空母決戦
アメリカ合衆国海軍空母戦闘群の攻撃を受ける事になった、大日本帝国海軍連合艦隊空母機動部隊は迎撃体制を整えていた。ジョージ・ワシントンに座乗する最先任司令官は8隻の原子力空母全てに出撃を命じていた。連合艦隊空母機動部隊を恐れる為に、全力で攻撃しないと勝てないという判断であった。各原子力空母を発艦したF/A-18E/Fは、対艦ミサイルを満載していた。EA-6Bも出撃し、連合艦隊空母機動部隊への電波妨害を試みた。搭載する対レーダーミサイルを発射したものの、早々に迎撃を受けて失敗している。
覚悟を決めたF/A-18E/F隊は搭載してきた対艦ミサイルを全弾発射した。その対艦ミサイル攻撃を受けて、全空母機動部隊臨時旗艦となっていたイージス原子力空母大和はミサイル迎撃の割り当てを行いながら、『全火器自動射撃』と言うイージスシステムによる全自動迎撃とデータリンクを開始する。そしてイージスシステムは解き放たれた怪獣となり、各艦のVLSから好きなだけの85式対空ミサイルを放ち始めた。85式対空ミサイルは、イージスシステムの命じるままに、敵航空機もしくはミサイル1発に対して、撃破率を高める2発発射を開始。一部のミサイルは、ミサイルを発射した母機を狙って遠くに向けて放たれたりもした。2発同時照準による撃破率は、99%にも達する。この結果連合艦隊空母機動部隊の艦艇の上は、まるで活火山のように火炎を吹き上げ続けた。アメリカ合衆国海軍空母戦闘群のF/A-18E/F隊が放ったミサイル数は1600発以上に及んだ。このうち70%以上に当たる約1100発が正常に機能を発揮。しかし正常に機能を発揮できなかった内の約半数は、取りあえずは発射には成功していたので、イージスシステムに標的認定された。つまりイージスシステムは、約1200発のミサイルを迎撃した事になる。また遠方の敵航空機に対しても、射程距離内を飛行していた約40機に対して、80発のミサイルが発射された。結果、合計で1300発近い長距離対空ミサイルが、ごく短時間の間に発射されたことになる。硫黄島沖合は、無数のミサイルが放つ飛翔の火炎と爆発の閃光で彩られた。壮絶な光景をテレビクルーは生中継で余すところなく捉えていた。
しかし1000発以上という旧ソ連でも成し得なかった人類史上最大の飽和攻撃は、行った側も受けた側も未曾有の光景であった。旧ソ連の飽和攻撃を防ぐべく日米共同開発したイージスシステムは、開発した両国が戦争状態になる悲劇となっていたが、システムは十分に性能を発揮した。しかしそれでも迎撃は完全ではなく、30%程度の対艦ミサイルが今までにない85式対空ミサイルの濃密な迎撃を抜けてきた。これは対艦ミサイルが低空を飛行するため捕捉が難しい事が最大の問題であり、あまりににも多数のミサイルを発射した為に、どうしても迎撃の漏れが発生してしまったのであった。だが撃ち漏らしたミサイルが近付いてきても、連合艦隊空母機動部隊は屈する事は無かった。イージスシステムはこのような場面でも威力を発揮するのであった。しかも連合艦隊空母機動部隊は敵ミサイルが85式対空ミサイルによる、中長距離での迎撃を抜けてくる事を前提にしていた。まずは20キロにまで敵対艦ミサイルが迫ってくると、ミサイル打撃巡洋艦長門級の25センチ連装砲が火蓋を切った。大型砲なので発射速度の遅さが大きな欠点だとされるが、その分射程距離が長いので、遠距離のミサイルを迎撃できた。次に各艦が装備する127ミリ砲が火を噴き、25センチ連装砲より早い速射性能を見せながら迎撃を開始。それをくぐり抜けた対艦ミサイルは速射性能の高い76ミリ砲が機関砲並の射撃を開始した。更にそれをくぐり抜けると、7式短距離対空ミサイルと5式近距離対空ミサイルが迎撃を開始。これを越えられるとCIWSの出番となるが、この段階でも85式対空ミサイルの発射と迎撃は続いていた。この即応性の高さこそが、イージスシステムの神髄発揮だった。この距離まで詰められてしまうと、フォークランド紛争のイギリス艦隊のように迎撃ができなくなって、なけなしの機銃を撃つしかできなくなり、少数の敵の貧弱な攻撃に対しても大損害を受けてしまう事になる。だが、イージスシステムを備え戦訓を踏まえた連合艦隊空母機動部隊に死角は無かった。この段階でも全ての対艦ミサイルに対して、適切な迎撃が行われた。それでも100%の迎撃とはいかず、標的としても大きく空母を守るべく前衛を務めていたミサイル打撃巡洋艦長門は、CIWSの射撃も開始した。CIWSもフォークランド紛争には無かったもので、従来の機銃と違い的確にそして素早く敵ミサイルを迎撃した。最終的に艦隊まで到達して長門のCIWSの迎撃を受けたミサイルは2発。1000発以上のミサイルで艦隊まで、到達する事が出来たのが僅か2発であった。そして2発とも見事に撃破されたのだが、うち1発は至近弾と同じ状態になった。CIWSは距離1000メートルを切ったところで、レーザービームのように発射された。20ミリ弾に切り裂かれたミサイルだったが火薬と残されていたロケット燃料が、バラバラになりさらには炸裂、燃焼しつつ長門の右舷側面に降り注いだ。この為に長門は右舷の前部から中央部の前側にかけて、至近弾が被弾した状態となった。そして火薬や残燃料により、一瞬長門が爆発したようにすら見えた。しかし長門は爆煙の中から、悠然と現れる。その様は、第二次世界大戦中の戦闘を彷彿とさせる情景だった。だが流石に無傷とはいかず、右舷前の76ミリ砲1門が破損し、右舷甲板各所も事実上の被弾で無数の小さな傷がついた。だがその他武装や船体装甲は無傷だった。艦橋構造物も、ごく一部が少し焦げた程度で被害を免れていた。前部VLSもすでに射撃を終えて装甲シャッターを下ろしていた事もあり、艦全体としては特に大きな損害を受けることも無かった。そして迎撃の様子と長門の被弾、そして被弾後の長門の健在ぶりは、空母に乗艦するテレビクルーにとってこれ以上ないぐらいの映像となった。
アメリカ合衆国海軍空母戦闘群の攻撃を完全に防いだ連合艦隊空母機動部隊は、唖然とするF/A-18E/F隊のパイロットを尻目に猛然と反撃を開始した。
政府方針通りに、アメリカに先制攻撃を行わせました。次回は反撃です。
ミサイルの数ですが、8隻のアメリカ海軍原子力空母が各50機のF/A-18E/Fを搭載しています。1機辺り4発の対艦ミサイルを搭載したとして1600発になります。