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Attri-tY  作者: ゆきながれ
見つめるべきは、共通よりも個性であった
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氷点火山 21





相変わらず日差しが強い。紫外線は夏より春のほうが強いんだとか聞いたことがあるが、体感的には春など夏の足元にも及ばない。及んでくれても困るし、逆に夏のほうが春に合わせてやるべきだ。今年の夏は特に頑張りすぎている、もっと怠けてくれてもいいのに。


「じゃないと、暑さでこっちが怠けそうだ……」


小声とはいえ独り言がこぼれ、巡は我に返った。うるさいほどのセミの鳴き声のおかげで人通りが多いにも拘らず誰にも聞かれずに済んだらしい。あまりの暑さに頭のなかでの考えと発言の境界がなくなりかけている、目的地についたらまずは飲み物を調達するべきだろう。毎年熱中症患者数が報道されるのを見ても大した関心は向けないのだが、どうやら今年は本当に他人事では済みそうにない。

宮前の住む都心と比べれば空も広く、田舎者の巡からすれば歩きやすい。人は多いが駅から離れていくに連れて徐々に減りつつあった。この道は、つい最近も一人で通ったことがある。アイツの決勝戦を見にこの道を歩き、次の角を右に曲がった。ただ今日は違う、ここを曲がらずに通り過ぎ、少し歩いたところで左に曲がる。そうすると大会会場並みに大きな目的地に辿り着く。


「……え、なにこれ」


駅から遠ざかるほどに人が少なくなってきていたのは気のせいだったのか。巡は目の前の恐ろしい人混みを目にして両手でまぶたをこすりたくなった。女性が多いだろうか、入り口から溢れんばかりに殺到しているのを警備員数人が抑えようとしているのか、整理しようとしているのか、落ち着かせるところからとりかかっているのか。


「そんなに人気だったのか、氷室のやつは」


しかしコレでは巡が介入する余地がない。そんなに労力を使うほど遠出でもなかったが、せっかく訪れたからにはしっかり見舞いをしたいのだが。




――氷室秦vs.榎田陸、能力部大会決勝戦の結果はノックの反則負けとなった。勝利条件のポイントを大幅に超過したあのサドンデスともいえる試合の最後で、ノックは勝利したかに思えた。観客も、宮前や浩仁、水瀬までも一度はノックが勝ったと思い込んだし、まさか氷室が負けるだなんて、といった空気も会場に漂った。だがその直後、爆炎の中から姿を現したのは両腕と肋骨数カ所を骨折、右肩から胸部、首にかけて甚大な火傷を負った氷室の姿だった。試合は即中止、当然勝利アナウンスが流れることもなく、後日公式サイト上で榎田の失格、優勝者は氷室秦と告知されていた。


(アイツ、ひでぇ顔してたな……)


あの場で一番勝利を確信してたのは間違いなくノックだ、それがこのような結果に、しかもそれを招いたのが自分自信となれば、相当精神的に追い込まれたに違いない。試合中止直後、目の当たりにした光景を否定するように狼狽えたノックは、数歩退いたあと気絶した。疲弊ロスの状態を支える糸が切れたのだろう。

今頃は肉屋の裏方で落ち込んで、ばあちゃんに励まされてるだろうか。


(いや、アイツは元気がないときは関係ないことに打ち込んでよく自分を誤魔化してたっけか)


ともあれ、いま巡がノックの事を考えても仕方がないことだ。巡は目の前の人混みから視線をずらし、正面の入り口から遠ざかっていった。ここは氷室が緊急搬送された病院、部屋番号は把握している。別口から上手く彼に会えないだろうか。


スゥ……っと、彼の毛先が少しだけ白く染まった。







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