表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新世紀日米戦争  作者: 007
第1章 対立
12/79

実行犯逮捕

2001年9月21日


戒厳令が全土で発令されている大日本帝国で、遂にテロ実行犯の逮捕が行われた。敗戦後2度目の戒厳令により国鉄主要駅・空港・港・主要都市には陸軍が戦車や歩兵戦闘車も投入して展開していた。それだけで無く空軍の早期警戒管制機や陸軍の戦闘ヘリコプターも縦横無尽に飛び回り、示威行為を続けていた。I3が生贄として用意した、かねてより調査していた危険人物の情報は既に陸軍憲兵隊と警察に伝えられている。

戒厳令下では戦時や自然災害、暴動等の緊急事態において兵力をもって国内外の一地域あるいは全国を警備する場合に、憲法・法律の一部の効力を停止し、行政権・司法権の一部ないし全部を軍隊の指揮下に移行することになる。その為に警察権より軍隊が優先され、陸軍憲兵隊が主で警察が従という形となった。

気の毒なのは自作自演テロの犯人にされ、地下鉄サリン事件を実行したカルト集団の残党と呼ばれる事になった人物達である。

6年前に地下鉄サリン事件を実行したカルト集団は、その時の捜査により徹底的に壊滅させられていた。敗戦後初の戒厳令発令により陸軍憲兵隊を中心に大規模な逮捕劇が行われた。特にカルト集団教祖以下幹部陣が立て籠もった教団施設へは、憲兵隊だけで無く陸軍機械化歩兵部隊も投入され、過剰な示威行為下で逮捕劇が繰り広げられた。テレビに生中継されての逮捕劇だが陸軍機械化歩兵部隊が展開し戦車や歩兵戦闘車が示威行為を続け、上空では戦闘ヘリコプターまで舞う中の一連の報道番組は驚異的な視聴率を叩き出した。

そして逮捕された教祖以下幹部陣は『国家反逆罪』『外患誘致罪』『大逆罪』等で起訴、死刑判決が下され死刑は即日執行された。戒厳令下により司法権が全て軍に移行された為に即日裁判で即日判決、即日執行となった。幹部より下のカルト集団関係者や一般信者達も『共謀罪』が適用され、軒並みそれこそ根こそぎ逮捕されている。その為関係者が改称して組織を存続させるという事は無くなった。その前提である為に神崎I3長官は自作自演テロの犯人にカルト集団の名前を使う事にしたのである。

I3が調査していた危険人物はそれぞれが特殊技能に優れ思想面でも不適格な者達であった。I3としては問題になる前に対処する必要がある者達ばかりであった為、自作自演テロの生贄には最適だった。そんな人物達の所へ、陸軍憲兵隊が警察を引き連れてやってくるのである。しかも逮捕された後は二度とその人物達は表舞台に出る事は無かった。

カルト集団の残党で最悪なテロを引き起こした凶悪犯、この印象がテレビ・ラジオ・新聞あらゆる媒体を通して印象操作された。テレビ局各社は更に6年前のカルト集団逮捕劇と同じく生中継で全ての模様を映し出していた。I3や陸軍憲兵隊・警察からの発表だけで全ての犯人像は創り上げられた。そして逮捕された危険人物達も、『国家反逆罪』『外患誘致罪』『大逆罪』で起訴、即日裁判で死刑判決が下され、即日執行された。戒厳令下に於けるテロリストの逮捕と即日裁判による死刑執行に、称賛の声を送ったのはアメリカ合衆国国民であった。アメリカ合衆国では911テロの後速やかに非常事態宣言が出されたが、大日本帝国の戒厳令とは大きく違っていた。非常事態宣言とは自然災害・感染症のパンデミック・原子力事故などの災害・戦争・テロ・内乱・騒乱などの、健康・生命・財産・環境などに危険が差し迫っている緊急事態に際し、国・地方政府などが法令などに基づいて特殊な権限を発動するために、或いは、広く一般・公衆に注意を促すために、そのような事態を布告・宣言することである。措置には、警察・軍隊の動員、公共財の徴発、緊急命令や法律に優越する政令の発布、憲法上の人権保障を停止し令状によらない逮捕・家宅捜索などの許容の他、報道や集会の自由など自由権の制限が有り得る。

同様の事態において「国の立法、司法、行政という統治権の一部または全部を軍事に移管すること」を「戒厳」という。これにより非常事態宣言より戒厳令の方が更に厳しい処置になる事となる。それを行った大日本帝国に対してアメリカ合衆国国民は称賛し、非常事態宣言を出しておきながら未だに犯人確保が出来ていないアメリカ合衆国政府の行動を非難したのである。地理的要因により国内にいる犯人の確保と、実行犯は自爆テロで死亡しテロリストの組織は遠い外国にいるとなると、早急な対応が取れないアメリカ合衆国政府には理不尽な非難といえるだろう。国内から突き上げられる事になったアメリカ合衆国政府を大日本帝国以下亜細亜条約機構加盟国や、亜細亜・中東・アフリカ各国は自業自得と捉えた。濡れ衣で日露両国を非難しておきながら、国民から突き上げられる事になった一連の経緯は、確かに自業自得といえるだろう。

犯人の死刑が執行されたと聞いて安心したのは、大泉総理・神崎I3長官・榊原国防大臣・宮本軍令部総長の4人である。4人は史上最大規模の自作自演行為の共謀者として一生秘密を共有する事になった。もし誰かが密告しても共謀した事実に変わりはないので自分達にも『国家反逆罪』『外患誘致罪』『大逆罪』が適用される事になる。そうならない為にも4人は秘密にし続ける事しか出来ないのである。



午後18時

首相官邸1階記者会見場


テロリスト実行犯の逮捕・死刑執行を受け大泉総理は緊急記者会見を行った。


「まずは今回のテロ事件で犠牲となった皆様に国民を代表して、謹んで哀悼の言葉を捧げます。そしてテロ事件で犠牲となった皆様に国民を代表して、実行犯は逮捕され正義の鉄槌が下った事をご報告させて頂きます。

この度のテロは帝国への挑戦であります。6年前の地下鉄サリン事件に於いてカルト集団は壊滅した筈でした。教祖以下幹部陣は死刑となり、信者達も共謀罪により根こそぎ逮捕しました。それにも関わらずカルト集団の残党はいたのです。私達は再びカルト集団の攻撃を受けてしまいました。テロの実行犯は逮捕し死刑を執行しましたが、過ちを繰り返すわけにはいきません。その為、戒厳令は更に無期限での延長を宣言します。陸軍憲兵隊と警察には更に危険人物の捜査と逮捕を、I3をはじめとする帝国の情報機関も帝国のテロリスト捜査に全力をあげるように命じました。

私達は断固として今回のテロには屈しません。大日本帝国は二度と負ける訳にはいかないのです。戒厳令の無期限延長により国民の皆様にはご迷惑をお掛けしますが、何卒ご理解頂くようにお願い致します。帝国の非常事態に際しては法律・憲法の部分的効力の停止、軍への一部権限委譲は致し方ない事であります。ご安心ください。何もやましい事が無ければ憲兵隊や警察が乗り込む事はありません。テロリストが掃討され帝国の治安が回復された時には戒厳令は解除されます。もう暫らくのご辛抱を宜しくお願いします。それでは会議がありますので、失礼します。」


大泉総理はそう言うと記者会見を終了させた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ