遂に激突した。
88式戦車は72式戦車の後継として開発された、第3世代主力戦車である。製造は車体と砲塔を三菱重工が行い、120ミリ滑腔砲を日本製鋼所が行っている。1991年の湾岸戦争では生産が追いつかず72式戦車も派遣されたが、その後1994年には全機甲部隊に88式戦車は配備された。冷戦末期に開発された戦車であり、旧ソ連の機甲部隊を圧倒する事が最大の目的とされた。敗戦後復活した大日本帝国陸軍は本土防衛陸軍でありながら、どちらかというと外征陸軍としての能力が高い陸軍として整備された。その為に88式戦車も国内運用よりも、旧ソ連を攻める時の大陸での運用が想定されていた。重量60トンに達する巨大な戦車で正式採用後は、大日本帝国全土の道路・橋が耐用工事を行う事になった。
かつて湾岸戦争でイラク軍の旧ソ連戦車を相手に、肩を並べて戦った2種類の戦車は敵味方に分かれて壮絶な砲撃戦を開始した。それぞれが放った主砲は、それぞれの前面装甲が見事に防いだ。弾種はそれぞれAPFSDSを使用した。M1A1エイブラムスのAPFSDSは弾芯には劣化ウランを使用し、装甲貫徹力を高めている。しかしそれぞれの前面装甲は防御力を発揮した。
88式戦車は車体と砲塔の全面が重金属の劣化ウランを用いた分厚い装甲に守られており、その表面にまずは炭素繊維やセラミックスを用いた複合装甲を装備している。セラミックは硬度があるぶん割れやすい素材だが、APFSDSなどのように、セラミックが割れる速度より高速で衝突してくる物体に対してはその硬度を防御力に転換でき、劣化ウランなどの重金属装甲よりも軽量化することができる。更に複合装甲の表面に『結晶粒微細化鋼板』と呼ばれる新型の鋼板が採用されている。この鋼板は多結晶体である鋼板内の結晶粒を微細化することで、結晶粒界の面積を増大させて敵弾による応力を分散させている。また粒界面積の増大は粒界に偏在する不純元素の濃度を薄め、敵弾命中によるへき開型の亀裂伝播を粒界が阻止する効果がある。これにより防御力を維持したまま軽量化を図っている。88式戦車は実質的に3層にも及ぶ重装甲を身に纏った、イスラエルのメルカバ以上の防御力を有しているのである。複合装甲はモジュール装甲にされており、着脱が可能で破損時の交換や新型装甲への換装が容易であり、結晶粒微細化鋼板も取り外しが容易である。その為に非常に整備性が高くよほどの破損でない限りは、現場の整備部隊で修理可能である。
対するM1A1エイブラムスは全面に劣化ウラン装甲を有しており、諸外国に比べると重装甲を誇っていた。
88式戦車の発射したAPFSDSはM1A1エイブラムスの劣化ウラン装甲に防がれたが、装甲自体には損傷を与えていた。M1A1エイブラムスの発射したAPFSDSは88式戦車の表面にある結晶粒微細化鋼板に損傷を与えていた。それぞれの初弾は相手戦車を撃破する事は出来なかった。
しかし88式戦車は3層装甲の1層目が破損しただけであり、M1A1エイブラムスとの損傷度合いは大きく違っていた。その為に88式戦車が発射した2射目のAPFSDSはM1A1エイブラムスを多数撃破していた。それに比してM1A1エイブラムスの発射したAPFSDSは未だに、88式戦車の重装甲を撃ち抜けずにいた。その間も88式戦車の射撃は続き、M1A1エイブラムスは撃破され続けた。堪らずM1A1エイブラムス隊はAH64アパッチ戦闘ヘリコプターに救援を要請。しかし戦場に近付いた瞬間に85式艦上戦闘攻撃機烈風の発射した99式空対空ミサイルに次々と撃墜された。逆に88式戦車隊の要請した93式戦闘ヘリコプターは悠々とM1A1エイブラムスに接近すると、9式空対地ミサイルを発射。M1A1エイブラムスに命中した9式空対地ミサイルは次々と撃破していった。その後は一方的な戦いとなった。M1A1エイブラムスの発射するAPFSDSは88式戦車を撃破出来ないが、88式戦車の発射するAPFSDSはM1A1エイブラムスを撃破出来るのである。日米戦車戦は大日本帝国の圧勝に終わった。
戦車戦が終結すると大日本帝国本土を飛び立った空軍の、65式大型輸送機・88式大型輸送機・60式中型輸送機が大挙飛来。陸軍の第1空挺師団と第2空挺師団を空挺降下させた。第1空挺師団はヒッカム空軍基地の制圧、第2空挺師団はパールハーバー海軍基地の制圧が目的であった。かつて第二次世界大戦で連合軍が実行したマーケットガーデン作戦は、空挺部隊と機甲部隊の連携が取れなかった為に失敗した。それに比べると今回のハワイ空挺降下作戦は師団規模の空挺降下ながら、海軍連合艦隊空母機動部隊による航空支援と海兵隊海兵両用作戦部隊による地上支援で、問題無く進行した。これにより両基地は事前の懸念事項であった、破壊工作を行わせる暇も無く制圧。残存するアメリカ合衆国陸軍と海兵隊の部隊は、降伏を決意。大日本帝国海兵隊海兵両用作戦部隊に降伏を伝えた。降伏を受け入れた海兵両用作戦部隊は連合艦隊空母機動部隊に連絡。連絡を受けた連合艦隊空母機動部隊は国防省国家軍事指揮センターと、首相官邸危機管理センターに連絡した。
アメリカ合衆国ハワイ諸島は、大日本帝国により占領された。