艦載機攻撃
連合艦隊空母機動部隊の艦載機は、ズタボロになっているアメリカ合衆国海軍空母戦闘群に殺到した。85式艦上戦闘攻撃機烈風と83式艦上攻撃機流星改の大編隊は、アメリカ合衆国海軍空母戦闘群をフライパスした。その悠然と飛行する様に、迎撃を行える装備はもはや無かった。89式巡航ミサイルの攻撃を迎撃した時に、弾切れとなるか破壊されており、破壊され無くても損傷を受けており迎撃を行えなかった。それが分かり切っていた為の行動だが、ある種のパフォーマンス的な行動になった。大きく旋回してきた連合艦隊空母機動部隊の大編隊は、目標を捕捉すると搭載していた対艦ミサイルを発射した。91式空対艦ミサイルは射程200キロで250キロの弾頭を有し、マッハ2で飛翔する。その対艦ミサイルはまだ沈んでいなかった、アメリカ合衆国海軍空母戦闘群の艦艇全てを目標に発射された。確実に全てを撃沈するという、連合艦隊空母機動部隊の意思の現れであった。
狙われた艦艇は回避行動を始めたが、マッハ2のミサイル相手には無駄だった。次々と91式空対艦ミサイルは命中し、爆炎を吹き上げた。壮絶な光景は烈風や流星改のガンカメラにて、詳細に撮影されていた。アメリカ合衆国が第二次世界大戦後に、『地球上最強の戦闘集団』と位置付けたのが、アメリカ合衆国海軍空母戦闘群である。しかしそれは湾岸戦争で連合艦隊空母機動部隊に比べて、圧倒的に打撃力不足が露呈した。それ以来連合艦隊空母機動部隊に対抗するべく整備されたが、力の差は埋められなかった。既にエンタープライズが轟沈し、原子力空母が不沈艦で無くなった今、更に残りのニミッツ級原子力空母が沈もうとしていた。迎撃する手段を失った艦艇達は、情け容赦無い攻撃をただただ受け続けた。
『統合空母戦闘指揮所でガンカメラからの映像を大型モニターで見ていた私は、衝撃的な光景に度肝を抜かれた。アメリカ合衆国海軍の原子力空母が、次々と撃沈されているのだ。その光景は凄まじいものであった。不沈艦と言われた原子力空母が沈んでいるのだ。あまりに私が大型モニターを食い入るように見ていたので、司令官は笑みを浮かべながら話しかけてきた。「当然の結果ですね。アメリカ合衆国海軍の空母戦闘群は艦艇数こそ私達の空母機動部隊より多いですが、想定する迎撃体制が全く違います。私達は85式対空ミサイルによる迎撃から始まり、長門級の25センチ砲による長射程での迎撃を行います。それ以後は127ミリ砲や76ミリ砲による迎撃を行いますが、各艦が装備する砲塔数自体が多いのです。アメリカ合衆国海軍は精々砲塔は1基だけで、タイコンデロガ級が唯一2基だけです。私達は空母にさえも砲塔を装備しているのです。艦隊自体が圧倒的な防空能力を有するという、私達連合艦隊だけのドクトリンの結果です。それに対してアメリカ合衆国海軍は艦載機による防空を重視しています。今回は私達を恐れるあまりに艦載機での全力攻撃を仕掛けてきました。その結果は広瀬さんもご覧になった通りです。そしてその後の反撃でF/A-18E/F隊は壊滅し、私達の巡航ミサイル攻撃を空母戦闘群は受ける事になったのです。その迎撃はお粗末で、大量の艦艇が撃沈しました。その理由は先程話した通りです。そして私達の艦載機が仕上げを行う事になったのです。まあ空母戦闘群は全滅するのは分かり切っていた事です。自らのドクトリンを間違えた結果なので、それは自業自得でしょう。」自信満々に語った司令官に私は苦笑いを浮かべるしかなかった。司令官には空母戦闘群の攻撃型原潜を撃沈した報告が相次いでいた。烈風と流星改をカタパルト発艦させた後に、対潜哨戒機をカタパルト発艦させ、巡洋艦や駆逐艦搭載の哨戒ヘリコプターも発艦され、攻撃型原潜狩りが大々的に行われた。F/A-18E/F隊の攻撃に合わせて行われた空母戦闘群の攻撃型原潜による雷撃は、苦もなく迎撃されていた。水中警戒を怠っていなかった為に早々に発見された魚雷は、各艦の搭載する短魚雷で迎撃された。連合艦隊空母機動部隊に随伴していた攻撃型原子力潜水艦親潮級が反撃を開始しており、F/A-18E/F隊を蹴散らした後に対潜哨戒機と哨戒ヘリコプターを発艦させた。司令官の言葉通り、空母戦闘群は全滅する事になった。それも一方的に。連合艦隊空母機動部隊の被害はミサイル打撃巡洋艦長門が対艦ミサイルの迎撃で、至近弾的な軽微な損害を受けただけであった。
そんな中へ国家軍事指揮センターから連絡が入った。グアム島攻略に向かった強襲揚陸艦を中心とした水陸両用部隊が、上陸作戦を開始したとの内容であった。更にはパラオに配備されていた空軍の89式戦闘爆撃機紫電改もグアム島攻撃に参加し、攻撃型原子力潜水艦親潮級もVLSから89式巡航ミサイルを発射していた。グアム島のアンダーセン空軍基地は壊滅状態になった。グアム島の陥落は時間の問題であった。』
広瀬由梨絵著
『新世紀日米戦争』より一部抜粋
アメリカ合衆国海軍の空母戦闘群が8個も壊滅しました。次回はグアム島攻防戦からです。