第九話 破壊神
新年あけましておめでとうございます。
さて、また一年終わってしまったなって感じはしますが、今年もいい年でありますようにと願う金平です。
ハルトが負傷してから数週間が経った。その間ハルトは怪我の専念しながら、これからのことを考えていた。自分はこれからどうしたいのか、そんなことを考えていた。
ハルトの目的は彼女を救うこと。このままでは世界の敵になってしまうかもしれない彼女を救い出すこと。そのためには送還術を完成させる必要がある。
けれど、ハルトには送還術を完成させるための目処が全くと言っていいほど立っていなかった。新しい魔法を作るということは世界の理を歪めること。
魔法というものがありながら、この世界には理がある。新しい魔法を作り出すのにはかなりの代償が必要になるということ。
そしてそれは簡単に作り出せるものではないこと。
ハルトは考えることを止めた。
◇◇◇◇
当初の予定通りアイムッシュの近くまで辿り着いたハルトは、クズハに礼を言った。
「道案内してくれて助かった。軍団に所属することは出来ないが、何かあれば言ってくれ。それなりに助けてやるよ」
「ハルトが助けてくれるのならそれは万人に匹敵するな。ガロフロントで何をするのか知らないが、あまり目立つ行動を避けるようにした方がいいぞ。これは友人として忠告だ」
そしてこの町では忌子は嫌われているとも付け加えた。
「なるほど、道理で」
ハルトはアイムッシュに入る寸前門番と二言三言会話をしたが、あまりいい印象ではなかったが、どうしてそんなことになったのかを理解した。
「この町には『破壊神』と呼ばれる傭兵がいる。そいつも忌子でな……何かあればそいつを頼るのもいいかもしれない。ただ、強い奴にしか興味のない奴だから強さを示す必要があるけど」
「それはそれで分かりやすい」
『パパは強いですから問題ないです』
「強さと言っても暴力だけを強さとは言わないよ、ナージャには分からないことかもだけど、心の強さっていうのも人間にはあるんだ。『破壊神』が何を強さとするのかは知らないけどね」
ハルトは強さを想いの強さだと考えている。何を想い、そのために必要なものを手に入れる貪欲さこそ強さだと考えている。
強さの定義とは難しいものである。
「それはさておき、ここでの登録を済ませてしまおう」
『了解です、パパ』
◇◇◇◇ ガロフロントギルド支部 1F
「忌子ですか……まぁ、仕事ですから登録させますけど」
「随分嫌われたものだな。仕方ないことといえばそうだけど。露骨に態度に出すのはどうかと思うよ。それに『破壊神』だって忌子って聞くけど」
「彼はこの町の英雄ですから英雄に忌子など関係ありません」
受付嬢は頬を赤く染め、そう答えた。
「なるほど、英雄になど興味はないから仕事をくれ。どんな仕事でも構わない、あんたが忌子を嫌って理不尽な仕事を渡してこようと俺はそれを速やかに遂行しよう。どうだ?」
「態度が悪いですね。ギルドの職員を敵に回すと早死にしますよ」
「悪いが、俺はまだ死ぬわけにはいかないんでね。最低でもあと7年は」
「?」
受付嬢は怪訝そうな顔をしてこちらを見ているが、ハルトは何かに気付き後方へ飛ぶ。
その直後にハルトがいた場所の床が大きく削られた。
「へぇ……俺の攻撃に気付くなんてな。これでも限界まで殺気を殺したつもりだったんだが」
「殺気は確かに消えていたが、気配までは消しきれていない。というより俺には微弱な電波まで見えている。その電波が危険信号だったからな」
「面白れぇ。一応名乗れ」
「ハルトだ」
「覚えてたぜ。ま、新しい忌子が来たって報告が届いたから様子を見に来たんだが、どうやら今回は当たりのようだな」
男は楽しそうに笑った。
「そういうあんたは?」
「俺は『破壊神』の名でこの仕事をやらせてもらっている。グラッシュ・カイゼルだ、よろしくな新入り」
グラッシュはそう言って右手を差し出した。
「よろしく。俺は召喚魔法士ハルト」
「【召喚魔法】を使うのか。面白いな……なら同じように名乗るとするか【破壊魔法】のグラッシュだ」
グラッシュの使う魔法【破壊魔法】がどんな魔法なのか実際にみたわけではないために効力を理解することは出来なかったが名前からして何かを破壊する魔法なのだろう。
「暇なんだろ、俺と狩りに行かないか?」
「狩り?」
そう言ったグラッシュは一枚の依頼書を取り出し、それをハルトに手渡しした。
「……なるほど」
狩りの対象が対象だっただけにハルトはどこか遠くを見ながら死ぬかもしれないと思った。
読了ありがとうございます。
次回は第十話『強敵』です。
ガロフロントで英雄扱いを受けているグラッシュと名乗る青年と出会ったハルトは成り行きで一緒に討伐任務に出ることなる。
そこで目にしたものは……。




