氷点火山 17
浩仁の周りだけではなく、きっと多くの人間が諦めたか、あるいは温存という手に出たかと予想をしたこのTurn3-1。終了5秒前まで迫った時、フィールドが対属素シールドに阻まれドーム型に真っ白く染まった。
唯一、眉すら動かさなかった巡だけが自分の能力と同様にすぐ薄れていく白い霧を見届ける。その先には首から上だけが無事に残された、言うなれば3段の雪だるまとなった炎の使い手が動くことも出来ず固まっていた。
〈大打撃、氷室選手2ポイント獲得――同時に一分経過を確認しました、お互いに能力を解除してください〉
ノックの体に纏わりついた雪が霧のように消えていく。実質彼が動けなかったのは5秒ほど、フィールドが白く染まり何も見えなかったのはそのうちの2秒程度だろう。だからこそノックは驚愕しかできなかった。心音が大きくなる、寒さで引き締まったはずの毛穴からから汗が噴き出た。気がついた時にはポイントを取られている、認識すらできない攻撃、それはノックが意図的に、戦術として氷室を追い詰めるために仕掛けたものだった。それを今、自分の身にそのまま返された。
〈能力の解除を確認しました。それでは攻守を交代します。Turn3-2、開始〉
「ッ……」
弾かれたようにノックは飛び出し、再び次の一歩で氷室の懐まで潜り込んだ。彼の属素に干渉される前に手のひらで能力を具現化し、小爆発する寸前で体に押し付ける。が、ギリギリで氷室が身を捻って被弾箇所をずらしてきた。
〈命中、榎田選手1ポイント〉
スタートが遅れたせいか、今まで大打撃で決めてきた技なのに半分の点数におさめてしまう。
「この……ッ」
さらに追撃。やはり氷室はノックの動きに反応しきれていない。背後に回りこみ、攻撃を仕掛けようとするときになってようやく氷室はノックの位置に気づく。速度ではそのレベルで差があるのだ。しかし――
〈防御。氷室選手1ポイント〉
ノックは焦ってしまった。
Turn1-2のことを思い出せていたなら、こんな馬鹿げたミスはしなかっただろう。
相手はランクAの食す者。Turn3-1の一撃もそうだが、属素を能力へと変換させる速度がそもそもラングBのノックとは桁違いだ。ノックの初手は凄まじく早いが、それでも氷室は2撃目から対応ができる。対応されたら格下のノックに打つ手はない。そのための速攻だったというのに。
〈Turn3終了。現在氷室選手が4ポイント、榎田選手が5ポイントで榎田選手のリードです〉
「おぉぉぉぉぉぉぉ氷室ぉぉぉぉぉ!!!!」「一点差まで追い上げたぞ! つーかさっきの攻撃なに!?」「いやまて、今の流れがもう一回おきたら氷室7ポイントだぞ……!!」
会場が再び氷室によって沸騰する。
あれだけあった点差が、1ターンの間に追い詰められたのだ、観戦する身としてこれいじょう興奮するものはない。
「たまげたな……あンだけ派手に能力をぶっぱしておいて、しかも怪我をさせねェっつーのは」
「怪我をさせられないから大技は使えないっていう思い込みを逆手にとった攻撃だね~、ただのランクAじゃないっていうか、優勝候補って言われる理由がわかった感じだよぉ」
「ちょっと、みんな……このままじゃノックさんが負けちゃうっていうのにひどいですよっ」
自分だって目を見張るような展開に全く高揚しなかったわけではないだろうに、それに宮前は他の観戦客よりも"いろいろ見えている"。それでいてノックの身を案ずるあたりは彼女らしいといえばそうだが。
「でもさ綾、次にあのバカが大打撃決めれば7ポイントなんだよ。その前の守備で大打撃を喰らっても氷室は6ポイント止まり、1ポイント足りない、一歩及ばないんだ」




